第25回 三角形の5心 [ネコ騙し数学]
第25回 三角形の5心
三角形には、三角形の5心と呼ばれる次のようなものがある。
(1)重心
三角形の3中線は一点で交わり、その交点を重心という。重心は中線を2:1に内分する。
【証明】
AB、ACの中点をF、E、BEとCFの交点をGとする。中点連結定理から
△GBC∽△GFEだから
BG:GE=2:1 ①
BC、ACの中点をD、Eとし、AD、BEの交点をHとする。中点連結定理より、
△GAB∽△GDEだから
BH:HE=2:1 ②
①、②より、GとHはACの中線BEを2:1に内分しているので、GとHは同一の点である。よって、 三角形の3中線は一点で交わり、重心は中線を2:1に内分する。
(2)外心
三角形の3辺の垂直二等分線は一点で交わり、その交点を外心という。外心は三角形の3頂点から等距離にあり、外接円の中心である。【略証】
ABとBCの垂直二等分線の交点をOとする。そうすると、△OABはOA=OB、△OBCはOB=OCの二等辺三角形。
よって、OA=OCとなり、△OCAはOA=OCの二等辺三角形。だから、OからACに垂線をおろしその交点をEとすると、二等辺三角形の性質からAE=ECとなる。したがって、
三角形の3辺の垂直二等分線は一点で交わり、外心は三角形の3頂点から等距離にあり、外接円の中心である。(3)内心
3頂角の二等分線は一点で交わり、その交点を内心という。内心は三角形の3辺から等距離にあり、この三角形の内接円の中心である。【証明」
∠ABCと∠ACBの二等分線の交点をIとし、Iから辺BC、CA、ABにおろした垂線の足をD、E、Fとする。∠ABCの二等分線なので、
∠IBF=∠IBD
また、∠IFB=∠IDB=∠R
よって、∠BIF=∠BID
IBは共通なので、△IBF≡△IBD
よって、IF=ID
同様に、△IDC≡△IECよって
IE=ID=IF斜辺(IA)と他の1辺が等しいので、直角三角形の合同条件より
△IAF≡△IAEよって、
∠IAF=∠IAEとなり、AIは∠BACを2等分している。
以上のことから、3頂角の二等分線は一点で交わり、内心は三角形の3辺から等距離にあり、この三角形の内接円の中心である
(4)傍心
三角形の1つの内角と2つの外角の二等分線は一点で交わり、その交点を傍心という。傍心は3辺またはその延長と等距離にあり、傍接円の中心である。∠Bと∠Cの外角の二等分線の交点をI'とする。さらに、I’からBCと、AB、ACの延長におろした垂線の足をD、E、Fとする。
∠Bの外角の二等分線なので、
∠I'BD=∠I'BEまた、
∠I'DB=∠IEB=∠Rだから
∠BI'D=∠BI'EBI’は共通なので、
△I'BD≡△I'BEよって、
I'D=IE同様に、
△I'CD≡△ICFより
I'F=I'D=I'E△AI'Eと△AI'Fに注目。
斜辺ABは共通、さらにI'E=I'F、直角三角形の合同条件より△AI'E≡△AI'F
よって、∠I’AE=∠I'AF
だから、AI'は∠BACを二等する。以上のことより、
三角形の1つの内角と2つの外角の二等分線は一点で交わり、傍心は3辺またはその延長と等距離にあり、傍接円の中心である。(証明終わり)
傍心は、重心、外心、内心、垂心とは異なり、1つの三角形に3つあることに注意。
(5)垂心
三角形の3頂点から対辺におろした垂線は一点で交わり、その交点を垂心という。【証明】
図のように、△ABCの各頂点をとおり、AB、BC、ACに平行な直線を引き、交点をP、Q、Rとする。四角形ABPCは平行四辺形なので、
AB=CPAC=BP
になる。同様に、四角形ARBCに注目すると、これは平行四辺形だから、
BC=RAAC=RB
になる。同様に、
AB=QCBC=AQ
よって、A、B、CはRQ、RP、PQの中点。また、
だから、
∠BEC=∠ABR=∠R (錯角相等)
つまり、BEはRPの垂直二等分線。同様に、CF、ADはPQ、QRの垂直二等分線。
