高次導関数 [ネコ騙し数学]
第9回 高次導関数
区間Iで定義された関数f(x)がIで微分可能、導関数f'(x)もIで微分可能なとき、fは2回微分可能であるという。このときf'(x)の導関数をfの第2次導関数といい、y=f(x)の第2次導関数を
などであらわす。
同様にf(x)の第n–1次導関数Iで微分可能であるとき、fはn回微分可能であるという。このとき、の導関数を第n次導関数といい、
などであらわす。
また、
と定義する。
区間Iで定義された関数f(x)がIでn回微分可能で、さらにがIで連続であるとき、fはIで級であるといい、f(x)がIで何回でも微分可能なときfはIで級という。
例1
f(x)=x³(x∈R)とすると、
だから、f(x)はR上で級である。
例2
とすると、
よって、f(x)は1回微分可能だがf'(x)はx=0で不連続だからC¹級ではない。
問1 次のことを示せ。
(1) x=x(t)、y=y(t)ならば
(2) x=f⁻¹(y)ならば
[略解]
(略解終)
問2 次の第n次導関数を求めよ。
[略解]
(略解終)
問2の(1)の結果を用いると、
だから、
である。
定理
関数f(x)、g(x)がn回微分可能ならば、αf(x)+βg(x)(α、βは実数の定数)、f(x)g(x)もn回微分であって、
[証明]
(1) 略
(2) n=1のとき
だから成立。
n=lのとき成立すると仮定する。
すなわち、
n=l+1のとき
(証明終)
ロピタルの定理の怪2 [ネコ騙し数学]
ロピタルの定理の怪2
ロピタルの定理には幾つかのバージョンがある。
ロピタルの定理1
関数f(x)、g(x)は閉区間[a,b]で連続、開区間(a,b)で微分可能とする。f(a)=g(a)=0で、しかもが存在するならば、
である。
[証明]
a<x<bとすると、f(a)=g(a)=0だから、
また、条件より、関数f、gは[a,x]で連続かつ(a,x)で微分可能だから、コーシーの平均値の定理より
となるcが存在する。
したがって、
[証明終]
ちなみに、上の定理の証明でf(b)とg(b)は使っていないので、定理中の条件にある閉区間[a,b]を
としても同じことである。
ロピタルの定理2
関数f(x)、g(x)は点aを除いた点aの近傍――穴あき近傍――で連続かつ微分可能で、とする。このとき、極限が存在するならば、極限も存在して、
である。
ロピタルの定理3
関数f(x)、g(x)は点aの近傍で連続かつ微分可能でf(a)=g(a)=0とする。このとき、極限が存在するならば、極限も存在して、
である。
ロピタルの定理1とロピタルの定理3の違いは右側極限か極限かの違いと考えることができ、この両者は同じものとみなすことができる。
対して、ロピタルの定理2とロピタルの定理3の違いは、点aを除いた点aの穴あき近傍と点aを含む近傍の違いであり、これは、f(a)、g(a)ならびにf'(a)、g'(a)が定義されていないか、されているかの違いと考えることもできる。
ロピタルの定理2では、関数f(x)とg(x)がx=aで定義されていようがいまいが、とにかくでありさえすればいいということ。
また、ロピタルの定理2の方が条件が緩くいので、定理を適用できる範囲が少し広がる。
ロピタルの定理2とロピタルの定理3の条件の違いを理解してもらえたのではなかろうか。
さてさて、昨日、ネットで、とある大学の数学の先生が書いたものの中に次のようなものを見つけた。それをすこし編集して紹介することにする。
問題1 次の極限値を求めよ。
[解答]
これは0/0の不定形の極限だから、ロピタルの定理より
だから、は存在せず、よって、は存在しない。
[解答終]
さてさて、とある大学の先生がお書きになられた問題1の解答は正しいか否か。
ちなみに、問題1の解答には次のような注意がついていた。
[注意]
にロピタルの定理を用い、
よって、としたくなりますが、これは間違い。
x=0のとき、cosx=1≠0、2x=0だから、ロピタルの定理の条件を満たさないのでロピタルの定理は使えないというわけ。
問題2 次の極限を求めよ。
[答]
問題2は∞/∞の不定形の極限。そこで、ロピタルの定理を用いると
となるが、右辺は振動し極限値をもたないので、ロピタルの定理の成立条件を満たしていない。
だから、問題2の極限値を求めるのに、ロピタルの定理は使えない!!
