第5回 四角形と三角形の等積変形 [ネコ騙し数学]
第5回 四角形と三角形の等積変形
第4回§3平行四辺形の面積と三角形の面積の系から、三角形の面積について、次のことが成り立つ。
系2 線分ABと同じ側に2点P、Qがあり
(1) ABとPQが平行ならば、△PAB=△QAB(2) △PAB=△QABならば、ABとPQは平行である
前回の系からほとんど明らかだから証明はしないにゃ。
2点P、Qを結ぶ直線をlとする。(1)については線分ABと線分PQが平行ならば、線分ABと直線lとの距離、つまり、三角PABと△QABの高さは同じだから、系1より△PAB=△QABになる。
(2)は、2点P、Qが同じ側にあるのだから、△PAB=△QABならば、三角形の高さ、つまり、線分ABと線分lとの距離が一定で、線分ABと直線lは平行となり、ABとPQは平行になる。ちなみに、△PAB=△QABと書いたら、△PABと△QABの面積が等しいことをあらわす。だから、合同をあらわす△PAB≡△QABとは異なる意味を表すので、この点は注意して欲しい。
この系は、△PABと、ABに平行で点Pを通る直線上の任意の点Rと点A、Bとで作られるP△ABの面積は等しいことを表しており、このような点Rを使って、その面積を変えることなく△PABを△RABに変形できる、等積変形できることになる。
この性質を利用すると、次のように、四角形ABCDを△APDに変形することができる。
DBとCPは平行だから、
△CDB=△PDB△DABは共通なので、
四角形ABCD=△ABD+△CDB=△ABD+△CDB=△APDとなり、四角形ABCD=△APDになる。
次に、三角形の面積の二等分法を紹介。
問題1 BCの中点を利用して、AB上の点Pを通る直線で△ABCを2等分せよ。
【解】
PMを結び、点Aを通るPMに平行な直線を引く、そして、この交点をQとする。
PMとAQは平行なので、△PMA=△PMQ
よって、△ABM=△PBM+△PMA=△PBM+△PMQ=△PBQ
MはBCの中点なので、よって、△PBQは△ABCを2等分している。
問題2 平行四辺形ABCDのBCの延長上の点をE、EAとCDの交点をFとする。△DFE=△FBCを証明せよ。
【解】
△ACF=△BCF ①
また、CEとADは平行なので△ACE=△CED
△ACEと△CEDでは、△ECFは共通しているので、△ACF=△DFE ②
①と②より
△DFE=△BCF第4回 長方形、ひし形、正方形 [ネコ騙し数学]
第4回 長方形、ひし形、正方形
§1 長方形
長方形の定義 4つの角が全て等しい四角形定義から、
∠A=∠B=∠C=∠D=∠R=90°
であることが分かる。また、
∠A=∠C、 ∠B=∠D
なので、長方形は平行四辺形であり、
さらに対角線が互いに他を2等分することがわかる。
△ABD、△DCBに注目すると、
AB=DC
BCは共通、
さらに
∠B=∠C=∠R
だから、
△ABC≡△DCB
よって、
CA=BD
である。
対角線の長さが等しく、さらに、対角線が互いに他を2等分することから、対角線の交点をEとすると、AE=BE=CE=DEである。つまり、対角線の交点と長方形の各頂点までの距離は等しい。
また、△ABCは直角三角形だから、直角三角形に関して次の定理が成立することが分かる。
定理
直角三角形ABC(∠A=90°)において、角Aを通る中線をAMとすると、(1) AM=BM=MC
(2) ∠B=∠BAM、∠C=∠CAMAMの延長線上にAM=MDとなるような点Dをとれば直角三角形になる。
そして、上の議論から(1)は明らかだにゃ。(2)に関しては、MA=MBだから、△MBAは二等辺三角形。よって、∠B=∠BAMになる。同様に、∠C=∠CAM。
さらに定理を追加。
定理
△ABCの中線AMがBCの半分に等しいならば、∠A=90°である。【証明】
条件より△MBAはMB=MAの二等辺三角形。
よって、∠MAB=∠MBA=α
外角定理より、∠AMC=∠MAB+∠MBA=2α
同様に、∠MAC=∠MCA=β