△PQRの各辺の垂直二等分線の交点Hは△PQRの外心で、一点で交わる。よって、
三角形の3頂点から対辺におろした垂線は一点で交わる(証明終わり)
第24回 2円の共通接線の方程式を求める [ネコ騙し数学]
第24回 2円の共通接線の方程式を求める
問題
2つの円C₁:x²+y²=4、C₁:(x−4)²+y²=1の両方に接する直線は全部で4つある。この4本の直線を求めよ。解法は幾つかありますが、一番簡単なのは次の公式を利用する方法だろう。
ax+by+c=0と点(x₀,y₀)の距離dはである。
これを使ってこの問題を解いてみることにするにゃ。
C₁上の点(s,t)に接する直線の方程式は
となる。
点(s,t)はC₁上の点なので
でなければならない。
①はC₂の接線だから、C₂の中心(4,0)との距離は1。
よって、直線と点の距離の公式より②より
また、
だから、これにs=1/2、3/2を代入すると
よって、
この値を①に代入したのが共通接線の方程式で
となる。
これでいいと思うけれど、ちょっと見てくれが悪いので
(解答終わり)
いま、初等幾何をやっているので、初等幾何の知識を使ってこの問題に迫ってみるにゃ。
2本の共通外接線の交点をAとする。図形の対称性からAがx軸上にあるのは明らかだケロ。
また、円C₁の中心をO₁、円C₂の中心をO₂、そして共通外接線(の一本)と円C₁、C₂の接点をB、Cとする。
接線なのだから半径となす角は直角。このことから、O₁BとO₂Cが平行であることがわかる。そして、C₁の半径は2、C₂の半径は1だケロ。だから、点Cと点O₂は中点連結定理より、AB、AO₁の中点ということになる。
よって、このことから、Aは(8,0)であることがわかる。
△ABO₁は直角三角形なので
また、共通外接線とy軸との交点をDとすると、
△ABO₁∽△AO₁D
よって、よって、この直線の傾きが
であることがわかり、
直線の方程式が
上下あるので
と求めることができる。
共通内接線は
△ABO₁∽△ACO₂よって、AはO₁O₂を2;1に内分する。
このことから
で、三平方の定理より
で、△AO₁D∽△ABO₁
よって、直線の方程式は
初等幾何でこの問題を解くことができた。
番外編 円の接線と極線 [ネコ騙し数学]
円外の点Pから円Oに接線を引き、その接点をQ、Rとする。Q、Rを通る直線を円Cに関するPの極線といい、Pを極という。
抽象的な話ではイメージがわかないと思うので、早速、問題を解いてみることにする。
問題1 次の問いに答えよ。
(1) 円x²+y²=5に点(3,1)から引いた接線の方程式と接点を求めよ。(2) (1)で求めた接点を通る直線の方程式を求めよ。
【解】(1) 接点を(a,b)とする。そうすると、接線の方程式は
これが点(3,1)を通るので
また、(a,b)は円x²+y²=5上の点なので
②と③より
bは②より
よって、接点は(a,b)=(1,2)、(2,−1)。
また、接線の方程式は①より
(2) 2点(1,2)、(2,−1)を通る直線の方程式は
(解答終わり)
こういうふうに解くことができる。
(2)の直線、つまり、(3,1)に関する円x²+y²=5を求めるだけならば、こうした計算をすることなく、とすぐに求められるんだケロ。
問題2 円x²+y²=r²のP(x₁,y₁)の接線の方程式は
である。
(1) 円外の点A(a,b)からこの円に2つの接線を引き、その接点をP、Qとするとき、PQの直線の方程式を求めよ。
(2) 直線PQ上の円外の1点より、再びこの円に2つの直線を引き、接点をB、Cとする。このとき、直線BCはAを通ることを示せ。(1) 接点をP(x₁,y₁)、Q(x₂,y₂)とすると、その接点における接線の方程式は
①、②は点A(a,b)を通るので
となり、P、Qは直線ax+by=r²上にあることとなる。2点を通る直線は1本しかないので、これが求める直線である。
よって、
である。
だから、問題1の(2)は、計算をするまでもなく、3x+y=5と求めることができる!!