また、問題2は、
が存在しないからも存在しないという主張の反例になっている。
ロピタルの定理(?)の怪 [ネコ騙し数学]
ロピタルの定理(?)の怪
ロピタルの定理は、高校の教科書では紹介されていないようだが、受験参考書や教科書傍用の問題集、受験問題集などに紹介されている有名な定理だ。そして、「ロピタルの定理を用いて次の極限を求めよ」といった問題が掲載されていたりする。
問題1 ロピタルの定理を用いて、次の極限を求めよ。
だから、ロピタルの定理は、理系の大学受験生ならば誰もが知っている有名な定理といっていいだろう。
と同時に、
「関数の極限を求めるのに試験でロピタルの定理を使うと減点される」など、、噂、都市伝説に事欠かないのがロピタルの定理だ。
大学入試の数学の試験で答案が受験者に返されることはないし、これは大学の数学の試験においても同様だろう。
なのに、何故、「関数の極限を求めるのに試験でロピタルの定理を使うと減点される」といった都市伝説が今も昔も受験生の間で囁かれ続けているのだろうか。
答案は返却されないのに、「どうして、ロピタルの定理を使って減点された」と判断できるのだろう。不思議でたまらない。
「模試や高校の定期試験でロピタルの定理を使ったら減点された。だから大学入試の数学の試験でも同様なのだろう」と類推して、このようなことを言っているのであろうか。
いま仮に次のものをロピタルの定理(?)と呼ぶことにしよう。
ロピタルの定理(?)
f(x)、g(x)が微分可能、f(a)=g(a)=0のとき、
である。
このロピタルの定理(?)を使えば、問題1を次のように解くことができるだろう。
[問題1の解答]
f(x)= x–sinx、g(x)=x³とおくと、f(x)、g(x)は微分可能で、f(0)=g(0)=0。
したがって、ロピタルの定理(?)より
さらに、f'(x)=1– cosx、g(x)=3x²は微分可能で、f'(0)=g'(0)=0。
したがって、
[解答終]
最後に使った、有名な三角関数の極限の公式でさえ、ロピタルの定理を使えば
と簡単に証明(?)できる。
つまり、問題1は、ロピタルの定理を最高3回使えば、極限値を求めることができる。
たまに、大学入試で「を証明せよ」という問題が出されて受験生を悩ませるそうだから――この証明は教科書に出ているのだが、受験生は意外に証明できないらしい――、ロピタルの定理は、大学受験生にとって何とも心強い味方である。
本題は、ここから。
私が高校生だった頃、とある問題集の解説記事で次のようなロピタルの定理の証明(?)を見たことがある。その証明の詳細は憶えていないが、証明は次のようなものだったように記憶している。
[ロピタルの定理(?)の証明(?)]
x≠aのとき
だから、
(証明終)
この証明が正しければ、この証明は何とも鮮やかな証明なのだろう。
ロピタルの定理の証明には、次のコーシーの平均値の定理
コーシーの平均値の定理
f(x)、g(x)は閉区間[a,b]で連続、開区間(a,b)で微分可能で、かつ、(a,b)でg'(x)≠0ならば
であるcが少なくとも1つ存在する。
が必要とされるが、上のロピタルの定理(?)の証明(?)ではこの定理をを使っていないのだから。
では、ここで質問!!
上に示すロピタルの定理(?)の証明(?)のどこに問題点があるでしょうか。
答えられますでしょうか?
これを答えられるヒトは意外に少ないのかもしれない(^^ゞ
問題2
とするとき、
が存在すれば、その値を求めよ。
[解答(?)]
g(x)=xとすると、f(x)、g(x)は微分可能でかつf(0)=g(0)=0。
よって、ロピタルの定理(?)より
xとして
をとり、nの値を増やしてxを0に近づけると、は
となり、これはx=0の近くで激しく振動するのでは存在しない。
したがって、は存在しない。
[解答(?)終]
しかし、x≠0のとき
だから、
x→0のとき|x|→0だから、ハサミ打ちの定理より
となり、
である。
これはどうしたことか?
