確率の初歩5 条件付き確率と事象の独立 [ネコ騙し数学]
確率の初歩5 条件付き確率と事象の独立
§1 条件付き確率と事象の独立
(1) 条件付き確率ある試行において、事象Aが起こったときの事象Bの起こる確率を条件付き確率といい、であらわす。
例1 箱の中に7個の白玉、3個の赤玉が入っており、取った玉は箱に戻さないことにする。
そして、1回目に赤玉を引く事象をA、2回目に赤玉を引く事象をBとすると、AとBの積事象A∩Bは1回目、2回目ともに赤玉を引く事象ということになる。赤玉を2度引く組み合わせの数は通り、すべての組み合わせの数はだから、2回とも赤玉が出る確率P(A∩B)は
したがって、1回目に赤玉が出たあとの2回目に赤玉を引く確率、条件付き確率は(1)より
となる。
これは、次のように考えることもできる。
1回目に赤玉が1個出たので、残り9個の玉の内の2個が赤玉。したがって、1回目に赤玉が出た事象に引き続いて赤玉が出る事象が起きる確率は
また、
だから、
である。
例2 コインを2度投げるとする。
1度目に表の出る事象をA、2度目に表の出る事象をBとすると、2度とも表の出る事象はA∩B。この場合、P(B)=1/2だから、
である。
問題1 ボルト工場において、機械A、Bは全体の60%、40%を作り、その製品のうちそれぞれ2%、5%が不良品であるとする。
製品の中から任意の一本のボルトが選ばれるとする。(1) そのボルトが不良品である確率を求めよ。
(2) その不良品が機械Aで作られた確率を求めよ。【解】
(1) 機械A、Bで製品が作られた事象をA、B、不良品である事象をCとすると、したがって、
(2)
(解答終了)
解いただけです。
問題1の解を読んで何をやっているかわからなくても、悲観しないでください。これはそういう問題ですから。
(2) 事象の独立
2つの事象A、Bがあって、一方の事象が他方の確率に影響を与えないとき、すなわち、が成り立つとき、AとBは独立である、独立事象であるという。
§2 乗法定理
(1) 任意の事象A、Bについて(2) 2つの事象A、Bが独立であるための必要十分な条件は
問 さいころを1回振る。事象Aと事象Bは独立か従属かを答えよ。
(1) A:2の倍数が出る B:3以上の目が出る(2) A:3の倍数が出る B:3以上の目が出る
【解】
(1)よって、独立である。
(2)
よって、独立でなく、従属である。
(解答終了)
§3 独立試行の確率
1回の試行で事象Aの起こる確率がpであるとすると、この試行をn回独立に繰り返した場合、事象Aがr回起こる確率は
である。
例 コインを5回投げるとする。このとき、表の出る確率pはp=1/2。
したがって、表が3回出る確率は
である。
問 1枚の硬貨を何回も投げてゆき、表の出た回数が2になったところでやめにする。ちょうど10回投げたところで止めになる確率を求めよ。
【解】ちょうど10回で止めになるのは、9回までに表が1回出て、ちょうど10回目に2回目の表が出る場合。
表の出る確率は1/2で、表が1回、裏が8回出る確率は10回目に表が出る確率は1/2だから、ちょうど10回目で終わりになる確率は
(解答終了)
確率の初歩4 確率の定義 [ネコ騙し数学]
確率の初歩4 確率の定義
§1 確率の定義と用語の定義
標本空間 ある試行で起こりうる結果の全体集合
Sを標本空間、e₁、e₂、・・・を標本空間の要素とするとと表される。
事象 標本空間Uの部分集合。
A、BをSの部分集合とするとき、A∪Bを和事象、A∩Bを積事象、をAの余事象という。A∩B=∅のとき、AとBは排反である、または、排反事象であるという。
確率の定義
事象Aの要素の個数をn(A)、標本空間Sの要素の個数をNとするとき、事象Aの起こる確率P(A)は例1 さいころを1回振る試行を考える。このとき、標本空間Sは
で、偶数の目、すなわち、2,4,6が出る事象をAとすると、
になる。
偶数の目が出る確率、つまり、事象Aの確率は、
§2 確率の基本的性質
(1) 任意の事象Aについて
(2) 標本空間Sの起こる確率は