∠AMB=2β点B、M、Cは同一線上にあるので
∠AMC+∠AMB=2α+2β=180°よって、
∠A=α+β=90°(証明終わり)
§2 ひし形
ひし形の定義 4辺の長さが等しい四角形。
4辺が等しいので、対辺AB=CD、BC=DA、よって、ひし形は平行四辺形。
だから、対角線を互いに2等分する。対角線の交点をEとすると、AB=AD、BE=DE、AEは共通なので、△ABE≡△ADEとなる。
よって、∠AEB=∠AED
また、∠AEB+∠AED=180°
よって、∠AEB=∠AED=90°となり、対角線が直交することが分かる。
つまり、ひし形は
(2) 2つの対角線は互いに他を垂直2等分する
という性質を持っている。
また、(1)と(2)が同値なのはほとんど明らかだにゃ。
§3 正方形
正方形の定義 4頂角、4つの辺の長さが全て等しい四角形。
正方形は、「長方形」、かつ、「ひし形」なので、長方形とひし形の性質を持っているにゃ。
だから、正方形は、2つの対角線は相等しく、互いに他を垂直2等分する。
ということで、問題を一つ。
問題 平行四辺形ABCDにおいて、AD=2ABのとき、辺CDを両側に延長してその上に、点E、FをCE=CD=DFとなるようにとると、2直線AEとBFは直交する。
§4 平行四辺形の面積と三角形の面積
長方形の面積を定義する前に、次のことを、公理として認めてもらうことにするにゃ。
1 合同な図形の面積は等しい2 多角形を2つの多角形に分割すると、もとの多角形の面積は分割して得られた2つの多角形の面積の和である
そして、長方形の面積を縦×横で定義する。
次のような長方形ABCDがあるとき、その面積SはAB×CDになる。
つぎに、A'BC'Dという平行四辺形の面積を考える。
このとき、△ABA’≡△DCD'
なので、△DCD'を平行移動させれば、長方形ABCDになる。よって、平行四辺形の面積もAB×CDである。
定理 平行四辺形の面積は「底辺×高さ」である。
系 三角形の面積は「底辺×高さ÷2」である。
△ABCをもとに、次のように平行四辺形ABCDを作るにゃ。
△ABC≡△DCAだから、平行四辺形の面積は△ABCの2倍でBC×h=ahになるケロ。よって、△ABCの面積はah/2で、「底辺×高さ÷2」になっている。
この系を使えば、ひし形の面積Sは
となり、つまり、2つの対角線の長さを掛けあわせたものを2で割ったものになる。
第3回 平行四辺形の性質 [ネコ騙し数学]
第3回 平行四辺形の性質
平行四辺形の定義
平行四辺形とは、2組の対辺がそれぞれ平行である四角形である。定理8 平行四辺形になる条件
(1) 2組の対辺がそれぞれ平行(定義)(2) 2組の対辺がそれぞれ等しい
(3) 2組の対角がそれぞれ等しい(4) 1組の対辺が平行でかつ長さが等しい
(5) 対角線が互いに他を2等分する【証明】
(1)⇒(2)△ABDと△CDBに注目。
ABとDCは平行なので、∠ABD=∠CDB(錯角相等)。ADとBC平行なので、∠BDA=∠BDC(錯角相等)。
BDは共通。よって、一辺の長さと両端の角相等より△ABD≡△DCB。
したがって、AB=CD、AD=BC。△ABCと△CDAに注目。
AB=CD
BC=DABDは共通。
三辺相等より△ABC≡△CDA。よって、∠ABC=∠CDA
同様に、△ABD≡△CDBよって、∠DAB=∠BCD
四角形の内角の和が4直角、360°であるから、
条件より、
2(∠A+∠B)=360°よって、∠A+∠B=180°
2点A、Bを通る直線を引くと、∠A+∠DAX=180°よって、∠B=∠DAXとなり、同位角が等しいので、
ADとBCは平行 ①△ABDと△CDBに注目。
ADとBCは平行なので、∠ABD=∠CBD (錯角)
また、∠A=∠Cなので∠BDA=∠DBC
BDは共通なので、△ABD≡△CBD
よって、AD=BC ②
①と②より、ADとBCは平行でかつAD=BC。ADとBCは平行でかつ長さが同じと仮定する。
ADとBCは平行なので、∠DAC=∠BCE、∠EDA=∠EBC。
