高校数学の定積分 [ネコ騙し数学]
高校数学の定積分
高校数学の定積分の定義は、以下のようなものである。
関数f(x)は有界閉区間[a,b]において連続で、[a,b]を
とn等分とし、
とおくと、
例えば、[0,1]で定義されたf(x)=x²の定積分
は、定義(1)にしたがって次のように求めることができる。
(1)を使うと、次のような問題を解くことができる。
問題1 次の極限値を求めよ。
【解】
(1)[0,1]をn等分し、
とし、
とおくと、
(別解)
[1,2]をn等分しとし、
とおけば、
(2)
[1,0]をn等分し
とし、
とおくと、
(別解)
[1,2]をn等分しとし、
とおけば、
(解答終了)
(3)
[0,1]をn等分し、
とし、
とおけば、
ここで、
とおくt、x=0のときt=1、x=1のときt=2、dx=dtだから
(解答終了)
問題2 f(x)=x⁴のとき、次の極限を求めよ。
を真面目に計算しろというのでしょうが、そんな面倒なことはやってられないケロ(^^ゞ
【解】
[0,1]をn等分しとし、
という区間を考えると、を
となるので、は点を1:2に内分する点で、また、f(x)=x⁴は[0,1]で単調増加。
したがって、また、
さらに、
となるから、はを2:1に内分する点。したがって、
となり、同様に
よって、
(解答終了)
(1)は、
のやとしたものだが、問題2はのとり方によらず積分の値は一定で
になるということを主張しているのであった。
関数の振幅 [ネコ騙し数学]
関数の振幅
定義
有界閉区間I=[a,b]上の有界な関数f(x)に対して
区間I上の関数f(x)がある実数Mがあり、すべてのx∈Iに対して
であるとき、関数f(x)は有界であるという。
論理記号で書くと、
ちなみに、有界でない関数は、(2)の否定をとると、
となるので、任意の実数Mに対して、
となるx∈Iが存在する関数のことである。
有界な関数の例としては、たとえば、I=[0、1]で定義されたf(x)=x²。このとき、0≦f(x)≦1だから有界である。
一方、有界でない関数の例としては、たとえば、I=(0,1]で定義されたf(x)=1/x。この関数の値域は1≦f(x)<∞だから、有界ではない。現に、どのような実数M≧1を与えても
となるので、この有界でないことを定義にそって証明することができる。
例1 I=[0,1]、f(x)=x²とすると、
だから、f(x)のI上の振幅ω(f,I)は
例2 I=[−π,π]、f(x)=sin とすると。
例3 I=[−1,1]、
とすると、
−1≦x<0のとき
x=0のときf(x)=0
0≦x≦1のとき
上限と下限の問題 Part2 [ネコ騙し数学]
上限と下限の問題 Part2
問題1
とするとき、sup A、inf A、max A、min Aを求めよ。
【解】
nのときの集合Aの要素をとおく。
nが偶数、n=2k(k=1,2,…)のとき
は単調増加列で
nが奇数、n=2k−1(k=1,2,…)のとき
は単調減少列で
したがって、sup A = 1/2、inf A = −1/2、max AとminAは存在しない。
(解答終了)
問題2 数列に関して次のことを証明せよ。
【解】
(1) すべてのn∈Nに対して
したがって、は数列の上界。
よって、
(2) すべてのn∈Nに対して
よって、は数列の下界。
したがって、(解答終)
等号が成立しない例として、一般項が
である数列があげられる。
このとき、だから、
一方、
この場合、
である。
(解答終)
問題3
A、Bを実数Rの空でなく有界な部分集合としてとおく。次を証明せよ。
sup C = sup A + sup B
【解】sup A=α、sup =βとおく。
任意のx∈Aに対してx≦α、任意のy∈Bに対してy≦β。したがって、任意のx+y∈Cに対して、
よって、α+βは集合Cの上界
また、αはAの上限だから任意の正数ε>0に対して
となるx∈Aが存在する。
βはBの上限だから任意の正数ε>0に対して
となるy∈Bが存在する。
よって、任意の正数ε>0に対して
となるx+y∈Cが存在し、α+βはCの最小の上界。
よって、
sup C = sup A + sup Bである。