いったい、ロピタルの定理(?)を用いた、上の解答(?)のどこがおかしいのだろう。
この疑問に答えられないヒトは、時に身の破滅をもたらすことがあるかもしれないので、ロピタルの定理を使わないほうがいいのかもしれないですね。
導関数に関する定理 [ネコ騙し数学]
導関数に関する定理
定理
関数f(x)は開区間Iで微分可能とする。点c∈Iにおいて最大値、または、最小値をとるならば、f'(c)=0である。
[証明]
f(x)が点cで最大値をとるものし、区間Iの任意の点をxとする。
f(x)は点cで最大だから、
x<cのとき
x>cのとき
f(x)は点cで微分可能だから
が存在し、でなければならない。
よって、f'(c)=0である。
f(x)が区間内で最小値をとるときも同様に証明できる。
(証明終)
この関数の場合、閉区間[−1,1]の端点x=±1で最大値1をとるがf'(x)=2xだからf'(−1)=−2≠0、f'(1)=2≠0で上の定理は成立しない。
x=0のときf(x)は最小値0をとる。x=0は開区間(−1,1)の点だからf'(0)=0で、上の定理が成り立っている。
また、
は、x=0で最小値0をとるが、f'(0)は存在しない。これは、f(x)が開区間(−1,1)で連続であるが、x=0で微分可能ではなく、したがって、f(x)が(−1,1)で微分可能でないためである。
さらに、
は、(-1,1)で微分可能で、導関数f'(x)=3x²だからf'(0)=0となるが、f(0)はf(x)は最小値でも最大値でもない。だから、「f'(c)=0ならばf(x)はx=cで最大または最小である」は一般に整理しない。
定理 (ロールの定理)
f(x)は[a,b]で連続、開区間(a,b)で微分可能とする。このとき、f(a)=f(b)ならば
となるcが少なくとも1つ存在する。
[証明]
f(x)は閉区間[a,b]で連続だから、連続関数の最大値・最小値の定理より、f(x)は[a,b]で最大値、最小値をとる。
f(x)が定数の場合、常にf'(x)=0だから、定理は成立。
f(x)が定数でない場合、最大値と最小値の一方はf(a)=f(b)と異なる。これをf(c)とすると、c≠a、c≠bだから、a<c<b。
条件よりf(x)は開区間(a,b)で微分可能で、かつ、(a,b)で最大値または最小値を持つので、上の定理より
となるcが少なくとも1つ存在する。
(証明終)
関数f(x)が閉区間[a,b]で連続、開区間(a,b)で微分可能であるならば
となるcが少なくとも1つ存在する。
[証明]
とし、
とする。
g(x)は[a,b]っで連続、(a,b)で微分可能であり、g(a)=g(b)=0である。よって、ロールの定理より
となる点cが存在する。
したがって、
となる点cが存在する。
(証明終)
とおくと、0<θ<1となり、平均値の定理を次のように書き換えることができる。
さらに、h=b−aとおくと
定理
f(x)、g(x)を区間Iで微分可能な関数とする。f'(x)がIでつねに0であるならば、f(x)は定数である。Iでつねにf'(x)=g'(x)ならば、f(x)−g(x)はIで定数である。
【証明】
a∈Iである点aを一つとる。
平均値の定理より、x∈Iの任意の点aに対して、aとxの間に
となる点cが存在する。
c∈Iだから条件よりf'(c)=0で、
よって、f(x)はIで定数である。
h(x)=f(x)−g(x)とおくと、Iでh(x)は微分可能。
Iでつねにf'(x)=g'(x)だから
h'(x)はIでつねに0である。
よって、h(x)=f(x)−g(x)は定数である。
(証明終)
定義
f(x)は区間Iで定義される関数とする。
x₁、x₂をIに属する任意の2数としx₁<x₂とするとき、
