追加問題の答えだケロ!! [ネコ騙し数学]
追加問題の答えだケロ!!
(1) f(x)がx=0で微分可能であることを示し、x=0におけるf(x)の微分係数f'(0)を求めよ。
(2) f(x)の導関数f'(x)がx=0で連続であることを示せ。
(3) x=0でf(x)は2回微分可能か?
(4) f(0)はf(x)の極値か否かを判定せよ。
ちなみに、
【解】
(1) h≠0とすると、
(2) x≠0では
よって、x≠0のとき
ここで、
だから、
となり、f'(x)はx=0で連続である。
(3) h≠0のとき
したがって、f(x)はx=0で2回微分可能である。
(4) f(0)は極値ではない。
任意のr>0に対して
が成立するように自然数nをとると、点x=0の近傍(–r,r)内に
という点がある。
したがって、r>0をどんなに小さくしても、(–r,r)で
が成立するので、f(0)は極値ではない。
(解答終)
宿題 次の曲線の概形を書け。
【解】
【解】
よって、y²=x²(x–3)をyについて解くと
となり、曲線y²=x²(x–3)は
と、y₁、y₂の2つの曲線に分解することができる。
y₁の凸凹表を書くと
x |
0 |
3 |
・・・ |
4 |
… |
y |
0 |
0 |
|
4 |
|
y'' |
|
|
− |
0 |
+ |
凸凹 |
|
|
凹 |
変曲点 |
凸 |
y₂はy₁をx軸に関して対称だから曲線y²=x²(x–3)のグラフは以下のようになる。
(解答終了)
曲線y²=x²(x–3)には、その近傍に曲線上の点が存在しない点(0,0)が存在する。この(0,0)のように、その近傍に曲線上の点が存在しない点を孤立点と呼ぶ。
参考までに、y²=x³のグラフを以下に示す。
曲線y²=x³上の点(0,0)は尖点という。
以上のことから、曲線
は、a>0のとき曲線上の点(0,0)は接線が2本引ける結節点になり、a=0のとき尖点、a<0のとき孤立点になる。
y²=x²(x+3)からきまるxの関数のyのグラフと接線 [ネコ騙し数学]
問題 次の曲線の概形を書け。
【解1】
また、
だから、
となる。
したがって、
増減表を書くと
x |
−3 |
・・・ |
−2 |
・・・ |
0 |
・・・ |
y₁’ |
|
+ |
0 |
− |
|
+ |
y₁ |
0 |
増加 |
2(極大) |
減少 |
0(極小) |
増加 |
y₁’’ |
|
− |
|
+ |
||
凸凹 |
|
凹 |
変曲点 |
凸 |
y₂はy₁とx軸に対して対称だから、曲線の概形は次の通り。
(解答終)
高校レベルの微分を用いれば、上のように解くのが正攻法であろう。
しかし、曲線y²=x²(x+3)は次のように分解することも可能である。
このように考えると、次のような解答を作ることができるだろう。
【解2】
曲線y²=x²(x+3)を
と分解する。
曲線y₂は曲線y₁をx軸に関して折り返したものだから、y₁だけを考えれば十分。
よって、増減表(凹凸表)は次の通り。
x |
−3 |
… |
−2 |
… |
y₁’ |
|
− |
0 |
+ |
y₁ |
0 |
減少 |
−2 |
増加 |
y₁’’ |
|
+ |
||
凹凸 |
|
凸 |
したがって、この曲線の概形は次の通り。
【解1】と【解2】、どちらが楽かは言わずもがなだろう。
しかし、こんなことを言いたくて、この問題を解いたわけではない。
【解1】の
【解2】の
のy₁、y₂ともに、y²=x²(x+3)から決まるxの関数である。
しかし、解1の関数の場合、x=0で微分不可能であり、また、y₁はx=0で極小、y₂はx=0で極大である。
x=0で微分可能かによって、原点Oでこの曲線の接線が引けるかどうかの違いも出てくる。
解1の場合、x=0で微分不可能だから接線は存在しないが、解2の場合、x=0でy₁、y₂ともに微分可能で、接線が2本存在することになる。
原点Oで曲線の接線を引けるかどうか、この差は決定的だケロ。
曲線上の点で接線が2本引けるというのも考えてみれば妙な話のように思える。さてさて、この曲線の原点(0,0)における接線は0本か、それとも2本か、なんとも悩ましい話である。
出ないと思うけれど、もし、大学入試で「この曲線の原点(0,0)における接線を求めよ」という問題が出題されたら、受験生はどのように答えるのだろうか。
実に興味深い問題である(^^)
なお、この曲線
で囲まれている領域の面積Sは、
だから、t=x+aとおくと、x=−a →t=0、x=0→t=aに対応し、dx=dtだから
である。
宿題 曲線y²=x²(x–3) の概形をかきなさい。
おそらく、このグラフを書けるヒトは意外に少ないに違いない!!