(3) 空事象∅の起こる確率は
(4) 事象Aと事象Bが排反、つまり、A∩B=∅であるとき、AとBの和事象A∪Bの起きる確率は
である。
A∩B≠∅のときは
(5) 事象Aの余事象の起きる確率は
例2 さいころを1回振るとする。偶数の目が出る事象をA、奇数の目が出る事象をB、2以下の目が出る事象をCとすると、
AとBの和事象A∪Bは
したがって、
また、A∩B=∅だから
①と②の結果は一致する。
また、AとCの和集合A∪Cは
したがって、
また、
だから、
となり、③と④は一致する。
A∩B=∅だから
つまり、さいころの目が偶数かつ奇数である事象の起きる確率は0ということになる。
さらに、
だから、BはAの余事象である。
よって、と計算することもできる。
問1 1組52枚のトランプから4枚抜くとき、次の確率を求めよ。
(1) 2枚はクラブ、2枚はハートが出る確率(2) 4枚とも同種類のカードが出る確率
(3) 4枚とも異なる種類のカードが出る確率【解】
(1)
(2)
(3)
(解答終了)
問2 1から50までの番号をつけた50枚の札から1枚取り出したとき、その番号が2または3の倍数である確率を求めよ。
【解】50以下の生成数の、2の倍数の集合をA、3の倍数の集合をBとすると、n(A)=25、n(B)=16。
また、「2の倍数」かつ「3の倍数」の集合は、6の倍数の集合なので、n(A∩B)=8。よって、
(解答終了)
確率の初歩3 組み合わせ [ネコ騙し数学]
確率の初歩3 組み合わせ
組み合わせに入る前に、同種のものを含む順列。
§1 同種のものを含む順列
n個のうち、p個は同じもの、q個は同じもの、r個は同じもの、・・・・・・であるときの順列の数は
例 赤い玉が5個、青い玉が3個、黄色の玉が2個で計10個の玉の順列の数は
問 8枚のカード、A、A、B、B、C、D、E、Fのすべてを1列に並べる。
(2) 同じカードが隣り合わない並べ方は何通りか。
【解】(1) 8枚のカードのうち、Aと同種のカードが2枚、Bと同種のカードが2枚あるので
(2) AA、BBと並ぶ並べ方は、AA、BBをそれぞれ1枚と考えると、6!通り。
AA、BBの一方だけが隣り合う並び方は
とおり。
したがって、
(解答終了)
(註)
AAとAが連続してならんでいる並べ方は、AAを1枚のカードと考えて、カードを7枚並べる順列の数と等しい。つまり、7!通り。
この7!通りの中にはBBと、Bが2枚連続してならんでいる並び方が6!通りあるので、AAとAだけが2万連続でならんでいる並び方は7!−6!通り。BBとBが2枚連続して並ぶ場合も同様で、AA、BBの一方だけの順列の数は
並べ方全体
から、AA、BBと両方ならんでいる並び方、AA、BBの片方だけがならんでいる並び方の数を引けば、同じカードが隣り合わない並べ方の数が求まる。
§2 組み合わせ
異なるn個からr個(r≦n)とった組み合わせの数は
特に、
である。
問1 男子10人、女子5人のうちから、5人の候補を選ぶとき
(1) 全部で何通りの方法があるか。(2) 男子の委員を3人、女子の委員を2人とすれば何通りになるか。
(3) 特定の2人、甲、乙が必ず選ばれる方法は何通りか。【解】
(1) 男女15人から5人選ぶのだから
(2) 男子10人から3人選ぶ組み合わせは通り、女子5人から2人選ぶ組み合わせは通り。
よって
(3) 甲乙の2人は必ず選ばれるので、残りの13人から3人を選ぶことになる。
よって(解答終了)
問2 6人がある旅館に泊まるのに、2ずつ3室に分かれることになった。
(1) 6人を2人ずつ、A、B、Cの3室に入れる方法は何通りあるか。(2) 6人を2人ずつ、単に3室に分ける方法は何通りか。
【解】(1) A室には6人のうち2人を、B室には4人のうちの2人、C室には残りの2人を入れる。
したがって、
(2) この場合、A、B、C室という部屋の区別がないので(1)で求めた90通りを3!=6で割らないといけない。
よって、(解答終了)
問2の(1)、(2)の違いがわかりますか?