また、DA=BDよって
△AED≡△CEBゆえに、AE=EC、BE=ED。
よって、対角線を互いに他を2等分する。(5)⇒(1)
対角線の交点をEとする。条件よりAE=EC、BE=EC。
また、∠BEA=∠DEC。よって、△BEA≡△DEC。
したがって、∠ABE=∠CDE
∴ ABとDCは平行同様に、△EDA≡△EBC。
∠DEA=∠BCE∴ ADとBCは平行
(証明終わり)このことから、(1)〜(5)は同値の命題であることがわかり、どれを平行四辺形の定義に使ってもいいことになる。
四角形の内角の和が4直角、360°であることは、四角形ABCDに対して対角線ACを引けば、四角形ABCDが△ABCと△CDAに分割されることから、ほとんど、明らかでしょう。
問題1
平行四辺形ABCDで、辺AD、BCの中点をそれぞれE、Fとし、AとF、CとEを結ぶとき、平行四辺形AFCEは平行四辺形であることを証明せよ。【証明】
ADとBCは平行。よって、AEとFCは平行。
平行四辺形なので、AD=BC。EはADの中点、FはBCの中点だから、
AEとFCは平行で、かつ、AE=FCなので、定理8の(4)より
四角形AFCEは平行四辺形である。
(証明終わり)これは、あくまで、証明の一例にすぎないケロ。次のような証明法もあるし、他にもあるケロ。
ADとBCは平行なので、∠FEA=∠EFC(錯角)。
条件よりAE=FC、FEは共通。よって、2辺挟角相等より
△AFE≡△CEFしたがって、∠AFE=∠CEF。
よって、AFとECは平行。
2組の対辺がそれぞれ平行なので、四角形AFCEは平行四辺形である。
問題2 図のように、△ABCの辺AB上の点PからACに平行に引いた直線と、∠BACの二等分線との交点をQとする。また、PからQCに引いた直線と辺ACとの交点をRとする。
このとき、AP=RCであることを証明せよ。∠CAQ=∠PQA (錯角)
また、∠BACの二等分線なので∠QAP=∠CAQ=∠PQA
よって、△PQAはPを頂点とする二等辺三角形。したがって、
AP=PQ四角形PQCRは平行四辺形なので
RC=PQ=AP
Midoriを削除したにゃ [ネムネコ備忘録]
Ubnutuのソフトウェア・センターにあったMidoriは、どうもバージョンが古いようだケロ。2011年のもので最新版ではなかった。
最新版をインストールするかどうかについては、現在、思案中。
ターミナルからのコマンド入力でインストールしなくちゃならないので、ちょっと面倒だケロ。
コマンドは見つけたので、コピペでこれは簡単に出来るんだけれど、
「これも全然使えないじゃないか」
となったとき、また、コマンド入力で削除しなければならないから、厄介だにゃ。
最新版は、試しにWindowsの方でインストールしてみたんだけれど、これが使えなかった。とあるところに接続し、待てど暮らせど、コッチに返ってこなかった。ネムネコのWindows+パソコンと相性が悪いなのかもしれない。仕方ないから削除したにゃ。ゴミファイルが幾つか残っているはずだから、パソコンのゴミになってしまった。
それはUbuntuでも同じでソフトをソフトウェアセンタの削除ボタンでアンインストールしただけだと、設定ファイルや関連ファイルが残ったまんまなので、コマンド入力で削除せざるを得なかった。
sudo apt-get --purge remove midori
とか
sudo apt-get autoremove midori
とか何とか、怪しげな呪文を唱えなければならなかった。
色んなモノがMidoriとともに入っていたようだね〜。面倒臭いと言ったらありゃしない。
わかっていることだけれど、パソコンに変なものを入れるもんじゃないね。
では、アニメトランス版の「アンインストール」を。
さらにもう一曲。
番外編 いきなり非ユークリッド幾何学 [ネコ騙し数学]
番外編 いきなり非ユークリッド幾何学
公理主義に基づく幾何学を理解するためにいい題材だと思うので、いきなり、非ユークリッド幾何学!!
