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第11回 凸関数 [ネコ騙し数学]

第11回 凸関数

 

いよいよ微分のハイライト、凸関数ですにゃ。

「これを語らずして、何のための微分!!」ですにゃ。

ネムネコ、いつにも増して力を入れて説明しますにゃ。

第11回凸関数_htm_1f8f1dba.gif

y=f(x)上にある任意の二点A(a,f(a))B(b,f(b))の間において、弦ABが線分ABよりも下側にある関数を凸関数といいますにゃ。

図を見るとわかりますが、a < c < b の時、

 線分ACの傾き≦線分ABの傾き≦線分CBの傾き

という関係がありますにゃ。

式で書くと、

第11回凸関数_htm_m31096ad0.gif

という関係がありますにゃ。

 

「おい、バカ猫。これは証明しなくていいんか?」

「まるでネムネコのようにうるさい野郎だ。DCの上側にあるから、ABAD)の傾きはACの傾きより小さくないだろう。で、CDの下側にあるから、CBの傾きはACDB)の傾きより小さくないんだよ。」

「それはそれとして、俺にはこの関数は凹に見えるが、何で凸なんだ?呼ぶんなら凹関数だろう?」

「そんなの知らねぇよ。そう呼ぶんだから、しょうがないだろう。俺に聞くな!!」

 

ちなみに、弦ABが線分ABの上側にある関数を「下に凸」と呼んだりしますにゃ。

 

逆、つまり、a < c < b

第11回凸関数_htm_m8b5801e.gif

が成り立つとき、

fは凸関数になりますにゃ。

凸関数の条件を

第11回凸関数_htm_28117569.gif
としてもいいですにゃ。同じことですから。

 

ここまでは一般論です。

 

では、微分可能な関数の場合、これがどうなるかと言いますと、『解析概論』の定理25を引用しますと、

 

 

定理 f''(x)が存在する場合には、

(1)区間内で常に第11回凸関数_htm_m7d94b3c1.gifならば、f(x)は凸関数である。

(2)f(x)が凸関数であるならば、区間内で常に第11回凸関数_htm_m7d94b3c1.gifである。

にゃ。

 

ここで、

f''(x)yf(x)を二回微分した関数にゃ。

たとえば、第11回凸関数_htm_m67764810.gifとすると、これを一回xで微分すると

第11回凸関数_htm_141f540.gif

だにゃ。これをもう一回xで微分すると、

第11回凸関数_htm_m92cde8f.gif

となるにゃ。

で、微分の公式

第11回凸関数_htm_m5bfa30c8.gif

を使っていますにゃ。

よもやと思うけろ、この公式、忘れてないけろな?

 

(1)の証明には、「平均値の定理」を使うにゃ。

②の式の左辺に平均値の定理を使うと

第11回凸関数_htm_m57aaa23.gif

右辺に平均値の定理を使うと

第11回凸関数_htm_2298c216.gif

になりますにゃ。

常に、第11回凸関数_htm_m7d94b3c1.gifということは、「f'(x)が単調に増加している」ということだから、

第11回凸関数_htm_m2acd67bf.gifより

第11回凸関数_htm_29e55992.gif

となって、

第11回凸関数_htm_7d8a8212.gif

になるにゃ。

これで(1)の証明は終わりにゃ。

(2)の証明は、是非、チャレンジして欲しいにゃ(^^♪

 

ここで、大切なのは、

 「第11回凸関数_htm_m7d94b3c1.gifならば凸関数で、凸関数ならば第11回凸関数_htm_m7d94b3c1.gif

ということにゃ。

そして、

 「第11回凸関数_htm_4c486612.gifならば下に凸で、下に凸なら第11回凸関数_htm_4c486612.gif

ということにゃ。

 

 

さらに、二回、微分可能で凸関数ならば、

y=f(x)の曲線は、その曲線上の接線よりも上側にある

という性質があります。

 

接点のx座標をaとすると、接線の方程式は

第11回凸関数_htm_3bc7479d.gif

ですので、証明すべきものは

第11回凸関数_htm_5b5f8bbd.gif

ですね。

証明は意外に簡単で、

第11回凸関数_htm_m202a3683.gif

で、前回、

 「f(x)f(a)のような関数の差の形では、fが微分可能なら、平均値の定理が使える」

と言いましたが、これを使うと

平均値の定理から

第11回凸関数_htm_26894f40.gif

となって、このcはxとaの間に存在する。これを③式に代入すると、

第11回凸関数_htm_m345f3874.gif

となります。

第11回凸関数_htm_3c1a2d82.gifならば、f'(x)は増加関数。

x<aの時はcはxとaの間にあるのだから

第11回凸関数_htm_m79e3dd18.gif

となって、

第11回凸関数_htm_708503cd.gif

また、a ≦xならばa < c <x

第11回凸関数_htm_m41d30bb8.gif

いずれの場合も④式は0以上となり、

 

第11回凸関数_htm_5b5f8bbd.gif

が成立する。

丁寧に書きましたから長くなりましたけれども・・・。

 

逆に第11回凸関数_htm_mdc6f851.gif、つまり、「下に凸の関数」の場合、曲線の接線はかならず曲線の上の位置に存在する。

前回の

 

第11回凸関数_htm_m65cf7aa7.gif

これなんかは「下に凸の関数」で、接線は曲線の上に位置しているでしょ。

第11回凸関数_htm_3db504a2.gif

ですから、微分の公式

第11回凸関数_htm_m5bfa30c8.gif    (この式、忘れてねえよな?)

を使うと、この微分は

第11回凸関数_htm_a78ec18.gif

となり、

第11回凸関数_htm_m6c007443.gif

ですから、y'' < 0となって下に凸の関数。

 

では、第11回凸関数_htm_229c7f26.gifはどうでしょう?