(解答終)上限・下限の問題 [ネコ騙し数学]
上限・下限の問題
問題を解く前に、最大数、最小数の定義を与える。
最大数・最小数の定義
Aを空でない実数Rの集合とする。α∈Rが、α∈AかつAの上界であるとき、αをAの最大数といい、max Aであらわす。
β∈Rが、β∈AかつAの下界であるとき、βをAの最小数といい、min Aであらわす。問題1
とする。sup A、inf A、min A、max Aを求めよ。
【解】
sup A = 1、inf A=−1、max A = 1。min Aは存在しない。
(解答終了)
問題2
Aを空でない実数Rの集合とする。max A(min A)が存在するための必要十分条件は、Aが上に有界(下に有界)であって、かつsup A∈A(inf A∈A)であることをを示せ。
【解】max A=αとする。αはAの上界だから任意のx∈Aに対してx≦αで、任意の正数ε>0に対してα−ε<α∈A。したがって、α=sup Aで、sup A∈Aである。
β=sup Aとすると、任意のx∈Aに対してx≦βでβ∈Aだから、β=max Aである。
min A=αとする。αはAの下界だから任意のx∈Aに対してx≦αで、任意の正数ε>0に対してα+ε>α∈A。したがって、α=inf Aで、inf A∈Aである。
(解答終了)
問題3 次の集合の上限と下限を求めよ。
【解】
だから、t=π/nとおくと
n=1のときt=π、n→∞のときt→0。
t∈(0,π]として、
とおくと、f(t)のグラフは右図になり、単調減少となる。
したがって、f(t)の上限は
下限(最小数)は
以上のことより、sup A =π、inf A = 0である。
(解答終了)
問題4 空でない実数Rの部分集合Aに対して
とおく。
このとき、
を証明せよ。
ただし、−(−∞)=∞、−(∞)=−∞とする。
【証明】−Aが上に有界であるとする。
α=sup (−A)とおくと、すべての−x∈−Aに対してα≧−x。したがって、すべてのx∈Aに対してx≧−αとなり、−sup(−A)=−αはAの下界になる。inf AはAの下界の最大数だから、inf A=βとすると、すべてのx∈Aに対してx≧β。したがって、すべての−x∈−Aに対して−x≦−βとなり、−inf A=−βは−Aの上界である。sup (−A)は−Aの上界の最小数だから、
(1)と(2)から、
−Aが上に有界でないとすると、Aは下に有界でない。
すなわち、sup (-A)=∞、inf A=−∞。よって、
である、
−(−A)=Aだから、(3)より
(解答終了)
ちょっと解いてみた [ネコ騙し数学]
上限と下限 [ネコ騙し数学]
上限と下限
§1 上界と下界
Aを実数Rの空でない部分集合とする。α∈Rが、任意のx∈Aに対し、α≧xであるとき、αをAの上界という。
β∈Rが、任意のx∈Aに対し、β≦xであるとき、βをAの下界という。Aの上界(下界)が存在するとき、Aは上に有界(下に有界)であるという。Aが上に有界かつ下に下界であるとき、Aは有界であるという。
例1 空でない実数Rの部分集合
があるとする。
α≧1の実数αに対して、任意のx∈Aはα≧xだから、αはAの上界で、1はAの最小の上界である。
β≦0の実数βに対して、任意のx∈Aはβ≦xだから、βはAの下界で、0はAの最大の下界である。また、Aは上に有界でかつ下に有界だから、Aは有界である。
§2 上限と下限
空でない実数Rの部分集合Aが上に有界(下に有界)ならば、Aの上界(下界)の全体集合Bには最小数(最大数)が存在する。Aの上界の最小数をAの上限といい、sup Aあるいはであらわす。
Aの下界の最大数をAの下界といい、inf Aあるいはであらわす。
Aが上に有界(下に有界)でないとき、sup A=+∞、inf A=−∞とあらわす。
定理1
sup A=αである必要十分な条件は、任意のx∈Aに対してx≦α、かつ、任意の正数ε>0に対してα−ε<xを満たすx∈Aが存在することである。すなわち、
inf A=βである必要十分な条件は、任意のx∈Aに対してβ≦x、かつ、任意の正数ε>0に対してx<β+εを満たすx∈Aが存在することである。
すなわち、
定理2