非ユークリッド幾何学の一例として、こんな問題をあげてみるにゃ。
問題
H平面とは、座標平面上でy>0の部分をいう。また、その上のH直線とは、座標平面上の図形のうち、次のものをいう。(a) x軸に垂直な直線のH平面内にある部分(つまり、半直線)
(b) x軸上に中心を持つ円周のH平面内にある部分(つまり半円周)これについて、次の問いに答えよ。
(1) H平面上の異なる2点P、Qを通るH直線は1つであり、2つ以上はない。その理由を述べよ。(2) 1つのH直線以外の1点を通って、これと交わらないようなH直線は2つ以上ある。たとえば、(2, 2)を通り、
で与えられるH直線lと交わらないH直線を2つあげよ。
何やら難しいことを書いているように見えますが、実は・・・(^^)
この問題に出てくるH直線というのは図のような2タイプ(白抜きの○の部分は含まない)。
相異なる2点PとQの座標をそれぞれ(x₁, y₁)、(x₂, y₂)とすると、
タイプ(a) x₁=x₂、y₁≠y₂タイプ(b) x₁≠x₂
の場合。
もちろん、y₁>0、y₂>0。タイプ(a)の場合、
x₁=x₂だから
がH直線ということになる。
x₁≠x₂のタイプ(b)の場合は、円の中心はx軸上にあるので、その座標を(c,0)とし、半径をrとすると、
となる。で、この半円周は相異なる2点P、Qを通るので
を満たさなければならない。
だから、①−②は
rについては計算しないけれど、(x₁,y₁)、(x₂,y₂)から、cと半径rの値が一つに決まることがわかる。
で、もし、x₁=x₂のとき、半円周タイプのH直線があるとすると、
となって、上の式と下の式の差をとると
になるけれど、y₁>0、y₂>0だから、y₁=y₂となり、x₁=x₂と合せると、P=Qになってしまう。だから、x₁=x₂のとき半円周のH直線にはならないケロ。
また、x₁≠x₂のとき、相異なるP、Qを通るH直線がx=x₁またはx=x₂の半直線にならないのは明らかだケロ。
よって、相異なる2点P、Qを通るH直線は一本しかない。
式を使えばこうなるけれど、上の図を見ればほとんど明らかでしょう。
タイプ(b)のとき、半円周の中心C(c, 0)はPQの垂直二等分線とx軸との交点で、この交点Cは必ず存在するにゃ。
(2)は、それこそ無数に存在するにゃ。
2つでいいらしいから、2つあげるにゃ。
相異なる2直線が交わらないとき、2直線は平行であると定義される。
定義からそうなるにゃ。
そして、
(Ⅲ) 平行線の公理 直線外の1点を通り、この直線に平行な直線はただ1つである
H直線lの外の1点Pを通り、このH直線lに平行なH直線はただ一つではないにゃ。
つまり、このH直線では平行線の公理は破れている!!
