第16回 問題演習4 [ネコ騙し数学]
第16回 問題演習4
問題1
△ABCにおいて、∠A=60°、AB=3、DC=10とする。BCを2:3に内分する点D、ADの延長が△ABCの外接円と交わる点をEとするとき、次の長さを求めよ。(1) AE (2)CE
【解】薄い藤色の2つの△ABDと△CEDは相似。
何故ならば、円周角の定理より∠EAB=∠ECB
∠ABC=∠AEC
となり、△ABD∽△CED
ADは余弦定理より
△ABD∽CEDなので
よって、
(2)
(解答、終わり)
①より、円に内接する四角形に関して、
という関係が成立することがわかる。
この問題にはないけれど、 ACは余弦定理を使って
そして、正弦定理より、△ABCの外接円の半径Rは
問題2 円に内接する四角形において、AB=a、BC=b、CD=c、DA=dであるとき、cosBの値を求めよ。
【解】
四角形ABCDは円に内接するので、∠Bと∠Dの和は180°である。よって、
になる。
よって、
§ 転換法
三角関数の次に、ねこ騙し数学で取り上げる初等幾何との関係もあり、転換法と呼ばれる証明法について少し説明することにする。
転換法
一連の真である命題p₁⇒q₁、p₂⇒q₂、p₃⇒q₃、…があって【1】 p₁、p₂、p₃、…は、すべての場合を尽くしている
【2】 q₁、q₂、q₃、…は、どの2つも両立することがないこのとき、q₁⇒p₁、q₂⇒p₂、q₃⇒p₃、…は、すべて真である。
もっとも簡単なp₁⇒q₁、p₂⇒q₂の場合を証明する。
【証明】p₁⇒q₁、p₂⇒q₂で、かつ、【Ⅰ】、【Ⅱ】を満たしているとする命題があるとする。
いま、仮に、q₁であってp₁のものがある、つまり、q₁かつp₂のものがあるとする。p₂⇒q₂は真なので、q₁かつq₂である。
しかし、q₁とq₂は両立しないから矛盾。よって、q₁⇒p₁である。
同様に、q₂⇒p₂である。(証明終わり)
これでは何を書いているかわからないと思うので、2次方程式の解の判別を例にとって説明するにゃ。
例 次のような実係数(a、b、cは実数)の2次方程式があるとする。
になる。
とすれば、2次方程式の解は次のように書ける。
そして、
(1) D>0⇒相異なる2実根
(2) D=0⇒唯一の実根、実数解(重根)(3) D<0⇒相異なる虚根
(1)〜(3)はすべて真。さらに、
Dは実数だから、D>0、D=0、D<0のいずれかで、これ以外の値はとりえない。つまり、すべての場合を尽くしており、【1】を満たしている。(1)〜(3)の結論も互いに両立せず、【2】も満たしている。故に、転換法によって、
(1)〜(3)の逆、(1’) 相異なる2実根⇒D>0
(2’) 唯一の実根、実数解(重根)⇒D=0(3’) 相異なる虚根⇒D<0
が成立し、【Ⅰ】 D>0⇔相異なる2実根
【Ⅱ】 D=0⇔唯一の実根、実数解(重根)【Ⅲ】 D<0⇔相異なる虚根
である。こういうことです。
では、これを真似て次の問題を。
問題3
△ABCにおいて、次のⅠ、Ⅱ、Ⅲが成り立つ。これらの逆も成り立つことを証明せよ。Ⅰ ∠Cが鋭角⇒a²+b²>c²
Ⅱ ∠Cが直角⇒a²+b²=c²Ⅲ ∠Cが鈍角⇒a²+b²<c²
【証明】△ABCにおいて、余弦定理
が成り立つ。
∠Cは鋭角(C<90°)か、直角(C=90°)、鈍角(C>90°)のいずれかのひとつだけ。だから、この3つの場合ですべて尽くされている。
そして、C<90°ならば、cosC>0なのでC=90°のとき、cosC=0なので
C>90°のとき、cosC<0なので
よって、Ⅰ〜Ⅲは真。
そして、Ⅰ〜Ⅲにおいて、その仮定はすべてを尽くしており、その結論はどの2つも両立することがない。
よって、転換法によって、Ⅰ〜Ⅲの逆もすべて成立する。(証明終わり)
上の議論から、
Ⅰ ∠Cが鋭角⇔a²+b²>c²Ⅱ ∠Cが直角⇔a²+b²=c²
Ⅲ ∠Cが鈍角⇔a²+b²<c²であることがわかる。
問題4 3数、x、x+1、x+2が鈍角三角形の3辺の長さをあらわす数値であるための範囲を求めよ。
【解】三角形の3辺には、三角不等式、他の2辺の長さの和>1辺の長さの和が成り立たなければならない。
よって、また、この三角形は鈍角三角形なので、最大辺x+2と他の2辺x、x+1において、次の関係が成り立たなければならない。
よって、1<x<3
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