絶対値と記号の説明 [ネコ騙し数学]
絶対値について何も触れませんでしたので、絶対値とこれから「ねむねこネコ騙し数学」で使用する記号などについて簡単に説明しますにゃ。
xを実数としますにゃ。そうすると、このxの絶対値、|x|はご存知だと思いますけれども、
x ≧ 0 ⇒ |x| = x
x < 0 ⇒ |x| = -x
で定義されますにゃ。
-1や+2の符号を取ったものが絶対値と憶えている方もいらっしゃると思いますにゃ。
ですから、絶対値は絶対にマイナスの値をとりませんにゃ。
つまり、
|x| ≧ 0
ですにゃ。
次に、三角不等式を証明してみますにゃ。三角不等式というのは、
|a+b| ≦ |a| + |b|
というや奴ですにゃ。
絶対値はマイナスの値をとりませんから、それぞれ2乗しても大小関係が変わりませんにゃ。
つまり、
となりますにゃ。ここで使っている記号「⇒」は「ならば」を意味しますにゃ。
ですから、2乗した奴の右辺から左辺を引いて
となりますにゃ。
よって、
|a+b| ≦ |a| + |b|
となりますにゃ。
なお、この不等式の証明には、
|a| ≧ a
を使っています。
この証明を真似すれば、
||a| - |b|| ≦ |a ± b| ≦ |a| + |b|
も証明できますにゃ。
でも、ここで終わるのはもったいないですにゃ。
ネムネコは、もっと違うことを書きたいですにゃ。
ということで、|a-b|は数直線上のaとbの距離のことだということにしますにゃ。|a-b|はbを起点にして計ったaの距離ですにゃ。距離ですから、aからbを計っても変わりませんにゃ。aからbの距離は|b-a|だから、
|a - b| = |b - a|
が成立しますにゃ。これはスゴイ発見にゃ!!(ネムネコが発見したわけではありませんにゃ)。
で、
|a| = |a - 0|
と考えれば、
|a| = |a - 0| = |0 - a| = |-a|
スゴイにゃ、こんな式も出てきたにゃ!!
絶対値を2点間の距離と考えると、色々な公式が出てくるにゃ。
ところで、数学には距離の公理というものがありますにゃ。
距離の公理とは、
(Ⅰ) d(a,b) ≧0 で、d(a,b) = 0 ⇔ a = b
(Ⅱ) d(a,b) = d(b,a)
(Ⅲ) d(a,b) ≦ d(a,c) + d(c,b)
というものですにゃ。dは距離distanceの略ですにゃ。
d(a,b) = |a - b|
と定義すると、
d(a,b) = |a - b| ≧ 0で、d(a,b) = |a - b| = 0⇔a = b だから、(Ⅰ)は満たしているけろ。
d(a,b) = |a - b| = |b - a| = d(b,a)だから、(Ⅱ)d(a,b) = d(b,a)も満たしているけろ。
d(a,b) = |a-b| = |(a-c) + (c-b)| ≦ |a-c| + |c-b| = d(a,c) + d(c,b)
ここで
d(a,c) = |a-c|, d(c,b) = |c-b|
となり、(Ⅲ)も満たしているけろ。
絶対値は、数学の距離の公理を満たしているけろ。
スゴイけろ!!
―――ネコ語からカエル語に変わっているぞ、おい!!―――
「こんなことを喜ぶのは、バカ猫のお前くらいだ」なんて仰らないでくださいにゃ。
これ、凄いことかも知れないんですから。
たとえば、距離というのはベクトルにもでてきますにゃ。2次元、3次元空間、複素数平面などでも距離は出てきますにゃ。そして、この距離をもとに理論が構築されますにゃ。
ということは、
裏を返せば、
距離に関する1次元、数直線の定理などは、2次元であろうと、3次元であろうと、複素数平面どころか、もっと抽象的な空間でも、そのまま当てはまるかもしれないですにゃ・・・。
例えば、極限に関するε‐δ論法は、
「任意のε > 0に対して
0 < d(x,a) < δ ⇒ d(f(x),l) < ε
を満たすδが存在すれば、
x→0のとき、f(x)→l」
と書き換えるだけで、2次元や3次元に拡張できますにゃ。
そして、前回証明した極限の公式は2次元や3次元でも成立するんですにゃ。
連続も、積分の諸定理も・・・。
微分は・・・。
で、
||a| - |b|| ≦ |a ± b| ≦ |a| + |b|
という不等式が何で三角不等式と呼ばれるかというと、
三角形の辺の長さ(長さは2点間の距離!)をそれぞれα、β、γとすると、
「三角形の2辺の長さの和は、残りの1辺の長さよりも大きい」、つまり、
|α - β| < γ < α + β
と本質的に同じ式だからですにゃ。
だから、三角不等式と呼ばれるにゃ。
絶対値、距離に関するネタは、ひとまず、ここまでにゃ。
つぎは、開区間、閉区間について話しますにゃ。
開区間(a,b)とは、Rを実数とし、集合的な書き方をすると、
(a,b) = {x∈R| a < x < b, a∈R,b∈R}
とか書きますにゃ。
難しく書いたけれど、 a < x < b を満たすxの集まり全部を(a,b)と書き、開区間と呼びますにゃ。
x∈(a,b)と書いたら、 a < x < b のことにゃ。いちいち、こんなことを書くのは面倒なので、(a,b)と書くにゃ。
で、閉区間[a,b]と書いてあったら、a ≦x ≦ bを満たすxの集まり、集合のことにゃ。
あと、aとbの大小関係が決められるとき、
aとbの大きくないほうを
min{a,b}
aとbのちいさくないほうを
max{a,b}
と書きますにゃ。
これ、憶えておくと便利ですにゃ。
例をあげると、
1 = min{1,2}
2 = max{1,2}
ですにゃ。
min{a,b}を「a,bのうちの小さいほう」と定義しなかったのは、min{1,1}のとき、この定義だと困るからですにゃ。1 < 1 でも1 > 1でもないから、この定義だとmin{1,1}は存在しないことになるんですにゃ。
だから、「aとbの大きくないほう」とすこし紛らわしい表現をしますにゃ。
ちなみに、min{1,1} = 1ですにゃ。
∀xは、「すべてのxの対して」、「任意のxに対して」の意味で、allやanyの頭文字Aをひっくり返したものですにゃ。
∃yは、「yが存在する」の意味で、Existの頭文字Eをひっくり返したものにゃ。
この記号を見たら、このことを思い出して欲しいにゃ。
また、なんか思いついたら、番外編として書くにゃ。
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