第7回 全微分 [ネコ騙し数学]
第7回 全微分
関数f(x,y)が点(a,b)の近傍で、ある定数α、βによって
と表されるとき、fは点(a,b)で全微分可能(微分可能)であるという。ここで、
である。
f(x,y)が点(a,b)で全微分可能なとき、(h,k)≠(0,0)とすると、(1)式より
となるので、f(x,y)は点(a,b)で連続である。
また、k=0のときρ=|h|となり、
同様に、h=0のとき、ρ=|k|となり、
以上のことから、次の定理が得られる。
定理8
関数f(x,y)が点(a,b)で(全)微分可能ならば、f(x,y)は点(a,b)で連続であり、かつ偏微分可能で、
である。
また、h=ρcosθ、k=rsinθとおくと、
となり、この極限値をθ方向に沿っての方向微分係数という。
定義
領域Dで定義されている関数f(x,y)がD上のすべての点で(全)微分可能なとき、f(x,y)はD上で(全)微分可能であるといい、
をf(x,y)の全微分という。
dx=Δx、dy=Δyだから、(2)式は
と書くこともできる。
定義 (曲面z=f(x,y)の接平面)
関数f(x,y)は点(a,b)で(全)微分可能とする。このとき、平面
を曲面z=f(x,y)の点((a,b),f(a,b))における接平面という。
問 曲線
上の点((a,b),f(a,b))における接平面の方程式を求めよ。
【解】
よって、
とおくと、
である。
(解答終)
原点を中心とする半径rの球面と球面上の点(a,b,c)で接する平面の方程式は、
だから、問で求めた接平面の方程式と一致していることがわかると思う。
定理9
関数f(x,y)がC¹級ならば、f(x,y)は全微分可能である。
【証明】
と置くと、平均値の定理より
は連続だから、
とおくと、h→0、k→0のときε₁→0。
同様に、は連続だから、
とおくと、k→0のときε₂→0。
ゆえに、
とおくと、|h|≦ρ、|k|≦ρだから、
(証明終)
問題 関数は(0,0)で偏微分可能であるが、全微分可能でないことを示せ。
【解】
だから、(0,0)で偏微分可能である。
このとき、が0に収束すれば全微分可能で、しなければ全微分不可能である。そこで、h=t、k=tとして、t→0の極限を求めると、
よって、全微分可能でない。
(解答終了)
第6回 偏微分係数 [ネコ騙し数学]
第6回 偏微分係数
§1 偏微分係数
点(a,b)の近傍で定義されている関数f(x,y)が極限
をもつとき、関数f(x,y)は点(a,b)でxに関して偏微分可能であるといい、
を、点(a,b)におけるxに関する偏微分係数という。
同様に、極限
が存在するとき、、関数f(x,y)は点(a,b)でyに関して偏微分可能であるといい、
を、点(a,b)におけるyに関する偏微分係数という。
例1
f(x,y)=x²+2xy+3y²とすると、点(a,b)におけるxに関する偏微分係数は、
yに関する偏微分係数は
と計算できる。
しかし、定義から偏微分係数を求めることはせず、次回に述べる偏導関数を求めて偏微分係数を求めるのが普通で簡単である。
問題1 次の関数f(x,y)は原点(0,0)で偏微分可能か。
【解】
点(0,0)におけるxに関する偏微分係数は
また、
よって、
となり、極限
が存在せず、yに関する偏微分係数は存在しない。
§2 偏導関数
領域D上で定義された関数f(x,y)がD上の全ての点で偏微分可能なとき、f(x,y)は偏微分可能であるという。また、
を偏導関数という。
領域Dで定義された関数f(x,y)の偏導関数がDで連続であるとき、f(x,y)はDでC¹級であるという。
問1 偏導関数の定義に従って、f(x,y)=x²+y²の偏導関数を求めよ。
【解】
(解答終了)
定義に従えば上のような計算になるが、xで偏微分するときyを定数、yで偏微分するときはxを定数として1変数の微分法を適用して計算すればよい。
問2 次の導関数を求めよ。
【解】
(解答終了)
問題2 次の関数の偏導関数を求めよ。
【解】
(x,y)≠(0,0)のとき
(x,y)=(0,0)のとき、
(解答終了)
f(x,y)は(0,0)以外で連続であるが、f(x,y)の偏導関数は(x,y)∈R²で偏微分可能である。また、f(x,y)の導関数は(0,0)で連続ではない。
このことを確かめよ。
第5回 2変数関数の連続 [ネコ騙し数学]
第5回 2変数関数の連続
2変数関数の一点での連続の定義
関数f(x,y)はR²の部分集合Dで定義されており、(a,b)∈Dとする。