この関数の定義域は-∞ < x < ∞、つまり実数全域とします。

この二階微分y’’は

第11回凸関数_htm_m609882ae.gif

となるので、x < 0では負で「下に凸」、x ≧ 0 では0以上となるので「上に凸」であることが分かります。そして、x0で「下に凸」が「上に凸」に変わっている。このような点を変曲点といいますにゃ。

ちなみに、第11回凸関数_htm_m33252580.gif第11回凸関数_htm_m52bc8c.gifのような関数の二階微分は第11回凸関数_htm_m7d94b3c1.gifなのでx0の前後でf''(x)がマイナスになったりしないので、x=0は変曲点ではありません。

で、第11回凸関数_htm_229c7f26.gifのグラフ。

 

第11回凸関数_htm_m345282af.gif 


x
1x=-1.5の時の接線も合わせて書きました。

この図から、接線と曲線の上下関係が逆転していることも分かるんじゃないでしょうか。

 

第11回凸関数_htm_79e2c72c.gif

 

上の図は第11回凸関数_htm_m79533b37.gifのグラフです。微分積分で扱う対数関数logは自然底e2.71828…の対数関数で10を底にするもの第11回凸関数_htm_5b26591.gifとは違いますにゃ。

その内にこの関数の微分をやりますけれども、

第11回凸関数_htm_m2e422116.gif

です。ですから、

第11回凸関数_htm_m50a72e2b.gif

となってこの関数は下に凸の関数ですにゃ。

対数関数の微分を知らなくても、図を見れば、対数関数が下に凸であることは明らか!!

で、

第11回凸関数_htm_m19dd7362.gif

ですにゃ。

この図を見ると、

第11回凸関数_htm_7b8abd14.gif

第11回凸関数_htm_m546c2892.gif 

の上になりますにゃ。 

つまり、

第11回凸関数_htm_7932773b.gif

対数関数は増加関数だから、

第11回凸関数_htm_5e75b489.gif

凸関数(正確には「下に凸」)の性質を使うことで、相加平均≧相乗平均ができたにゃん。

スゴイにゃん。

そして、これを少し工夫すれば、

第11回凸関数_htm_5f11a7ca.gif

も証明できる。

 

これだけではなく、0≦x≦πではsinxは上に凸、cosxは下に凸だから、

第11回凸関数_htm_29f1db8.gif

という不等式が出て来るにゃ。

―――sincosの微分を知らないなんて言ってはいけない。グラフを書けば、上に凸か、下に凸かはすぐに分かる!!―――

 

ちなみに、

第11回凸関数_htm_m6c1a2468.gif

だから、

第11回凸関数_htm_20616e91.gif

にゃ。

 

xは上に凸だから、

第11回凸関数_htm_m37bce6f5.gif

にゃ。そして、こんな不等式まで出て来るにゃ。

第11回凸関数_htm_m1ba796fa.gif

なお、a≧0b≧0、そして、

第11回凸関数_htm_132dd1ec.gif

です。

 

この不等式は、√を対数logに変えても、成立しますよ。

どちらも「下に凸の関数」だからです。

そして、「上に凸の関数」ならば、「≧」の向きが「≦」に変わります。


タグ:微分積分
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コメント 8

bragelone

 この段階で初歩の質問です。

 二階微分というのは 一階微分と同じにしかならないように感じるのですが。

 つまり 一階微分は すでにもう斜めであっても直線になっているのではないかと。

 なぜ二階も三階も微分できるのですか?
by bragelone (2015-03-03 12:01) 

マリンエンジニア

ダイセルリサーチセンターの久保田邦親博士(工学)材料物理数学再武装は面白いですよ。マルテンサイトの強度と靭性のバランスが科学的に求まるのは品質工学をやっていてありがたい。
by マリンエンジニア (2021-03-03 18:38) 

ダイヤモンド富士

あれね。非線形回帰の本質的問題点をついているよね。いろんな
な回帰計算があり、人工知能がなぜシグモイド関数を基底関数と
しているのかの説明。フーリエとテイラーとかあるけれどどれも
基底関数の多項式近似回帰なんだけど、例えば2つの関数の特徴を
合成したいばあいその2つの関数と似ても似つかなくなる。シグモイド関数をつかって合成するともとの関数が保存された形式で式が簡単にできると関数接合論はいっている。
by ダイヤモンド富士 (2022-04-26 03:38) 

DXイノベーションネットワーク

コペルニクス的転回だな。なにやら教育関係者なんかでも話題になっているらしい。
by DXイノベーションネットワーク (2022-06-03 02:00) 

CAE

本当だ経済学の祖アダムスミスの神の見えざる手が計算できた。
by CAE (2022-06-03 19:43) 

安来キツネダンス

CAE解析で使われているマトリックス(行列式)計算って昔アラブのえらいお坊さんが考え出したってしってる?なんかコーヒルンパみたいなはなしがイスラム数がなんだ。
by 安来キツネダンス (2023-03-14 00:43) 

グリーンモノづくり

博士は元プロテリアル(旧日立金属)で有名な特殊鋼合金SLD-MAGICを発明された方なんですね。なんだかわからないけど下町ロケットの佃製作所みたいな話がFacebookにありました。
by グリーンモノづくり (2023-10-28 00:35) 

熱処理関係

名門の輝き日本刀の刃先にできるマルテンサイトはロケットの切り離しの刃にも使われているのをどこかで読みました。それにしても、材料物理数学再武装の関数接合論、ビジネスー経営工学関係ではKPI競合モデルと呼ばれ博士は別名炎の経営者なんて暗号名のような呼ばれ方もしているようだ。
by 熱処理関係 (2023-12-28 10:52) 

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