(2) 直線PQ上の円外の点をR(s,t)とする。この点は⑨上にあるので
である。
また、⑨からB、Cを通る直線の方程式は
④の左辺にx,y)=(a,b)を代入すると、③より
となり、点(a,b)は直線BC上にあることになる。
(解答終わり)
この問題2は定理(のようなもの)なのであった。
ちゃんと通っているだろう。初等幾何的な証明ではないけれど、この定理を証明したということになる。
もののついでに話しただけだにゃ。
だけど、時々、大学の入試問題でこれに類する問題が出るようだね。受験生ならば、知っておいて損のない話であると思う。
番外編 円の接線 [ネコ騙し数学]
番外編 円の接線
原点を中心とする半径rの円があり、この円周上の点(x₀,y₀)を通る接線の方程式を求めることにする。
接線と円の接点をA(x₀,y₀)とし、接線の傾きをmとする。接線と半径は、接点において直交する。OとAを通る直線の傾きをm'とすると
mm'=−1
という関係がある。m'は
よって、
したがって、接線の方程式は
この導出は少し傷がある。
というのは、この導出では、接線の方程式をy=mx+nと仮定して議論を進めている。
しかし、(±r,0)での接線x=±rは、上の式に(x₀,y₀)=(±r,0)を代入するとなるので、結果オーライということで誤魔化す(^^ゞ
この傷が気になる人はベクトルの内積を使って、次のように求めるいい。
導出方法は、どうであれ、原点を中心とし半径rの円の(x₀,y₀)における接線の方程式は次のようになる。
問題1 次の場合における接線を求めよ。
(1) 点(−3,2)を通り、円x²+y²=4に接する。(2) 円x²+y²=169の周上の点(5,−12)における接線。
【解】(2) ①より
よって、接線の傾きをmとすると、接線の方程式は
これが中心(0,0)、半径2の円に接するので
よって、接線の方程式は
(解答終わり)
問題2 x²+y²−6x−4y+9=0と点(−2,1)があるとき、点からこの円に引いた接点の長さを求めよ。
【解】よって、これは中心(3,2)で半径2の円。
図のように点をとると、求めるのはAB、ADだけれど、これはAB=ADなので、どちらか一方を求めればよい。
2点間の距離の公式よりで、△ABCは∠B=90°の直角三角形なので
よって、接線の長さは√22。
(解答終わり)
この問題は、接線の方程式を求めよとか、接点を求めよと書いていないので、これでいいにゃ。
そして、まとめと言える次の問題。
問題3 2点P、Qがある。点Pの座標は(x₁,y₁)、点Qの座標は(x₂,y₂)である。
(1) 直線PQの方程式を求めよ。(2) 点P、Qの中点の座標を求めよ。
(3) P、Qの直径の両端とする円の方程式を求めよ。(4) 円上の点P(x₁,y₁)での、この円の接線の方程式を求めよ。
【答】
どうして、(1)、(4)になるかわからないって?
ちょっと式の形が変わると、それに幻惑されるのは良くないにゃ。x₂≠x₁のとき、2点(x₁,y₁)と(x₂,y₂)を通る直線の式は
になるじゃないか。
そして、この形にすると、x₂=x₁の時にも、この公式を使うことができる。だから、この形にするのには意味があるんだケロ。
(4)は、PQの中点をO、接線上の点Rとすると
になる。
ゆえに、
番外編 円の方程式 [ネコ騙し数学]
番外編 円の方程式
§1 円の方程式
(1) 円の基本形CとPがxy平面上にある、その座標がそれぞれ(a,b)、(x,y)であるとすると、この円の方程式は、二点間の距離の公式(三平方の定理)より
となる。
特に、円の中心Cが(a,b)=(0,0)、つまり、原点であるとき、円の方程式は
である。
繰り返し書くけれど、中心C(a,b)で半径rの円の方程式は
(2) 円の一般形
のとき、
と変形できる。
よって、l²+m²−4n>0のとき、②は中心、半径の円になる。
問題1 次の円の方程式を求めよ。
(1) 中心が(1,2)で、点(5,0)を通る(2) 2点(4,-5)、(2,3)を結ぶ線分を直径とする円
(3) 3点A(-3,7)、B(4,6)、C(3,−1)を通る円【解】
円の半径をrとする。(1) 円の方程式は、①より
この円が点(5,0)を通るので
よって、
(別解)
半径rは(1,2)と(5,0)の2点間の距離に等しい。よって
したがって、円の方程式は
(2) 円の中心は2点(4,-5)、(2,3)を結ぶ線分の中点。
よって、円の中心(a,b)は半径rは
よって、円の方程式は
(別解)
この円の方程式はだケロ!!