(a,b)がDの内点で
であるとき、f(x,y)は点(a,b)で連続という。
すなわち、任意のε>0に対して、あるδ>0が存在し、
点(a,b)がDの境界点の場合、Dの内部から(a,b)に近づいたとき、
を満たすとき、f(x,y)は点(a,b)で連続という。
証明は1変数の場合と証明は同様なので、定理だけを紹介する。
定理4
関数f(x,y)、g(x,y)が点(a,b)で連続で、λ、μが実数の定数とすると、
も連続である。
さらに、合成関数の連続についての定理を紹介する。
定理5
u=g(x,y)が点(a,b)で連続、z=f(u)がu=g(a,b)で連続ならば、合成関数z=f(g(x,y))は点(a,b)で連続である。
【略証】
z=f(u)はu=g(a,b)で連続だから、任意のε>0に対して、あるδ₁>0があって、
u=g(x,y)は点(a,b)で連続だから任意のε'>0に対して、あるδ>0があって、
そこで、ε'=δ₁にとり、それに合せてδ>0を定めると、
(略証終)
定理6
u=φ(t)、v=ψ(t)が点t=aで連続、z=f(x,y)が点(φ(a),ψ(a))で連続ならば、合成関数z=f(φ(t),ψ(t))は点t=aで連続である。
【略証】
z=f(x,y)は点(φ(a),ψ(a))で連続だから、任意のε>0に対して、あるδ'>0があって
である。
また、u=φ(t)、v=ψ(t)が点t=aで連続だから、ε'=δ'>0に対して、あるδ₁>0、δ₂>0があって
δ=min{δ₁,δ₂}にとると、
(略証終)
問 次の関数は(0,0)で連続か。
【解】
とおくと、
よって、f(x,y)は点(0,0)で連続。
(解答終)
定義 2変数関数の連続性
関数f(x,y)はR²の部分集合Dで定義されていて、任意の点(a,b)∈Dでf(x,y)が連続であるとき、f(x,y)はD上で連続であるという。
定理7
関数f(x,y)、g(x,y)がD⊂R²で連続で、λ、μが実数の定数とすると、
も連続である。
問2 次の関数の連続性を調べよ。
【解】
(1)、(2)、(3)とも(x,y)≠(0,0)では連続。したがって、(x,y)=(0,0)で連続か否かを調べればよい。
とおくと、|x|≦r、|y|≦r。
(x,y)≠(0,0)とする。
(1)
よって、(0,0)でf(x,y)は連続。
したがって、f(x,y)はR²で連続である。
(2) x=2t、y=tとおき、t→0として、(0,0)に近づけると
となり、(0,0)でf(x,y)は連続でない。
よって、f(x,y)は原点以外で連続である。
(3)
よって、f(x,y)は(0,0)で連続。
したがって、f(x,y)はR²で連続。
(解答終)
第4回 極限の計算例 [ネコ騙し数学]
第4回 極限の計算例
問題1 次の極限を求めよ。
【解】
とすると、|x|≦r、|y|≦r。したがって、r→0+0のとき、|x|→0、|y|→0になる。
(1) (x,y)≠(0,0)とする。
よって、
(2) x=t、y=mtとおき、t→0として、(x,y)を(0,0)に近づける。
このとき、極限値は
mの値によって、つまり、(x,y)の(0,0)への近づき方によって極限値が変化するので、この極限値は存在しない。
(3)
(解答終了)
x=rcosθ、y=rsinθと極座標に変換して、r→0+0の極限を求める方法もある。このとき、極限値がθにかかわらず一定の値に収束すれば、その値が極限値である。
【別解】
(1)
とおき、x=rcosθ、y=rsinθを代入すると、
(2)
とする。
この極限はθの値によって変わるので、極限
は存在しない。
(解答終了)
問題2 次の極限を求めよ。
【解】
(1) x軸に沿って(0,0)に近づく、要するにy=0として、x→0とすると、
y軸に沿って(0,0)に近づける、要するにx=0として、y→0とすると、
この2つの極限が一致しないので、は存在しない。
(別解)
直線y=mxにそって(0,0)に近づけると
mの値によって極限値が変わるので、は存在しない。
(2) x軸にそって(0,0)に近づけると、
y軸にそって(0,0)に近づけると
よって、極限は存在しない。
(3) とおくと、
(別解)
(解答終了)
第3回 2変数関数の極限 [ネコ騙し数学]
第3回 2変数関数の極限
記号の混乱を避けるために、2次元ユークリッド空間R²の点をアルファベットの太字の斜体字を用いてaなどであらわし、2点a(x₁,y₁)、b(x₂,y₂)の2点間の距離を
