原始関数と不定積分の定義についてクレームがついた(^^) [ネコ騙し数学]
定積分の第8回で取り上げた「原始関数」と「不定積分」の定義は必ずしも広く世の中で受け入られているものではないから、第9回でクレームがきました(^^ゞ
第8回 原始関数と不定積分
http://nemuneko-gensokyou.blog.so-net.ne.jp/2017-03-25-10
第9回 微積分の基本定理など
http://nemuneko-gensokyou.blog.so-net.ne.jp/2017-03-26-16
敢えてこの定義を採用したのは、(リーマン)積分可能であるけれど、いわゆる原始関数が存在しないものがある、微積分の基本定理が成り立たないものがあることを示すためのもので、特にそれ以上の考えはなかったんだけれど。
高校の数学のように被積分関数が連続である場合、広く世に受け入れられている原始関数、不定積分の定義を採用しても良かったのだけれど、有界閉区間で関数が不連続である点がある場合の積分の場合、この一般的に広く受け入れられている定義だとちょっと塩梅が悪かったものでね。
ちなみに「原始関数」と「不定積分」の定義の混乱事情は、ネット上の以下の記事などを参考にして欲しいにゃ。
http://izumi-math.jp/M_Harada/sekibun/sekibun.pdf
一般に広く採用されている「原始関数」と「不定積分」の定義はコチラ↓だと思うけれど、
http://www.osakac.ac.jp/labs/mandai/writings/Bi1-01m5.pdf
よって立つ立場によって、人によって定義が異なるですよ。
そして、今日、初めて知ったけれど、高校の数学の教科書の「原始関数」と「不定積分」の定義は必ずしも一枚岩ではないようですね。
数学史に疎いので、ネムネコは詳しいことを知らないのだけれど、微分の逆演算としての不定積分――積分定数の違いを無視すればの話――と面積を求める求積法をもとにした定積分とは誕生、発生の経緯が異なっていて、別々の発展を遂げ「微積分の基本定理」によってこの両者が結びついたらしい。
このあたりの件は、たとえば、ここ↓などが参考になると思うにゃ。
https://www.chart.co.jp/subject/sugaku/suken_tsushin/38/38-9.pdf
高校数学では、微分→(微分の逆演算?としての)不定積分→定積分の流れで授業が進められると思うけれど、歴史的には求積法を起源にもつ定積分の方が古いんだケロ。
稲葉三男が『微積分の根底をさぐる』(現代数学社)で書いてあるように
「不定積分を求めることが最終目標であるとすると、(原始関数、不定積分の定義が本によって異なると)、たしかにいわれるとおり困ったことになるであろう。しかし、不定積分を求めることを最終目標とすること自体に問題がある。……」
と開き直る、達観するのも一つの手なのかもしれない(^^ゞ
重箱の隅つつきをしだしたら切りがないからね。
この重箱の隅つつき(?)の例として、
稲葉三男は『微積分の根底をさぐる』の中で伝習的な(不定)積分の公式
を例にあげている。
「右辺を微分すると、明らかにその結果は1/xに等しくなるから、この点に関する限り公式(5)は正しいであろう。しかし、を微分すると、導関数が1/xに等しくなるような関数のものとする限り正しくはない。次のものこそ(5)よりも一般的であろう。
ここに、C₁、C₂は一般に異なる定数である。
(中略)
最後の定義(「となるような関数の一般」)に従うならば、公式(5)は正しくなく、公式(6)こそ正しいものである。」
第10回 微積分の基本定理2 [ネコ騙し数学]
第10回 微積分の基本定理2
定理16
fが区間Iで連続、φが区間Jで微分可能であってφ(x)∈I(x∈J)ならば、
a∈Iと任意のx∈Iに対して
である。
【証明】
とおくと、
また、
(証明終)
(1)と(2)より、
fが区間Iで連続、φとψが区間Jで微分可能であってφ(x)、ψ(x)∈I(x∈J)ならば、
問題1 R上の連続関数f(x)に対して次の導関数を求めよ。
【解】
(解答終)
問題2 f(x)は実数Rで連続であって、任意のh∈R、任意のx∈Rに対して
ならば、f(x)は定数関数である。
【解】
xを固定して、
をhの関数と考えてhで微分すると、
任意のhについてf(x+h)=f(x)が成立するので、f(x)は定数関数である(※)。
(解答終)
(※) 任意のxとhについて
が成立するので、
となるので、f(x)は定数関数である。
問題3 f(x)をI=(0,∞)で連続とする。
が任意のx∈I、任意のy∈Iに対して
を満たせば
である。
【解】
xを固定しF(xy)をyの関数と考えて、の両辺をyで微分すると
y=1とすると、
である。
(解答終)