そして、次の問題で混乱の極みに突き落とす(^^ゞ
問3 男子10人、女子6人の庭球選手の中から混合ダブルスのチームを作るとすると、作り方は何通りあるか。
【解】(解答終了)
この3!は何処から出てきたのだろうか(^^)
は、妖怪10人から{アリス、正邪、ぬえ}を選び、人間6人の中から{霊夢、魔理沙、咲夜}の3人、合せて6人を選ぶ場合の数。
この中から妖怪と人間の混合ペアを作る場合の数が3!だから、この3!をかけないといけないというわけ。確率の初歩2 順列 [ネコ騙し数学]
確率の初歩2 順列
順列 異なるn個の中からr個(r≦n)とった順列は
特に
である。
ここで、
であり、
と定義する。
例 5人を一列に並べる並べ方(順列)は
5人から3人をとった順列は
問1 次の等式を証明せよ。
【解】
(解答終了)
問2 男子10人、女子5人の生徒の中から会長、副会長、書記を選ぶとする。次の問いに答えよ。
(1) 全部で何通りの選び方があるか。(2) その中に少なくとも1人の男子を選びたい。このような選び方は何通りあるか。
【解】(1) 男子10人、女子5人、あわせて15人の中から会長、副会長、書記の3人を選ぶのだから
よって、2730通り。
(2) 男子が1人も含まれない、つまり、すべて女子の場合の数は、女子5人から3人を選ぶので
すべての場合の数から、男子が1人も選ばれない場合の数を引いたものと等しいので、
よって、2660通り。
(解答終了)
問3 0,1,2,3,4,5の6つの数字からなる異なる4つの数字を選び出し、4桁の数字を作るとき、次のものは何通りあるか。
(1) 全部(2) 偶数
【解】(1) 4桁の数字をabcdとすると、aに選べる数字は1〜5の5通り。
bcdに関しては、aに選んだ残りの5つの数字から3つ選べばよい。よって、
したがって、300通り
(2) abcdが偶数になるのは、dが0,2,4のとき。
d=0のとき、残りの5つから3つ選んで並べれば良いのでd=2のとき、aになれるのは1,3,4,5の4つの数字。
したがって、
d=4のときの場合の数は、d=2のときと同じなので、48。
したがって、60+48+48=156の156通り。
(解答終了)問4 男子4人、女子3人を並べるとする。
(1) 全部で何通りの並べ方があるか。(2) 女子3人は必ず隣り合うものとすると、全部で何通りの並べ方があるか。
(3) 女子はどの2人とも隣り合うように並べると何通りの並べ方があるか。【解】
(1) 7!=7×6×5×4×3×2×1=5040通り(2) 隣り合う3人の女子を1人と考え、5人を並べる並べ方は
1人と考えた女子3人の並び方は
よって、
したがって、720通り
(3) これは次のように考えるといいにゃ。
女子は△の5つのところに3人並べればよいので、その並べ方は
男4人の並べ方は
したがって、
よって、144通り。
(解答終了)
問5 異なる3個の箱を異なる4個の箱に分配するとき、
(2) どの箱にも2個以上のボールを入れない場合、全部で何通りの分配する方法があるか。
【解】(1) 4³=64通り
(2) 通り
(解答終了)(1)については、3個のボールをA,B,Cとすると、ボールA,B,Cともにそれぞれ4通りの分配の仕方があるので、
通りになる。
これを箱から考えると、
または、
といった計算になる。
左辺第1項は1個ずつ分配する仕方、第2項は2個と1個、第3項はボール3個を分配する仕方である。
だから、をとしてもよい。
ボール2個を先に箱に入れて、残った3個の箱に2個の玉を一緒に入れるか、2個の玉を先に入れて、残った3個の箱に1個入れるかという考え方の違いに過ぎないので、式の形にこだわる必要はない。
(1)のように重複を許す順列を重複順列という。