(x₁,y₁)、(x₂,y₂)を両端とする円の方程式は
という公式がある。
なぜならば、A(x₁,y₁)、B(x₂,y₂)、P(x,y)とすると、AP⊥BPだから
になるからだケロ。
(3) 解くの面倒くさいにゃ。
円の方程式をとして、(x,y)=(−3,7),(4,6),(3,−1)を上の式に代入すれば3本の連立方程式が得られ、それを解くと
となるらしい(^^ゞ
問題2 次の方程式があらわす円の中心、および、半径を求めよ。
(1) x²+y²−6x+4y−12=0(2) x²+y²=6x
【解】(1) x²+y²−6x+4y−12=0の平方完成をする。
よって、中心(3,−2)、半径5の円。
(2) x²+y²=6xだから
よって、中心(3,0)、半径3の円。
§2 円と直線
(1) 直線と点の距離直線ax+by+c=0と点(x₁,y₁)の距離dは
である。
(2) 円と直線
円の半径をr、円の中心と直線の距離をdとするとき、(ⅰ) r<dならば交点0
(ⅱ) r=dならば交点1(接点)(ⅲ) r>dならば交点2
になる。これらの知識を使って円と直線の交点の数の判別をしてみることにする。
問題3 x²+y²=4とy=ax−3との共有点の個数は、実数aの値によってどう変わるか。
【解】だから、これは原点(0,0)を中心とする半径2の円。
また、この円の中心(0,0)とax−y−3=0の距離は
になる。
d>2のとき
d=2のとき
d<2のとき
この結果をまとめると、
第23回 2円の位置関係と共通接線 [ネコ騙し数学]
第23回 2円の位置関係と共通接線
§1 2円の位置関係
中心をO、O'、半径をr、rとする2つの円O、円O'があり、2つの円の中心の距離をdとする。
このとき、r+r'>dならば、2つの円は交わらない。
r+r'=dならば、この2つの円は外接する。
r+r'>d>|r−r'|のとき、この2つの円は2点で交わる。
また、d=|r−r'|のとき、r≠r'ならば2円は内接し、r=r'のとき2つの円は重なりあうというか一致する。
そして、d<|r−r'|のとき、半径の大きい円に半径の小さい円が含まれる。
2つの円にはこのような位置関係がある。
§2 共通外接線と共通内接線
(1) 共通接線2つの円に接する直線をこの2円の共通接線という。2円が共通接線と同じ側にあるとき共通外接線といい、異なる側にあるとき共通内接線という。
赤い線で示してある2本の接線が共通外接線で、青い線で示している2本の接線が共通内接線。
図に示してあるように2円が交わらない(d>r+r')場合、共通外接線が2本、共通内接線が2本で共通接線は4本存在する。
しかし、共通接線の数は、2つの円の位置関係によって変わり、2円が外接するとき(d=r+r')は共通外接線が2、共通内接線は1の計3本になる。共有点が2つある場合共通外接線の2本のみで、内接するときは共通外接線が1本になる。
(2)共通接線の長さ
共通外接線の長さは、次の図から
になる。
また、共通内接線の長さは、次の図から
となる。
今回は図が多いので、これでおしまいだケロ。
第22回 円の性質 [ネコ騙し数学]
第22回 円の性質
§1 円の基本性質
(1) 円の定義
平面上のある1点Oから一定の距離にある点の集合を円という。この点Oを円の中心といい、Oと円周上の点の距離を円の半径という。英語で半径のことをradiusというので記号rであらわす。
直径(diameter)は、円の中心を通り、両端点が円周にある線分の距離のことで、円の直径をdとすると、直径dと半径rの間には
という関係がある。
この定義から半径の等しい2つの円は合同になる。
(2) 中心角と弧、弦