結合の公理は満たしているけれど、平行線の公理は満たしていない。
このことは、幾何学において、平行線の公理は必ずしも必要ではなく、平行線の公理を否定する別の公理を採用しても構わないということを意味するにゃ。
そして、それが非ユークリッド幾何学と呼ばれるものなんだケロ。第1回 タイトル未定 [ネコ騙し数学]
第1回 タイトル未定
これからやる初等幾何の内容は、公理に基づく幾何学です。また、直線や円、さらに中点や中線といった中学で習う数学、幾何の用語を知っていることを前提として議論を展開します。
ネムネコは、初等幾何をよく知らないし、まして、公理に基づく初等幾何、ユークリッド幾何学なんて知らない。中学の時に習っただけなので、結構、いい加減なものになると思うけれど。
第1回と第2回は、あくまで試案で、内容が追加されたり、変わったりすることがあると思う。
§0 用語の説明
公理と定理
すべての証明の出発点として、いくつかのそれ自身は証明せずに正しいものと認め、他のことがらを推論する基礎となるものを公理という。また、公理をもとにして正しいことが証明されたものを定理という。定義と無定義用語
用語や記号などの意味を明確に定めた文章を定義という。点や直線などは定義しないで無定義用語として、そのまま用いる。合同の定義
2つの図形があって、一方を移動したり、裏返したりして、ちょうど他方に重ね合わすことができるとき、この2つの図形は合同であるという。平行線の定義
同一平面上にある2直線が共有点を持たないとき、この2直線は平行であるという。
§1 平面幾何の公理
平面幾何の公理には、次のようなものがある。(Ⅰ) 結合の公理 2点を通る直線はただ1つである(Ⅱ) 運動の公理 図形は、その形や大きさを変えないで、移動したり、裏返したりすることができる
(Ⅲ) 平行線の公理 直線外の1点を通り、この直線に平行な直線はただ1つである
さらに、次の公理を加えたりするにゃ。
(Ⅳ) 間と分割の公理① 1直線上の異なる3点、A、B、Cについて、次のいずれかが成り立つ。
(ア) BがC、Aの間にある(イ) BがACの間にない
② 1直線上にない異なる3点、A、B、Cと、これらの点を通らない直線lについて、次の関係のうちただ一つが成り立つ。(ア) lは三角形ABCの2辺と交わる
(イ) lは三角形ABCのどの2辺とも交わらない
(Ⅳ)の間と分割の公理のかわりに、次のパッシュの公理を採用するものもある。
パッシュの公理
平面上の1直線は、この平面を2つの側に分け、同じ側の2点を結ぶ線分上の点はすべて同じ側にあり、異なる側の2点を結ぶ線分はもとの直線と交わる
さらに、次のようなものなどを公理として採用し、出発点とする。
(1) a=a
(2) a=bならばb=a(3) a=b、b=cならば、a=c
(4) a-b、c=dならば、a+c=b+d、a−c=b−d§2 直線の角度と対頂角
直線の角度は、2直角、180°である、と定義するにゃ。定理1
「対頂角α、βは等しい」【証明】
α+γ=180°
β+γ=180°
よって、α+γ=β+γ
∴α=β§3 平行線と角
定理2
2つの直線に1つの直線が交わってできる1組の錯角が等しいとき、はじめの2直線は平行である。【証明」
2直線にa、bに他の直線cが交わってできる錯角をα、βとし、aとbが平行でないと仮定する。この図形をABの中点Oのまわりに回転し、点Aが点Bの位置に、点Bが点Aの位置にくるようにすると、ABとBAが重なる。
点Pの移った点をP’とすれば、点Pと点P'は相異なる2点となる。
異なる2点を通る直線が2本あることになり、結合の公理に反する。よって、直線aと直線bは平行である。
(証明終わり)
証明のために使っている直線(?)は直線だろうか・・・。
――直線が、そもそも、定義されていない!! しかも、ありえないものを証明するのだから・・・――
定理3
平行な2直線が他の直線と交わってできる錯角は等しい。【証明】
平行な2直線をa、bとし、この2直線に交わる直線をcとする。aとc、bとcが交わってできる錯角をそれぞれα、βとする。
α≠βと仮定する。
点Bを通り、cと角αになる直線b'をひく。定理2より、aとb'は平行になり、点Bを通りaに平行な直線が2本存在することになり、不合理。
よって、α=βである。この定理1、2、3から、次の定理が得られるにゃ。
定理4 2つの直線が1つの直線と交わってできる同位角は等しいならば、この直線は平行である。また、平行線に1つの直線が交わるとき、同位角は等しい。中学校で習った「平行線の錯角(同位角)は等しい、錯角(同位角)が等しければ2直線は平行である」という平行線の性質が証明されたということになる。
§4 三角形と角
この定理3を使うと、三角形の内角の和が2直角、180°であることが次のように証明される。
定理5(三角形の内角定理)
三角形の内角の和は2直角である。【証明】
頂点Aを通り、BCに平行な直線をひく。
定理3よりβ=β'、α=α’。
また、α+β'+γ’=2直角=180°よって、
α+β+γ=2直角=180°(証明終わり)
さらに、定理4を用いると、次の三角形の外角定理が証明される。
定理6(三角形の外角定理)【証明】
頂点CをとおりABに平行な直線をひく。
定理3よりα=α’、定理4よりβ=β’
よって、α+β=α’+β’
(証明終わり)問題1
定理6を用いて定理5「三角形の内角の和は2直角である」を証明せよ。
例題1
下図のx°を求めよ。【解】
直線lとmに平行な直線を次のように引けば、x=α+βになることが分かるにゃ。
だから、求める角度x°=45°+30°=75°
問題2 下の図で、lとmが平行である。∠xの大きさを求めよ。
【ヒント】 平行線を2本引け!!