f(x₁)<f(x₂)であればf(x)は区間Iにおいて単調増加関数または増加関数といい、
f(x₁)<f(x₂)であればf(x)は区間Iにおいて単調減少関数または減少関数という。
定理 関数f(x)が区間[a,b]で連続、区間(a,b)で微分可能であるとき、区間(a,b)において
(ⅰ) 常にf'(x)>0ならば、f(x)は区間[a,b]で増加関数
(ⅱ) 常にf'(x)<0ならば、f(x)は区間[a,b]で減少関数
である。
[証明]
a≦x₁<x₂≦bとすると、仮定より、f(x)は閉区間[x₁,x₂]で連続、開区間(x₁,x₂)で微分可能である。したがって、平均値の定理より
となるcが少なくともⅰつ存在する。
f'(c)>0のとき、
同様に、f'(c)<0のとき、f(x₂)<f(x₁)。
(証明終)
定理 コーシーの平均値の定理
f(x)、g(x)が閉区間[a,b]で連続、開区間(a,b)で微分可能、さらにg'(x)=0ならば
であるcが存在する。
【証明】
とおき、
とする。
h(x)は、[a,b]で連続、(a,b)で微分可能、かつ、h(a)=h(b)=0。
ロールの定理より
となるcが存在する。
g'(x)はa<x<bでg'(x)≠0だから、g'(c)≠0。
よって、
である。
(証明終わり)
導関数の性質 [ネコ騙し数学]
導関数の性質
導関数の定義
区間Iで定義された関数f(x)がIのすべての点で微分可能であるとき、f(x)はIで微分可能であるといい、
をf(x)の導関数という。
定理 (和・積・商の導関数)
関数f(x)、g(x)を区間Iで微分可能ならば、λf(x)+μg(x)(λ、μは実数)、f(x)g(x)はIで微分可能で
g(x)≠0のとき、f(x)/g(x)はIで微分可能で
[証明]
(1) h≠0のとき
(2) h≠0のとき、仮定よりg(x)はIで微分可能だからIで連続()なので、
(3) h≠0でg(x)≠0のとき、
上の結果と(3)より
(証明終)
定理 (合成関数の微分)
関数y=f(x)は区間Iで微分可能、z=g(y)は区間J(f(I)⊂J)とする。このとき、合成関数はJ上で微分可能であり、
すなわち
[証明]
示すべきことは、F(x)=g(f(x))とおき、すべての点a∈Iで
b=f(a)(a∈I)とおき、y∈J上の関数φ(y)を
と定めると、g(y)はJ上で微分可能だからJ上で連続である。同様にf(x)もI上で連続だから、φ(f(x))もI上で連続で、
である。
φ(y)の定義より、点bの近傍で
だから、y=f(x)とおくと、
よって、
したがって、
(証明終)
x≠aのとき、f(x)=f(a)、つまり、f(x)–f(a)=0になる場合があるので、 一般に
と変形することはできない。
したがって、x≠aのとき
といった証明は許されない。
例えば、
g(y)=y(y∈R)としたとき、点a>0の場合を考えよ。このとき、点aの近傍ではf(x)=f(a)=0である。
点aの近傍でf(x)≠f(a)であるならば、y=f(x)、b=f(a)とおくと、x→aのとき、y→bでg(y)→g(b)となり、
したがって、
といった証明が許される。
定理 (逆関数の導関数)
関数y=f(x)は区間Iで狭義単調であるとする。f(x)がIで微分可能でつねにf'(x)≠0ならばf(I)で微分可能で
つまり、
である。
[証明]
f(x)はI上で狭義単調だから、x≠a(x,a∈I)⇔f(x)≠f(a)(f(x)、f(a)∈f(I))。
y=f(x)、b=f(a)とおくと、x≠a⇔f(x)≠f(b)だから
また、y→bのときx→aだから、
よって、f⁻¹(y)はy=bで微分可能である。
(証明終)
定理 (媒介変数・パラメータで表された関数の導関数)