この他に、n個の異なる珠を数珠つなぎにn個並べる円順列などがありますが、円順列の場合の数は通りです。
確率の初歩1 場合の数 [ネコ騙し数学]
確率の初歩1 場合の数
高校程度の統計をやる前に、これから数回にわたって、その前提知識として必要になる、場合の数と確率について少しだけ述べることにする。
和の法則
2つの事柄A、Bがあって、同時に起こらないとする。Aの起こり方がm通り、Bの起こり方がn通りであるとすれば、AまたはBの起こる場合の数、m+n通りである。
同時に起こらないということは、右図(ベン図)で示される集合Aと集合Bが交わりA∩Bをもたない、つまり、A∩Bが空集合∅、つまり、
であるということ。
右図に示されるように、AとBの交わりが空集合でないとき、集合A、Bの集合の元(要素)の個数をn(A)、n(B)などとあらわすことにすると、集合Aと集合Bの和集合A∪Bの元の個数n(A∪B)は
になる。
例 とすると、
n(A)+n(B)だと、A∩B={6}の6を1個ダブルカウントすることになるから、ダブルカウントしている個数を引く!!
(1)式は、A、Bが無限集合の場合、必ずしも成り立たないので注意が必要。
問1 1から1000までの正の整数のうち、5または7の倍数の個数はいくつあるか。
【解】1から1000までの正の数のうち、5の倍数である集合をA、7の倍数である集合をBとする。
そうすると、A∩Bは、1から1000までの整数のうち、「5の倍数であり、かつ、7の倍数」、つまり、「35の倍数」の集合。n(A)=200、n(B)=142、n(A∩B)=28だから、
よって、314個
(解答終了)
問2 100人の生徒の中で、音楽の愛好者は53人、スポーツの愛好者が72人いる。音楽とスポーツの両方を愛好する生徒数をn人とすると、nの取りうる最小値と最大値を求めよ。
【解】音楽の愛好者の集合をA、スポーツの愛好者の集合をBとすると、n(A)=53、n(B)=72、n(A∩B)=n。
で、A∩B⊆Aだから、また、条件から
①と②より、
したがって、nの最小値は25、最大値は53。
(解答終了)
問3 2桁の正の整数のうち、一位の数字が十位の数字よりも小さいものはいくつかるか。
【解】十位の数字が1のとき、一位の数字は0で1個。
十位の数字が2のときは、一位の数字は0と1の2個。十位の数字がn(=1〜9)のとき、1位の数字は0,1,・・・,n−1のn個。
したがって、45個である。
(解答終了)
§2 積の法則
積の法則
2つのことがらA、Bがあって、Aの起こり方がm通り、Aのおのおのの起こり方に対して、Bの起こり方がnとおりであれば、Aに引き続いてBの起こる場合の数はm・n通りである。問1 N=9800の正の約数は、1とNを含めていくつあるか。
【解】N=9800を素因数分解すると、
2³・5²・7²の正の約数は
とかけるので、正の約数の個数は
よって、36個
(解答終了)
問2 0,1,2,3,4,5の6個の数字がある。個の中から3個の活字を並べてできる3桁の整数のうち432以下の整数はいくつできるか。
【解】百位が4のとき、十位が3ならば、一位は0,1,2の3通り。
百位が4のとき、十位が0,1,2ならば、一位はそれぞれにつき4通りあるので、3×4=12通り。百位が1〜3のとき、十位は5通り、一位は4通り。したがって、3×5×4=60通り。
よって、3+12+60=75通り。(解答終了)
第14回 漸化式で表された数列の極限 連立漸化式 [ネコ騙し数学]
第14回 漸化式で表された数列の極限 連立漸化式
問題1 数列はx₁=1、y₁=5をもとにして
にしたがって作られている。このとき、およびを求めよ。
【解】①から
よって、
③、④を②に代入すると、
ここで,t²−4t+3=0として、この2次方程式を解くと、