問題3 下の図で、BP、CPはそれぞれ、∠ABC、∠ACBの二等分線である。∠A=64°のとき、∠BPCは何度か。
【答】 この図を書いたお絵描きソフトによると、122°。
問題4 次の定理を証明せよ。
定理「平行な2直線の一方と交わる直線は他方にも交わる」
【証明】平行な2直線をa、bとし、直線cがaの交点をAとする。
cがbと交わらないと仮定する。cとbは交わらないので、cとbは平行。
であるとすると、点Aを通るbに平行な直線が2本引けることになり、平行線の公理に反し、不合理。よって、
「平行な2直線の一方と交わる直線は他方にも交わる」(証明終わり)
問題5 次の定理を証明せよ。
定理「異なる2直線が共有点をもつとき、共有点は1つである。」
【証明】2直線a、bが2点A、Bを共有点をもつと仮定する。
結合の定理より、2点A、Bを通る直線は1つだけであり、a、bは同一の直線となって、「異なる2直線」に反し、不合理である。よって、
「異なる2直線が共有点をもつとき、共有点は1つである。」(証明終わり)
証明に使っている図がおかしいって。
「これは直線じゃない」って。
直線は無定義用語だケロ。「真っ直ぐな線だ」、「曲がっていない線だ」なんてヒトコトも言っていないにゃ。
三角関数の第17回の問題2の(3)を微分を使って解く [ネコ騙し数学]
三角関数の第17回の問題2の(3)を微分を使って解くと・・・
問題
の解の個数は、aの値によってどう変わるか、求めよ。
第17回の問題2の(3)を、微分を使ってとこうという企画です。
とする。
この関数の最大、最小値やグラフの概形を書くために微分する。
で、極値を求めるためにf'(x)=0とする。
0≦x<2πでcosx=0を解くと、cosx=0の解はx=π/2、3π/2。
2sinx+1=0の解は
となる。
極値の判定は、f''(x)を求めて、f'(x)=0を満たすxに対して、f''(x)<0ならば極大、f''(x)>0ならば極小を用いてもいいけれど、この場合、計算が少し面倒なので、増減表を使って極値の判定をすることにするにゃ。
そして、
を前回と同じように
として、この2つの求める。
第17回 問題演習ラスト [ネコ騙し数学]
第17回 問題演習ラスト
問題1
とする。
(1) x=sinθ+cosθとおき、yをxの式であらわせ。
(2) 0<p<1のとき、yの最大値および最小値を求めよ。【解】
(1)x=sinθ+cosθを2乗する。
よって
(2) 合成公式から、
これで、xの定義域が定まった。
そして、(1)で求めたxの2次関数を基本変形する。また、0<p<1であるので、この2次関数の頂点は
である。
このグラフの概形を書くと、x=−pのとき最小で、x=√2のときに最大になることが分かる。
(解答終わり)
xの範囲を求めるのに三角関数の合成公式を使っているけれど、シュワルツの不等式を使うと
と簡単に求まる。
ちなみに、シュワルツの不等式は
この他にもいくつか方法はあるにゃ。
問題2 関数
がある。
(1) sinx=tとおきyをxであらわし、そのグラフを書け。
(2) yの最大値、最小値を求めよ。また、そのときのxの値を求めよ。(3) xについての方程式
の実数解の個数をaによって分類せよ。
【解】
(1)
(2)yを基本変形する。
このことから、t=−1/2のとき最小で−5/4が最小値。t=sinx=−1/2なので、x=7π/6、11π/6である。