円周上に2点A、Bがあるとき、線分ABを弦という。弦を含む直線を割線という。割線によって円は2つの部分に分けられ、分けられたそれぞれを円弧または弧と呼ぶ。
割線によって分割された2つの弧の長さが異なるとき、弧の大きい方を優弧といい、小さい方を劣弧(れっこ)という。また、弧の長さが等しいとき、これらの弧を半円周という。
また、円の弧の両端A、Bと中心Oを結ぶ線分AO、BOのなす角∠AOBを中心角という。
おおぎ形と弓形に関してはもう、図だけで勘弁して。
(3) 中心角と弧、弦についての基本性質
一つの円、または半径の等しい円について
① 等しい弧に対する中心角は等しく、中心角の等しい弧は等しい② 中心角とこれに対する弧は比例する
③ 等しい弧に対する弦は等しく、等しい弧に対する弦は等しいが成り立つにゃ。
これらは直感的にほとんど明らかなので証明しないことにし、円周率πは
で定義され、おうぎ形の弧の長さをl、中心角をθ°、円の直径をdとすると
になるということでお茶を濁すにゃ。
(4) 弦の性質
① 中心から弦に引いた垂線は弦の中点を通る
② 弦の垂直二等分線は円の中心を通る③ 中心と弦の中点を通る直線は垂直である
④ 等しい弦は中心から等しい距離にあり、中心から等距離にある弦は等しい図に示すように、中心をOとする円とその円の弦ABがあるとする。
円の定義からOA=OBとなり、△OABはOA=OBとする二等辺三角形になる。
そして、これらは、二等辺三角形の性質からすぐに出てくるケロ。本当ケロか。だんだん面倒くさくさくなって、誤魔化していないか、ネムネコ(^^ゞ
§2 円と直線
(1) 点と直線の距離
点Aと直線lとの距離は、点Aと直線l上の点との最小の距離で、Aから直線lにおろした垂線の長さである。点Aからlにおろした垂線の足をB、点Aと直線lの距離をdとすると、d=ABになるにゃ。
このことは次の図を見れば明らかでしょう。
垂線の足であるBと異なる直線上の点をCとし、△ABCを作る。このとき∠ACB<∠ABCだから、AB<ACとなる。だから、点Aと直線lとの距離はABになる。
(2) 円と直線の関係
円の中心をO、半径rの円と直線があり、円の中心と直線の距離をdとする。このとき、円と直線の交点は次のようになる。
① d<r⇔交点が2② d=r⇔交点が1
③ d>r⇔交点が0円と直線の交点(共有点)が一つのとき円と直線は接し、その交点を接点という。
定理
円Oの接線は接線を通る半径に垂直である。逆に半径の端における垂線はその点で円に接する。この証明は背理法を使うことになる。
例えば、こんな感じ・・・。「円Oの接線は接線を通る半径に垂直でない」と仮定する。
そして、接点Pとし、円の中心Oから直線lにおろした垂線の足をQとする。図では∠OQPは90°に見えないけれど、これは90°だにゃ。そう言い聞かせるにゃ。
そして、△OPQに注目。このとき∠OQP=90°だから
∠OQP>∠OPQとなり、角とその対辺の関係から
OP>OQ ①だけど、図から明らかなように
OQ>OP ②でなければならない。何故ならば、OQ<OPであるとすると、Qは円の内部にあることになり、直線と円の交点、共有点が2つになってしまうからだにゃ。つまり、OQ<OPならば、lは接線でないことになってしまう。
で、①と②は矛盾しているので、「円Oの接線は接線を通る半径に垂直でない」とした仮定が間違っているとなる。つまり、円Oの接線は接線を通る半径に垂直である。
こう証明するのならば、①、すなわち、OP>OQならば、Qは円の内部にあることになり直線と円の交点、共有点が2つあることになり、(円の)接線の定義に反する、とした方が素直でしょう。
(円の)接線の定義
円との共有点が1つである直線この接線の定義は円の接線の定義であって、一般の曲線では成立しない。このことは、次の曲線を見れば明らかだにゃ。