A⊂Bならば、inf B ≦ inf A ≦ sup A ≦ sup B【証明】
inf A ≦ sup Aは、上限・下限の定義よりあきらか。
とおくと、αはAの上限だから
となるx∈Aが存在する。
x∈Aならばx∈Bだからx≦βとなり、矛盾する。
よって、α≦βで、sup A ≦ sup Bである。inf A=α、inf B=β、β>αとする。
とおくと、αはAの下限だから
となるx∈Aに存在する。
x∈Aならばx∈Bだからx≧βとなり、矛盾する。
よって、β≦αで、inf B ≦ inf Aである。(証明終了)
例2
とすると、A⊂B。
このとき、inf A = 0、sup A = 1、inf B = −1、supB = 2だから、inf B < inf A < sup A < sup Bとなり、inf B ≦ inf A ≦ sup A ≦ sup Bが成立している。
A⊂Cで、inf C=0、sup C=1だから、inf C = inf A < sup A = sup Cとなり、inf C ≦ inf A ≦ sup A ≦ sup Bが成立している。
問 開区間I=(a,b)とするとき、inf I = a、sup I=bであることを示せ。
開区間I=(a,b)は
だから、任意のx∈Iならば、a<xかつx<b。
したがって、aは集合Iの下界、bは集合Iの上界である。
inf I=α<aとする。とすると、定理1より
となり、αがIの下限であることに反する。
したがって、inf I=aである。
sup I= β>bとする。とすると、
となり、βがIの上限であることに反する。
したがって、sup I=bである。
(解答終了)ニュートン法 [ネコ騙し数学]
方程式
の解をx=αとする。
右の図のように適当な点x₁を選び、y=f(x)の点(x₁,y₁)における接線の方程式は
で、この接線とx軸との交点のx座標x₂は、上の式にy=0を代入することによって、
となる。
そして、同様ににおける接線の接線を引き、この接線とx軸との交点のx座標x₃を求めると、
となり、この操作を繰り返せば繰り返すほど、こうして求められたf(x)=0の近似値であるは
f(x)=0の解、x=αに近づいてゆくことが予想される。
これがニュートン法である。
漸化式の形で書けば、ニュートン法は次のようになる。
x=√3の両辺を2乗すると
これを
とおき、f(x)=x²−3=0(x>0)とすれば、これはx=√3と同値。
f'(x)=2xだから、
計算開始のx₀=1として、表計算ソフトを使って計算したものは次の通り。
4、5回計算するだけで、x=√3≒1.732050808という近似値に到達している。
ニュートン法は前回の2分法よりも速く、しかも急速に収束することがわかると思う。
ただし、ニュートン法は、次の例のように、収束しないことがある。
計算の初期値としてx₀=1、または、x₀=2を取ると、
接線の方程式が、それぞれ、
となり、x=1とx=2を交互に永遠に行き来する。
この他にも、f'(x)=0になる点に差し掛かったとき、ゼロ割が発生するなど、危険な一面も有している。
こういうことは極まれにしか起きないけれど、運悪くこのような事態に遭遇することがある。2分法と比較すると、ニュートン法は収束の速度は速いけれど、安定性に欠ける。
微分と差分 [ネコ騙し数学]
微分と差分
f(x)を何度でも微分可能な関数とする。
このとき、f(a+h)は、以下のようにテーラー展開が可能である。同様に
(1)式から
hの1次以上の項を無視すると、x=aにおける微分係数f'(a)は次のように近似可能である。
同様に、(2)式から
が得られる。
(3)、(4)式とも1次以降の項を落としているので、誤差は1次オーダ、すなわち、O(h)である。
また、(1)から(2)を引くとh²以上の項を落とすと、
という近似式が得られる。
(5)式は、h²以降の項を落としているので、誤差はhの2次オーダ、O(h²)。
x軸上に等間隔hでならぶの点の集まりに正の方向に向かって整数の番号をつけると、という点の列、点の列が得られる。とすると、(3)、(4)、(5)式は次のように書き換えることができる。
このように書くのは面倒なので、と略記することにすると、(3)、(4)、(5)の近似式は