x=f(t)、y=g(t)は区間Iで微分可能でf'(t)≠0とする。x=f(t)に逆関数が存在すれば、
である。
[証明]
仮定より、x=f(t)には、逆関数t=f⁻¹(x)が存在して微分可能。したがって、となり、
合成関数と逆関数の微分より
(証明終)
分数同士のの掛け算のように
と考えるとわかりやすい。
微分の復習 [ネコ騙し数学]
微分の復習
§1 微分係数
定義
関数f(x)が点aの近傍で定義されていて、極限値
が存在するならば、f(x)は点aで微分可能という。このとき、この極限値
をf(x)の点aにおける微分係数といい、f'(a)であらわす。
a+h=xとおけば、微分定数の定義式(1)は
とあらわすことができる。
f(x)が点aで微分可能である必要十分な条件は、点aの近傍で
と表せる一定の実数Aが存在することである。このとき、A=f'(a)である。
このことは、(3)式の両辺をh≠0で割ると
となることから明らかだろう。
例1 f(x)=x²は点aで微分可能である。
となるから、A=2a、ε(h)=hとおくと、
したがって、f'(a)=2aである。
f(x)=x³の場合、
だから、A=3a³、ε=3ah+h²とおくと
したがって、f'(a)=3aである。
例1のf(x)=x³のε(h)を見るととわかるとおり、一般にε(h)はhのみで定まらないことに注意。
定理(微分可能な関数の連続性)
関数f(x)が点aで微分可能ならば、f(x)は点aで連続である。
[証明]
x≠aのとき
だから、f(x)が点aで微分可能のとき
よって、f(x)が点aで微分可能ならば、f(x)は点aで連続である。
(証明終)
例2 関数f(x)=|x|はx=0で微分可能でない。
何故ならば、
h>0のとき
h<0のとき
となるので、
は存在しないから。
つまり、上の定理の逆は成立しない。
上の定理の対偶をとると、「関数f(x)は点aで連続でないならば、f(x)は点aで微分可能でない」になる。つまり、f(x)は点aで不連続ならば、点aで微分不可能である。
例3
は、x=1で不連続だから、x=1で微分不可能である。
現に、
で、f'(1)は存在しない。
点aで微分可能でなくても、
左側微分係数
右側微分係数
が存在することがある。
したがって、微分可能の定義より、f(x)が点aで右側および左側微分可能であってであるとき、f(x)は点aで微分可能である。
§2 導関数
開区間Iで定義された関数f(x)がIのすべての点で微分可能であるとき、f(x)はIで微分可能であるといい、
をf(x)の導関数という。
関数f(x)が開区間(a,b)上で微分可能でかつ点aで右側微分可能、点bで左側微分可能であるとき、f(x)は閉区間[a,b]で微分可能であるといい、
とする。
曲線y=f(x)の接線ってなんだろう? [ネコ騙し数学]
曲線y=f(x)の接線ってなんだろう?
曲線y=f(x)上の点(a,f(a))における接線について考える。
小さな数h≠0を選び、(a,f(a))と(a+h,f(a+h))の2点を通る直線(割線)を引く。hをさらに小さくして0に限りなく近づけたときに、この直線(割線)が 一定の直線に近づくならば、この一定の直線を曲線y=f(x)の点(a,f(a))における接線という。
割線の傾きは
だから、接線の傾きは
になる。
したがって、(a,f(a))における曲線y=f(x)の接線の傾きがf'(a)だから、接線の方程式は
である。
これが微分(係数)の図形的な意味である。
例1 曲線y=f(x)=|x|のx=0における接線の有無について考えてみる。
h>0のとき
h<0のとき
x=0における曲線f(x)の接線が存在するならば、極限値
が存在しなければならないが、
だから、
は存在しない。
つまり、この曲線のx=0における接線は存在しない!!