t=1のとき最大で、最大値は1。t=sinx=1なので、x=π/2。
(3)
は同値なので、(1)の結果を用いて、上の交点の数を調べる。
このままでは調べられないので、
との交点を調べる。
a=−5/4のとき、t=−1/2で1個。
−5/4<a≦1のとき、2個。
1<a≦1のとき1個。これでオシマイじゃじゃ〜ない。
をグラフにすると、次のようになる。
つまり、t=sinxを満たすxは、t=±1のときは1個。−1<t<1のとき2個ある。
ということで、解の個数は、
a=−5/4のとき、2個−5/4<a<−1のとき、4個
a=−1のとき、3個−1<a<1のとき、2個
a=1のとき、1個これが(2)の答えとなる。
微分を使えば、次のような図を書けるけれどね〜。
このグラフを見れば、このことがわかると思う。
もしこれを、三角関数の微分を知らない文系さん用の入試問題に出したのであれば、落とすことを目的にした大学入試の問題とは言え、(2)は「数学嫌い」や「数学アレルギー」を作るだけで、いただけない。
第16回 問題演習4 [ネコ騙し数学]
第16回 問題演習4
問題1
△ABCにおいて、∠A=60°、AB=3、DC=10とする。BCを2:3に内分する点D、ADの延長が△ABCの外接円と交わる点をEとするとき、次の長さを求めよ。(1) AE (2)CE
【解】薄い藤色の2つの△ABDと△CEDは相似。
何故ならば、円周角の定理より∠EAB=∠ECB
∠ABC=∠AEC
となり、△ABD∽△CED
ADは余弦定理より
△ABD∽CEDなので
よって、
(2)
(解答、終わり)
①より、円に内接する四角形に関して、
という関係が成立することがわかる。
この問題にはないけれど、 ACは余弦定理を使って
そして、正弦定理より、△ABCの外接円の半径Rは
問題2 円に内接する四角形において、AB=a、BC=b、CD=c、DA=dであるとき、cosBの値を求めよ。
【解】
四角形ABCDは円に内接するので、∠Bと∠Dの和は180°である。よって、
になる。
よって、
§ 転換法
三角関数の次に、ねこ騙し数学で取り上げる初等幾何との関係もあり、転換法と呼ばれる証明法について少し説明することにする。
転換法
一連の真である命題p₁⇒q₁、p₂⇒q₂、p₃⇒q₃、…があって【1】 p₁、p₂、p₃、…は、すべての場合を尽くしている
【2】 q₁、q₂、q₃、…は、どの2つも両立することがないこのとき、q₁⇒p₁、q₂⇒p₂、q₃⇒p₃、…は、すべて真である。
もっとも簡単なp₁⇒q₁、p₂⇒q₂の場合を証明する。
【証明】p₁⇒q₁、p₂⇒q₂で、かつ、【Ⅰ】、【Ⅱ】を満たしているとする命題があるとする。
いま、仮に、q₁であってp₁のものがある、つまり、q₁かつp₂のものがあるとする。p₂⇒q₂は真なので、q₁かつq₂である。
しかし、q₁とq₂は両立しないから矛盾。よって、q₁⇒p₁である。
同様に、q₂⇒p₂である。(証明終わり)
これでは何を書いているかわからないと思うので、2次方程式の解の判別を例にとって説明するにゃ。
例 次のような実係数(a、b、cは実数)の2次方程式があるとする。
になる。
とすれば、2次方程式の解は次のように書ける。
そして、
(1) D>0⇒相異なる2実根
(2) D=0⇒唯一の実根、実数解(重根)(3) D<0⇒相異なる虚根
(1)〜(3)はすべて真。さらに、