となる。
このように、無限小の微分を有限な差の形で近似する方法を差分法という。
(6)を前進差分、(7)を後退差分、(8)を中心差分という。2次導関数f''(x)の近似式は、次のように求めることができる。
(1)と(2)を足すと、h²以上の項を落とすと、
つまり、
となる。
なお、(6)、(7)式は不等間隔で点がならんでいる場合でも、(6)式では、(7)式はとおくことによって成り立つが、(8)、(9)は不等間隔の場合、成り立たないので注意が必要。
不等間隔の場合、テーラー展開にさかのぼって、差分による微分の近似式を求めないといけない。のx=0における微分係数を(6)、(7)、(8)を使って求めてみる。
h=0.1である。前進差分、後退差分の誤差は約0.05、中心差分は約0.0017だから、この場合、中心差分が最も精度よく計算できていることがわかるだろう。
x=2のときの微分係数の誤差とxの増分hとの関係を右図に示す。
前進、後退差分の勾配が1、中心差分の勾配が2であることがこの図から分かると思う。このことは、前進・後退差分の誤差のオーダーが1次であり、中心差分の誤差のオーダーが2次であることを指し示しており、理論通りというわけ。
つまり、hが1/10になったとき、前進、後退差分の精度が10倍良くなるのになるのに対して、中心差分は精度は100倍向上する。
数値積分 台形公式、中点公式とシンプソンの公式の導出と誤差 [ネコ騙し数学]
数値積分 台形公式、中点公式とシンプソンの公式の導出と誤差
次の定積分を考える。
これは、x=t+aと変数の変換を行えば、dx=dtでかつ、x=aにはt=0、x=a+hにはt=hが対応するので、
になる。
関数f(x)が何度でも微分可能、つまり、級であるとき、f(a+t)は次のようにテーラー展開することが可能。
あるいは、
(2)を(1)に代入すると
総和記号Σの中は
したがって、
ここで、
と前進差分を使うと、
a+h=bと置けば
したがって、
と、それを台形で近似した
との誤差は程度ということになる。
そして、この結果を用いて、
という台形公式の誤差の限界公式を導くことができる。
より厳密な議論は、たとえば、ねこ騙し数学の次などを見て欲しい。
台形公式の精度を求める問題
積分区間[a,a+h]の中点をcとし、x=t+cという変換をすると、dx=dtで、x=aにはt=−h/2、x=a+hにはt=h/2が対応するので、
f(c+t)をテーラー展開すると
(4)に(5)を代入すると、nが奇数のとき
nが偶数のとき
になるので、
になる。
a+h=bとおくと、だから、
そして、
と近似する方法を中点公式と呼ばれる。
上の議論から、中点公式の誤差は
程度で、誤差のオーダーはh³である。
[a,b]でf(x)>0のとき,
は長方形DEFGの面積。
また、
として、(6)式に代入すると、
これから、シンプソンの公式の誤差が
程度で、シンプソンの公式の誤差がh⁵のオーダーであることが分かる。
シンプソンの公式は
で、(8)式と
とでは、右辺の分母が3と6と異なっているが、これは(8)式ではb−a=2hとしているのに対して、(9)式ではb−a=hとしていることに由来する。
(9)式の形で(8)式を書きなおすとき、hを2hに変えれば良いので、次のようになる。
2次精度のルンゲ=クッタ法 [ネコ騙し数学]
2次精度のルンゲ=クッタ法
α、βを適当に選ぶと、所定の誤差の範囲で、における定積分を
と近似できるものとする。
微分方程式は
よって、
ところで、を点でテーラー展開し、h²で打ち切ると
また、
だから
よって、
一方、同じくテーラー展開し、1次で打ち切ると
(2)と(3)を(1)に代入すると、
だから、
以上のことまとめると、
これが2次精度のルンゲ=クッタ法と呼ばれるものであり、その導出の流れるになる。
これをコンピュータや手計算で近似計算する場合、次のようにすればよい。
2次精度のルンゲ=クッタ法
修正オイラー法は
2次精度のルンゲ=クッタ法と修正オイラー法を用いて次の微分方程式を数値的に解いた結果は次の通り
この結果から、2次精度のルンゲ=クッタ法と修正オイラー法の精度が同程度であることが理解できると思う。