したがって、⑤は次のように変形できる。
⑥よりは初項x₂−x₁、公比3の等比数列。
したがって、
⑦より、数列は一定だから――初項x₂−3x₁、公比1の数列と考えてもよい――
x₁=1、y₁=5だから、①より
よって、⑧、⑨から
⑩−⑪
③より
【解答終了】
上のように隣接3項の漸化式に変形して解くことができるけれど、実はうまい方法がある。
【別解】
①+②
①−②
③より、数列は、初項x₁+y₁、公比3の等比数列だから
④より
⑤+⑥
⑤−⑥
【別解終了】
どちらが楽かは言うまでもないだろう。
この他に、
として行列を利用して解く方法もありますが・・・。
問題2
に対して次の問いに答えよ。
(1) をnの式であらわせ。
(2) を求めよ。
【解】(1)
①+②
①−②
③より
④より数列は初項x₁−y₁=1、公比1/3の等比数列。
⑤+⑥
⑤−⑥
(2)
(解答終了)
問題3 が次の条件を満たすとき、を求めよ。
【解】
より、
よって、
①より、
②より
④−③
で、
よって、
(解答終了)
【別解】
①−②
①−2×②
③、④より
よって、
(解答終了)
第13回 漸化式で表された数列の極限4 隣接する3項の場合 [ネコ騙し数学]
第13回 漸化式で表された数列の極限4 隣接する3項の場合
隣接する3項の漸化式の一般形は
2次方程式t²+pt+q=0の実数解をα、βとすると、2次方程式の解と係数の関係から
となるので、(1)は
と変形できる。
(2)は数列が初項a₂−βa₁、公比αの等比数列であることを表すので、
(3)は数列が初項a₂−αa₁、公比βの等比数列であることを表すので、
(4)−(5)は
α≠βならば、(6)をα−βで割ることによって、一般項を得ることができる。
α=βのとき、
両辺をで割ると
よって、
では、問題を。
問題1 次のように定められた数列についてを求めよ。
【解】
(1)よって、
また
②−①は
(2)
の両辺の対数をとると、
とおくと、①は
よって、
また、
③−②
(解答終了)
問題2
で定義される数列について次の問いに答えよ。
(1) はどんな数列か。
(2) n項までの和を求め、を求めよ。
【解】
(1)の両辺の対数をとると、
とおくと
よって、は初項b₁=log2、公差−log2とする等差数列。
したがって、(解答終了)
問題3
(1) 数列、1,2,3,5,8,13,21,34,・・・はどんな規則でできているか。その規則を式であらわせ。
(2) 上の数列の第n項を第n+1項で割ったものをとおくとき、を求めよ。【解】
(1)
(2)
両辺をで割ると、
よって、
で、
とおき、これを解くと
となるので、あらためて
とおいて、①の両辺をαで引くと
だから
で、
よって、
したがって、
よって、
(解答終了)
ちなみに、問題3に出てくる数列をフィボナッチ数列という。
第12回 漸化式で表された数列の極限3 隣接する2項の場合2 [ネコ騙し数学]
第12回 漸化式で表された数列の極限3 隣接する2項の場合2
問題1 を満たす数列がある。
(1) とおくとき、ととの関係式を求めよ。
(2) 0<x₁<1のとき、を求めよ。
【解】
(1)
だから、
これを①に代入すると、
(2) 0<x₁<1より、0<y₁<1、また。
②の両辺の対数をとると、
したがって、数列は初項logy₁、公比2の等比数列。
よって、(解答終了)
(※) とおくと、
で、0<y₁<1だから
問題2 aは1<a<2を満たす定数とする。
によって定められた数列について、次の問いに答えよ。
(1) を証明せよ。
(2) を証明せよ。
(3) を求めよ。
【解】(1) n=1のとき
1<a<2だから、
また、
よって、
n=kのとき
と仮定する。
n=k+1のとき
だから、
また、