定理
円O外の点Pからこの円に引いた2本の接線の長さは等しい(PA=PB)。また、POは角を2等分し、弦ABを垂直に2等分する。
証明はこの図で十分でしょう。
△AOPと△BOPは直角三角形で、AO=BOかつ斜辺OPが共通なので
△AOP≡△BOP
よって、PA=PB
また、合同なのだから∠AOP=∠BOP
∠APO=∠BPOで、POは角を二分するにゃ。
ABの中点をCとするにゃ。OA=OBだから、△OBAは二等辺三角形だから、∠AOBの二等分線はABを2等分するにゃ。
まっ、そういうことで。
第21回 三角形の辺と角の大小2 [ネコ騙し数学]
第21回 三角形の辺と角の大小2
§1 正弦定理、再び
三角関数でやった正弦定理を覚えているケロか。
正弦定理
この正弦定理を使うと、
を証明することができる。
まず、△ABCが鋭角三角形、または、直角三角形(∠C=90°)の場合を考える。
正弦定理からになる。
ここで、正弦関数y=sinx(0<x<π)のグラフを思い出して欲しい。グラフをかくと次のようになる。
このグラフから明らかなように、0<x≦π/2では正弦関数は単調増加で、π/2<x<πで単調減少になっている。
つまり、0<x≦π/2では、
が成立する。
だから、
となる。
問題は、鈍角三角形。議論を簡単にするために、△ABCの最大角を∠C>90°=π/2とする。
三角関数の角関係よりが成立する。
こうすると、
となる。
もしこのとき0<B<π/2<C<πで
ということが起きたとする。
すると、このとき、
となり、△ABCの内角の和が180°を超してしまう。
だから、鈍角三角形の場合も
が成立し、これと正弦定理を合わせると
が成立する。
よって、△ABCでは
である。
三角関数の正弦定理を使っても証明できるという話でした。
§2 三平方の定理、再び
問題 △ABCにおいて
であることを証明せよ。また、(1)、(2)の逆も成立することを証明せよ。
この問題は、余弦定理のところでも解いているのですが、初等幾何では三角比や三角関数を使わないという鉄則があるので、あらためて初等幾何の範囲内でこのことを証明することにする。
【証明】
∠A=R、A'B'=AB、A'C'=ABとなる直角三角形があるとする。
△A'B'C'は直角三角形なので
(1) △ABCのAとBを△A'B'C'のA'B'に重ねる。
△ABCと△A'B'C'において∠A<∠A'=∠Rだから、第19回の定理BよりBC<B'C'。
よって、
(2) 同様に、△ABCと△A'B'C'において∠A>∠A'=∠RだからBC>B'C'。
(証明終わり)
【逆の証明】
三平方の定理と上の(1)と(2)から
①、②、③の仮定はすべての場合を尽くしており、その結論は、それぞれ、そのほかの結論と両立し得ない。
よって、転換法より、①、②、③の逆が成立する。
【証明終わり】第20回 三角形の2辺の和と差 [ネコ騙し数学]
第20回 三角形の2辺の和と差
定理
三角形において(1) 2辺の和は第3辺よりも大きい。
(2) 2辺の差は第3辺よりも小さい。BA+AD=AB+AC=BD ①
三角形ACDはAC=AD、
二等辺三角形だから
よって、
∠D=∠ACD<∠BCA+∠ACD∠BCD第19回の定理Aより
BD>BC ②①と②より
AB+AC>BCよって、
三角形の2辺の長さの和は、残りの他の1辺の長さよりも大きい
(2)
②より、b−c<a、③よりc−b<a。
よって、
同様に、
(証明終わり)
中学・高校で習ったこの大定理が証明されたにゃ。
問題1
4角形ABCDにおいて、AB、CDの中点をそれぞれE、Fとすれば、であることを証明せよ。