Dは実数だから、D>0、D=0、D<0のいずれかで、これ以外の値はとりえない。つまり、すべての場合を尽くしており、【1】を満たしている。(1)〜(3)の結論も互いに両立せず、【2】も満たしている。故に、転換法によって、
(1)〜(3)の逆、(1’) 相異なる2実根⇒D>0
(2’) 唯一の実根、実数解(重根)⇒D=0(3’) 相異なる虚根⇒D<0
が成立し、【Ⅰ】 D>0⇔相異なる2実根
【Ⅱ】 D=0⇔唯一の実根、実数解(重根)【Ⅲ】 D<0⇔相異なる虚根
である。こういうことです。
では、これを真似て次の問題を。
問題3
△ABCにおいて、次のⅠ、Ⅱ、Ⅲが成り立つ。これらの逆も成り立つことを証明せよ。Ⅰ ∠Cが鋭角⇒a²+b²>c²
Ⅱ ∠Cが直角⇒a²+b²=c²Ⅲ ∠Cが鈍角⇒a²+b²<c²
【証明】△ABCにおいて、余弦定理
が成り立つ。
∠Cは鋭角(C<90°)か、直角(C=90°)、鈍角(C>90°)のいずれかのひとつだけ。だから、この3つの場合ですべて尽くされている。
そして、C<90°ならば、cosC>0なのでC=90°のとき、cosC=0なので
C>90°のとき、cosC<0なので
よって、Ⅰ〜Ⅲは真。
そして、Ⅰ〜Ⅲにおいて、その仮定はすべてを尽くしており、その結論はどの2つも両立することがない。
よって、転換法によって、Ⅰ〜Ⅲの逆もすべて成立する。(証明終わり)
上の議論から、
Ⅰ ∠Cが鋭角⇔a²+b²>c²Ⅱ ∠Cが直角⇔a²+b²=c²
Ⅲ ∠Cが鈍角⇔a²+b²<c²であることがわかる。
問題4 3数、x、x+1、x+2が鈍角三角形の3辺の長さをあらわす数値であるための範囲を求めよ。
【解】三角形の3辺には、三角不等式、他の2辺の長さの和>1辺の長さの和が成り立たなければならない。
よって、また、この三角形は鈍角三角形なので、最大辺x+2と他の2辺x、x+1において、次の関係が成り立たなければならない。
よって、1<x<3
第15回 問題演習3 [ネコ騙し数学]
第15回 問題演習3
問題1
(1) 最小角の余弦を求めよ。
(2) 3辺の長さを求めよ。(1) 三角形の面積をSとすると
よって、最小角は、余弦定理より
(2)
(1)の結果よりS=6k。
よってしたがって、
問題2
△ABCの辺AB、AC上にそれぞれ点P、Qをとり、線分PQをひいて△ABCの面積を2等分する。このような線分PQの長さの最小値を、辺ABの長さをc、辺ACの長さb、∠Aの大きさをαを用いてあらわせ。ただし、b/2≦c≦2bとする。x=AP、y=AQとする。
条件より、
余弦定理より
相加平均≧相乗平均より
①より、等号が成立するとき
だからと言って、こんなxとyが存在するとは限らないにゃ。b、cの値によって、xはcより大きく、yはbより大きくなったりするからだにゃ。
PはAP上に存在しなければならないので、x≦c同様に、y≦bなので
ここから、b/2≦c≦2bという条件が出てくるというわけ。
よって
したがって、
のとき、PQは最小で最小値は
(解、終わり)
b=3、c=1のとき
となって、PはABの延長線上にあることになってしまう(^^)
じゃ〜、このとき、PQに最小値は存在するのか。
∠A=α=90°とすると、そして、
よって、
だから、
微分してもいいけれど、グラフを書くと、次のようになるにゃ。
このとき、PはB、QはACの中点になる。
だから、PQにはの最小値は存在する。