と表記することにする。
実関数と定義域、値域の定義
Aをn次元ユークリッド空間の部分集合、fをAから実数Rへの写像とする。このとき、Aをfの定義域といい、
をfの値域という。
n=2のとき、関数f(x,y)の定義域をAとすると、f(x,y)の値域は
である。
2変数関数の極限の定義
f(x,y)は点a(a,b)の近傍で定義される関数とする。
ある実数lが存在し、任意の正数ε>0に対して、あるδ>0が存在し、
である全ての点x(x,y)について
となるとき、f(x,y)は点aで収束するといい、
または、
などと表す。
問1 次のことを示せ。
[解]
任意の正数ε>0に対して、δ=εとδ>0を定めると、の任意の(x,y)について
となるので、
である。
(解答終)
問2 次のことを示せ。
[解]
任意のε>0に対してδ=ε/2とδ>0を定めると、の任意の(x,y)について
となるので、
である。
定理2
、αとβを実数の定数とする。このとき、次が成り立つ、
[証明]
基本的に1変数関数の極限の証明と同じで、1変数関数の証明中のx、aをx、a、さらに、をと変更すれば、そのまま証明が流用できます(^^ゞ
だから、(1)と(4)だけ証明することにする。
また、証明を簡略化するために、(x,y)をx、(a,b)をa、f(x,y)をf(x)で表すことにする。
(1) α=0、β=0のときは明らかだから、αとβが同時に0でないとする。
だから、任意のに対して、
となるδ₁>0、δ₂>0が存在する。
そこでδ>0をδ=min{δ₁、δ₂}にとると、
(4) だから、任意のε>0に対して、あるδ>0が存在して
よって、
(証明終)
1変数関数のときと基本的に証明は同じなので、次の定理は定理だけを紹介する。
定理3
点(a,b)を除く、点(a,b)の近傍においてf(x,y)≦g(x,y)ならば
第1回 ユークリッド空間の開集合、閉集合、境界 [ネコ騙し数学]
第1回 ユークリッド空間の開集合、閉集合、境界
2次元ユークリッド空間の点P(x₁,y₁)、Q(x₂,y₂)の距離を
と定義する。
このとき、距離には次の性質がある。
定義
ε>0と座標平面上の点a=(x₀,y₀)∈R²に対して
を点aのε近傍という。
Aをの部分集合とする。
点a∈Aに対して、
となるε>0が存在するとき、aをAの内点という。Aの内点の全ての集合をAの内部といい、記号やで表す。また、の点はAの内点だから
である。
R²の点aについて
となるε>0が存在するとき、aをAの外点という。Aの外点全体の集合をAの外部といい、記号と表す。A
R²の点aがAの内点でも外点でもないとき、aをAの境界点という。Aの境界点全体の集合
をAの境界といい、∂Aで表す。
したがって、R²の点が境界点であるとは、任意のε>0に対して
が成り立つことである。
定義から
が成り立つ。
R²の点aについて、任意の正数ε>0に対しても
が成り立つとき、をAの触点という。Aの触点全体の集合を閉包といい、やで表す。集合Aの点はAの触点だから、
である。また、定義から明らかなように
である。
R²の部分集合Aについて、が成り立つときAを閉集合といい、が成り立つとき閉集合という。
定理1 2次元ユークリッド空間R²において、開集合の補集合は閉集合、閉集合の補集合は開集合である。
例
は開集合である。
【解】
点aを集合Aの任意の点とする。
にとり、とする。
三角不等式から
よって、
したがって、Aは開集合である。
(解答終)
あるいは、
集合Aの任意の点aの座標を(x₀,y₀)とすると、
そこで、
にとると、
である。
(解答終)
第22回 数列の極限と関数の極限の融合 [ネコ騙し数学]
第22回 数列の極限と関数の極限の融合
数列がaに収束するとは、任意のε>0に対して、ある正の整数mが存在し、
である。
関数f(x)がx→aのときbに収束するとは、任意のε>0に対して、あるδ>0が存在して
であることである。
この数列の極限と関数の極限を結びつける次の定理を紹介する。
定理
である必要十分な条件は、aに収束する任意の数列に対してとなることである。
【証明】
必要)
だから、任意のε>0に対して、あるδ>0が存在して、
である。
また、だから、ある正の整数mがあって
である。
よって、
十分)
を否定すると、
となるxが存在する。
特に、δ=1/n>0にとると、
となるが存在する。
このとき得られたに対しては、であるが、が成り立たない。