この曲線は、例えば、x軸(y=0)と原点で”接している”――接する:曲線が直線と一点だけで出合う――けれど、x軸はこの曲線の原点Oにおける接線ではない。
例2 曲線y=f(x)=x³のx=0における接線
x=0における接線の傾きは
したがって、この接線の方程式はy=0である。
そして、y=x³とy=0は原点で”交わっており”、原点(0,0)はy=x³とy=0の交点(?)である。
例3 曲線y=f(x)=x³のx=1における接線
x=1における接線の傾きは
そして、y=x³のx=1における接線の方程式とy=x³は点(−2,−8)で交わる。
つまり、国語辞典的な「接する」の定義である”数学で、曲線が直線と一点だけで出合うこと”からすると、曲線y=x³のx=1における接線y=3x–2 は曲線y=x³と接していないことになってしまう(^^ゞ
「接点は交点ではない」という人がいるなど、接線の定義――数学の定義と日常的・国語辞典的な定義――の混迷は深いようだ。
連続関数の性質の復習 [ネコ騙し数学]
連続関数の性質の復習
§1 連続関数
定義
関数f(x)を区間Iで定義されている関数とする。f(x)が次の条件
-
が存在すれば、f(x)は点aで右連続
-
が存在すれば、f(x)は点bで左連続
-
f(x)がその他Iの全ての点で連続であるとき
であるとき、f(x)はIで連続である、または、f(x)はI上の連続関数という。
f(x)がIで連続であることの上記の定義は抽象的でわかりづらいと思うので、開区間、閉区間、半区間の場合について述べることにする。
(1) f(x)が開区間で連続
開区間(a,b)の任意の点cでf(x)は連続、すなわち、
(2) f(x)が閉区間で連続
f(x)は開区間(a,b)で連続であり、さらに、
区間の左端aで右連続、すなわち、
区間の右端bで左連続、すなわち、
(3) f(x)が半区間で連続
f(x)は開区間(a,b)で連続であり、かつ、区間の右端bで左連続、すなわち、
(4) f(x)が半区間で連続
f(x)は開区間(a,b)で連続であり、かつ、区間の左端aで右連続、すなわち、
この(1)〜(4)のいずれかの場合、f(x)は区間で連続という。
定理
f(x)、g(x)が区間I上で連続ならば、λf(x)+μg(x)(λ、μは定数)、f(x)g(x)もI上で連続である。また、g(x)≠0(∀x∈I)ならばf(x)/g(x)もI上で連続である。
問 f(x)は区間Iで定義される関数とする。f(x)が区間I上で連続ならば、|f(x)|もI上で連続であることを示せ。
[略証]
f(x)はI上で連続だから、c∈Iについて、任意のε>0に対して、あるδ>0があって
よって、|f(x)|はI上で連続である。
(略証終)
なお、上の略証は、が存在するとき、
を
またが存在するとき、
を
と、端点で読みかえることを前提とした証明なので、この点は注意!!
§2 有界閉区間上の連続関数
定理(中間値の定理)
f(x)が有界閉区間[a,b]で連続であってf(a)≠f(b)ならば、f(a)とf(b)との間のすべての値γに対して
となる点cが存在する。
[証明]
f(a)<f(b)の場合を証明する。
f(a)<γ<f(b)となる任意の実数γをとり、
とおくと、g(x)は[a,b]で連続でg(a)<0、g(b)>0となる。このとき、
をみたすcが存在すれば、f(c)=γとなり求めるものとなる。
そこで、
とし、上限sup A = cとし、g(c)=0と仮定する。
(ⅰ)g(c)>0とする。
sup A =cだから任意のδ>0に対して
であるxが存在し、このときx∈Aだからg(x)<0である。
Aは[a,b]の部分集合で、sup A=cは[a,b]の点だから、f(x)は点cで連続である。したがって、定理より十分小さなδ>0をとればg(x)はf(c)>0と同符号となるが、これはg(x)<0であることに反する。
(ⅱ)g(c)<0とする。
g(b)>0だからc≠b、c<bである。
よって、δ>0を十分小さくとると、
であるxに対してg(x)はg(c)<0と同符号となり、x∈Aとなるが、c<xはsup A=cと矛盾する。
よって、(ⅰ)、(ⅱ)のいずれにしても不合理で、g(c)=0である。
(証明終了)
上の定理から、次の系は明らかだろう。
系 関数f(x)が[a,b]で連続で、f(a)とf(b)とが異符号ならば、
であるcが存在する。
定理(最大値・最小値の定理)
f(x)が有界閉区間I=[a,b]で連続ならば、f(x)はIで最大値、最小値をとる。
最大値・最小値の定理の証明には、ワイエルシュトラスの定理などが必要になるので、ここでは省略する。