【解】
点AとEを直線で結び、その中点をMとする。
(1) E、M、Fが同一線上にないとき、定理から
(2) E、M、Fが同一直線上にあるとき、
よって、
(証明終わり)
問題2
△ABC内の任意の1点をPとすれば
【解】
BPの延長とACの交点をDとする。
△ABDに注目すると△PCDに注目すると
①と②の辺々を足すと
(証明終わり)
問題3
△ABCにおいて、辺BCの中点をDとするとき、次のことを証明せよ。(1) AB+AC>2AD
(2) AB>ACならば∠BAD<∠CAD(1) ADを2倍に延長したものをAEとする。
対角線をそれぞれが2等分するので、四角形ABECは平行四辺形。
よって、BE=AC△ABEに注目。
(2) より∠CAD=∠BEA(錯角相等)。
また、BE=ACだからAB>BE△ABEに注目。
AB>BEだから(証明終わり)
第19回 三角形の角と辺の大小 [ネコ騙し数学]
第19回 三角形の角と辺の大小
§1 三角形の辺と角の大小
定理A
三角形において(1) 大きい辺に対する角は小さな辺に対する角よりも大きい。
(2) 大きい角に対する辺は小さな角に対する辺よりも大きい。【証明】
(1) AB>ACとする。AB>ACなので、AB上にAD=ACである点Dを取ることができる。
よって、
∠ADC=∠ACD
よって、AB>ACならば、∠C>∠Bである。
(証明終わり)
(2) ∠C>∠Bとすると、AB上に∠ECA=∠Bとなる点Eを取ることができる。
さらに、∠BCEの二等分線とABの交点をFとする。∠AFC=∠FCA (※)
で、△AFCは二等辺三角形。よって、
AB>AF=AC(証明終わり)
(※)外角定理より、∠AFC=∠B+∠BCF
∠FCA=∠EFC+∠FCE=∠B+∠BCF∴ ∠AFC=∠FCA
(2)で背理法を使うならば・・・。
∠C>∠BのときAC≧ABであるとする。AC=ABのとき、二等辺三角形なので∠C=∠Bとなり矛盾。
AC>ABのとき、(1)より∠B>∠Cとなり矛盾。よって、∠C>∠BならばAB>ACである。
問題1 △ABCの∠Aの2等分線がBCと交わる点をDとすると、
【解】
三角形の外角定理より
∠BDA=∠C+∠CACD=∠C+∠DAB>∠DAB△ABDに注目すると、∠DABの対辺はBDで、∠BDAの対辺はABだから、定理Aより
AB>BDである。
また、∠ADC=∠B+∠DAB=∠B+∠CAB>∠CAB
△ADCに注目すると、同様にAC>DC
である。
問題2
【証明】
AB>ACより∠C>∠B
よって、
(証明終わり)
§2 2つの三角形の辺と角の大小
定理B 2つの△ABC、△A'B'C'において、AB=A'B'、AC=A'C'とする。
(1) ∠A>∠A'ならばBC>B'C'(2) BC>B'Cならば∠A>∠A'
【証明】(1) 図のように、A’B'をABに一致するように△A'B'C'を△ABCに重ねる。
△ADE≡△A'CE
よって、DE=EC
三角形の2辺の和は他の1辺より大きいので、BD<BE+ED=BE+EC=BC
よって、BC>BC'
である。
(2)
∠A>∠A'ならばBC>B'C'
∠A=∠A'ならばBC=B'C'∠A<∠A'ならばBC<B'C'
よって、転換法よりBC>B'Cならば∠A>∠A'
(証明終わり)問題4 △ABCの辺AB、AC上にそれぞれ点D、EをBD=CEとなるようにとると、
AB>ACならばBE>CD【解】
△ABCに注目。
AB>ACならば、定理Aの(2)より∠B<∠C
で、△BCDと△BCEの2つの三角形に注目する。BCは共通、そして、BD=CE。そして、∠B<∠Cだから、定理Bの(1)より
BE>CDである。
よって、AB>ACならばBE>CD