第25回 三角形の5心 [ネコ騙し数学]
第25回 三角形の5心
三角形には、三角形の5心と呼ばれる次のようなものがある。
(1)重心
三角形の3中線は一点で交わり、その交点を重心という。重心は中線を2:1に内分する。
【証明】
AB、ACの中点をF、E、BEとCFの交点をGとする。中点連結定理から
△GBC∽△GFEだから
BG:GE=2:1 ①
BC、ACの中点をD、Eとし、AD、BEの交点をHとする。中点連結定理より、
△GAB∽△GDEだから
BH:HE=2:1 ②
①、②より、GとHはACの中線BEを2:1に内分しているので、GとHは同一の点である。よって、 三角形の3中線は一点で交わり、重心は中線を2:1に内分する。
(2)外心
三角形の3辺の垂直二等分線は一点で交わり、その交点を外心という。外心は三角形の3頂点から等距離にあり、外接円の中心である。【略証】
ABとBCの垂直二等分線の交点をOとする。そうすると、△OABはOA=OB、△OBCはOB=OCの二等辺三角形。
よって、OA=OCとなり、△OCAはOA=OCの二等辺三角形。だから、OからACに垂線をおろしその交点をEとすると、二等辺三角形の性質からAE=ECとなる。したがって、
三角形の3辺の垂直二等分線は一点で交わり、外心は三角形の3頂点から等距離にあり、外接円の中心である。(3)内心
3頂角の二等分線は一点で交わり、その交点を内心という。内心は三角形の3辺から等距離にあり、この三角形の内接円の中心である。【証明」
∠ABCと∠ACBの二等分線の交点をIとし、Iから辺BC、CA、ABにおろした垂線の足をD、E、Fとする。∠ABCの二等分線なので、
∠IBF=∠IBD
また、∠IFB=∠IDB=∠R
よって、∠BIF=∠BID
IBは共通なので、△IBF≡△IBD
よって、IF=ID
同様に、△IDC≡△IECよって
IE=ID=IF斜辺(IA)と他の1辺が等しいので、直角三角形の合同条件より
△IAF≡△IAEよって、
∠IAF=∠IAEとなり、AIは∠BACを2等分している。
以上のことから、3頂角の二等分線は一点で交わり、内心は三角形の3辺から等距離にあり、この三角形の内接円の中心である
(4)傍心
三角形の1つの内角と2つの外角の二等分線は一点で交わり、その交点を傍心という。傍心は3辺またはその延長と等距離にあり、傍接円の中心である。∠Bと∠Cの外角の二等分線の交点をI'とする。さらに、I’からBCと、AB、ACの延長におろした垂線の足をD、E、Fとする。
∠Bの外角の二等分線なので、
∠I'BD=∠I'BEまた、
∠I'DB=∠IEB=∠Rだから
∠BI'D=∠BI'EBI’は共通なので、
△I'BD≡△I'BEよって、
I'D=IE同様に、
△I'CD≡△ICFより
I'F=I'D=I'E△AI'Eと△AI'Fに注目。
斜辺ABは共通、さらにI'E=I'F、直角三角形の合同条件より△AI'E≡△AI'F
よって、∠I’AE=∠I'AF
だから、AI'は∠BACを二等する。以上のことより、
三角形の1つの内角と2つの外角の二等分線は一点で交わり、傍心は3辺またはその延長と等距離にあり、傍接円の中心である。(証明終わり)
傍心は、重心、外心、内心、垂心とは異なり、1つの三角形に3つあることに注意。
(5)垂心
三角形の3頂点から対辺におろした垂線は一点で交わり、その交点を垂心という。【証明】
図のように、△ABCの各頂点をとおり、AB、BC、ACに平行な直線を引き、交点をP、Q、Rとする。四角形ABPCは平行四辺形なので、
AB=CPAC=BP
になる。同様に、四角形ARBCに注目すると、これは平行四辺形だから、
BC=RAAC=RB
になる。同様に、
AB=QCBC=AQ
よって、A、B、CはRQ、RP、PQの中点。また、
だから、
∠BEC=∠ABR=∠R (錯角相等)
つまり、BEはRPの垂直二等分線。同様に、CF、ADはPQ、QRの垂直二等分線。
△PQRの各辺の垂直二等分線の交点Hは△PQRの外心で、一点で交わる。よって、
三角形の3頂点から対辺におろした垂線は一点で交わる(証明終わり)