関数の連続の復習2 [ネコ騙し数学]
関数の連続の復習2
関数の連続のε-δ論法による定義をあらためて示す。
関数の連続の定義
任意の正数ε>0に対して、あるδ>0があって
であるとき、f(x)は点aで連続であるという。
関数の連続の定義と関数の極限に関する定理(定理1)から次の定理が成り立つことは明らかであろう。
定理4
関数f(x)、g(x)が点aで連続であれば、λ、μを実数とすると、
は点aで連続である。
g(a)≠0ならばは点aで連続である。
定理5
関数f(x)が点aで連続である必要十分条件は、f(x)が点aで右連続かつ左連続であることである。
[証明]
十分性)
f(x)は点aで連続だから、任意の正数ε>0に対して、あるδ>0があって
よって、
であり、f(x)は点aで右連続である。
また、
だから、f(x)は点aで左連続である。
必要性)
εを任意の正数とすると、f(x)は点aで右連続だからあるδ₁>0があって
で、f(x)は点aで左連続だからあるδ₂>0があって
よって、δ
にとれば
である。
(証明終了)
定理6
関数f(x)が点aで連続かつf(a)≠0ならば、点aの十分近くの点xではf(x)はf(a)と同符号である。
[証明]
f(a)>0の場合を証明すれば十分だから、f(a)>0の場合を証明する。
f(x)は点aで連続だから、任意の正数ε>0に対して、あるδ>0があって
である。
εは任意の正数だから
とおくと、これに対応するδ>0をとれば
(証明終了)
問 f(a)<0の場合の定理6の証明し、証明を完成せよ。
ちなみに、f(a)>0の場合の証明を利用するならば、たとえば、次のように証明すればいいだろう。
f(a)<0のとき、g(x)=–f(x) とおけば、f(x)が点aで連速だから定理4からg(x)も点aで連続でかつg(a)>0になる。
よって、上記の定理6の証明より、点aの十分近くの点でg(x)>–f(x) >0となり、f(x)<0でf(a)<0と同符号になる!!
であるが、ε-δ論法に慣れるために、f(a)>0の場合の上の証明を真似して、自力で証明して欲しい。
ヒントは、
の
を使う。
f(a)<0だから、例えば、
とすればよい!!
関数の右側極限、左側極限と関数の連続の復習 [ネコ騙し数学]
関数の右側極限、左側極限と関数の連続の復習
§1 右側極限値と左側極限値
xをaに近づけるとき、aより大きい方(右側)から近づくことをx→a+0、小さい方から近づくことをx→a–0 であらわす。特にa=0のとき、それぞれを、単にx→+0、x→–0 であらわす。
x→a+0のときf(x)が限りなくある定数lに近づくことを
とあらわし、lをaにおける右側極限値という。
同様に、x→a–0のときf(x)が限りなくある定数lに近づくことを
とあらわし、lをaにおける左側極限値という。
定理2
と、は同値である。
x>1のとき
x<1のとき
したがって、
だからは存在しない。
§2 関数の連続
f(x)はaの近傍で定義されている関数とする。
であるとき、f(x)はx=aで連続であるという。
ε-δ論法による定義は、たとえば、次のようになる。。
任意の正数εに対して
となる正数δが存在するとき、f(x)はx=aで連続であるという。
なお、関数の極限の定義は
任意の正数εに対して
となる正数δが存在するとき、lはx→aのときの極限値という。
関数の連続の定義(2)と関数の極限の定義(3)はよく似ており、定義の違いがわかりにくいと思うのだが、この定義の違いは、主に、関数f(x)がx=aで定義されているかどうかによるものである。
つまり、関数の極限の場合、点aは関数f(x)の定義域に含まれていようが含まれていまいが、どちらでも構わない。このことは、(3)の定義を見ると明らかであろう。
何故ならば、
だからx=aは含まれていないからだ。
このことは次の例を見ると、定義の差の理由の理解が容易になるだろう。
例2
のとき、
しかし、x=1で関数f(x)は定義されていないのでf(1)は存在しない。
であるが、
は、f(x)はx=0で定義されていないのでf(0)は存在しない。
ただし、x=0のときf(0)=1と定義し、
とすると、
が成立し、x=0でf(x)は連続である。
この関数f(x)の場合、
となり、だからは存在しない。
したがって、は成立せず、f(x)はx=1で不連続である。
例4のような不連続点を跳躍連続点とよび、を関数f(x)のx=aにおける跳び、跳躍などと呼ぶ。
また、が成立するときf(x)はx=aにおいて右連続、が成立するときf(x)はx=aにおいて左連続という。
例4の場合、f(x)はx=1において左連続である。