よって、数学的帰納法により、
である。
(2)
よって、
(3)
ここで、
よって、
したがって、
(解答終了)
問題3 次の数列について、下の問(1),(2)に答えよ。
(1) この数列の項はすべて正で、単調に減少する。これを数学的帰納法をもちいて証明せよ。
(2) この数列が収束することはわかっていて、その極限値を求めよ。
【解】(1) n=1のとき
n=kのとき、
n=k+1のときまた、
(2)
また、
よって、極限値α=1
(解答終了)
第11回 漸化式で与えられた数列の極限2 隣接する2項の場合 [ネコ騙し数学]
第11回 漸化式で与えられた数列の極限2 隣接する2項の場合
前回にひき続いて、今回も漸化式で表された数列の極限の問題を解くことによって、その解法を紹介することにする。
今回は、漸化式の最も基本的な隣接する2項の場合。問題1 次のように定められた数列の極限値を求めよ。
【解】
(1)とおいて、これを解くとt=4。
の両辺を4で引くと
したがって、数列は初項、公比1/2とする等比数列。
(2)
とおいて、tについて解く。
で、
の両辺を5で引き、さらに(分子の)有理化をはかると、
ここで、両辺の絶対値をとる。
だから
したがって、①より
だから、
で、
よって、
(3)
よって、
と解くことができるが、こういう解き方は往々にして死を招きやすいのでやめたほうがよい。
の両辺の対数をとると、
そこで、
とおくと、
そこで、(1)と同様に
として、これを解くと
①の両辺から、2log2=log4を引くと
(解答終了)
(2)、(3)から分かるように、漸化式で与えられた数列の極限を求める場合、必ずしも一般項を求める必要はない。
問題2 一般項が次のように与えられる数列の一般項を求め、と求めよ。
【解】
とおき、これを解く。
で、
とおくと、
両辺の逆数をとると、
したがって、数列は初項−1、公差−1の等差数列。
(解答終了)
なのですが、
と順次計算し、これから
を推測する。
――分子は2ずつ増え、分母は1ずつ増えているのだから、上のように推測できる――
それから、
数学的帰納法を使って
と仮定し、
k=nのとき
k=n+1のとき
として解くんだろうな、きっと。
第10回 漸化式で表された数列の極限1 [ネコ騙し数学]
第10回 漸化式で表された数列の極限1
具体的に問題を解くことによって、漸化式で表された数列の極限を求める基本的な解法を学ぶことにする。
その前に、総和記号Σの定義
公比r、初項aとする等比数列の一般項は
であり、第1項から第n項までの和は
である。
また、漸化式で等比数列を表すと
になる。
問題1
によって定義される数列について、次の問いに答えよ。
(1) 階差を調べてを求めよ。
(2) とおいて定められる数列を調べて、を定めよ。
(3) を求めよ。
【解】
(1)②−①
したがって、数列は初項、公比1/2の等比数列。
よって、
(2)
したがって、数列は、初項c₁=a₁−6=−3、公比1/2の等比数列。
したがって、(3)
(解答終了)
(1)では、
のとき
という階差数列の公式を用いてもよい。
問題2 数列がある。
なる関係があるとき、次の問いに答えよ。
(1) とおいて定められる数列を調べてを定めよ。
(2) を求めよ。
【解】(1)
この逆数をとると、
t=1+3tとおき、この方程式を解くと
①の両辺から−1/2を引くと、つまり、1/2を加えると、
したがって、数列は初項、公比3の等比数列。
よって(2)
(解答終了)
問題3 数列の項の間に次の関係がある。
(1) とおいてに関する漸化式を求めよ。
(2) をnの式であらわせ。(3) を求めよ。
【解】(1)
(2) ①より、数列は初項b₁=a₂−a₁=1、公比1/2の等比数列。
よって、
(3)
(解答終了)