したがって、証明された。
(証明終)
この定理から、関数の極限を数列の極限を用いて定義してよいことになる。
同様に、数列の極限を用いて、関数の連続は次のように定義される。
関数f(x)は区間Iで定義された関数、a∈Iとする。aに収束するすべての数列に対してであるとき、関数f(x)はx=aで連続であるという。
最後に、これまで証明しなかった次の定理を証明する。
定理
関数f(x)が有界閉区間[a,b]で連続ならば、関数f(x)は[a,b]で最大値、最小値をもつ。
【証明 】
fが[a, b]で上に有界でないとすると、
が成り立つ。
n = 1, 2, 3, ・・・と変化させると、という有界な数列が得られる。
は有界な数列なので、ボルツァノ・ワイエルシュトラスの定理より収束する部分列が存在する。そして、その極限をcとすると、となる。
関数f(x) は連続なので、
となるけれど、
よって、f(c) = +∞となり、有限な値を持たない。
c∈[a,b]でf(c) は[a,b]で定義される関数の点である以上、有限の値を持たなければならない。
これは矛盾である。
よって、f(x)は上に有界である。
f(x) は [a, b] で上に有界なのだから、上限が存在する(実数の連続性)。その上限をMとする。
そして、f(x) が[a,b]で最大値を持たないと仮定すると、f(x) < M となり、M – f(x) ≠ 0となる。
だから、
という関数gは[a, b] で連続となる。
また、仮定より、Mはf(x) の上限なのだから、任意の正の数εに対して
となる x ∈ [a,b] が存在する。
εは任意の正の数なので、
とすると、
となる。ここで、n は自然数。
nは自然数なのだから、いくらでも大きくでき、g(x) には上限がないことになる。
g(x) は有界な閉区間[a,b]で定義された連続関数だから上限があるはずなのに、上限がない。
これは矛盾。
何故、矛盾したかというと、f(x) は[a,b] で最大値をもたないと仮定したから。 よって、f(x) は最大値をもつ。
下に有界をもつこと、最小値をもつことも同様。
(証明終)
第21回 ボルツァノ・ワイエルシュトラスの定理とコーシーの収束条件 [ネコ騙し数学]
第21回 ボルツァノ・ワイエルシュトラスの定理とコーシーの収束条件
定理9
有界な数列は収束する部分列をもつ。
【証明】
有界だから
を満たす正の実数Kが存在する。
つまり、
閉区間[ –K, K] を二等分して、[–K, 0] と[0, K] という閉区間を作ると、 このどちらかにの無数の項がある。
かりに[0, K] にあるとして、
として、これをまた二等分する。すると[0,K/2] と[K/2, K] になって、このどちらかにの無数の項が存在する。
かりに[K/2, K]に無数の項があるとすると、
として、これをまた二等分する。
こうした操作を繰り返してゆくと、
という閉区間の減少列が得られる。
すると、
になる。
区間縮小法から、これら閉区間すべてに共通に含まれる一つの数αが存在する。
次に、のなかに含まれる数列の項の中で最も番号が若いものを、に含まれる数列の中で最も番号が若いものをといった具合に、この操作をと無限に繰り返す。
すると、
というの部分列が得られて、①と②より、はα に収束する。
(証明終了)
コーシー列
次の条件を満たす数列をコーシー列という。
任意のε > 0 に対して、次の条件を満たすm ∈ N が存在する。
収束する数列がコーシー列である。
何故ならば、とすると、
だからである。
定理10 (コーシーの収束条件)
数列が収束するための必要十分な条件は、数列がコーシー列であることである。
【証明】
収束する数列がコーシー列になることは先に証明した。
したがって、がコーシー列であるならば、が収束することを示せばよい。
条件より
任意のε > 0 に対して、次の条件を満たすm ∈ N が存在する。
q=m+1 に固定し、p>m とすると
よって、p> m で、数列は有界。 これにm以下の項を加えても、 はやはり有界。
ボルツァノ・ワイエルシュトラスの定理より、の部分列でα に収束するものがあるのだから、任意の正の数ε に対し適当なm₁を定めると 、k>m₁で
となkが無数に存在する。
また、条件から
となり、m'=max{m,m₁}とすると、k>m' で
をみたす k が無数に存在し、そのkに対して
したがって、n>m'のすべてのn について
となり、
である。
(証明終了)