陰関数定理の補足 [ネコ騙し数学]
陰関数定理の補足
f(x,y)はC¹の関数であるとする。
陰関数定理の主張は、
であるならば、x₀の近傍でC¹級の陰関数y=φ(x)がただ1つ存在し、
であるということ。
またはという条件は、あくまで、関係式f(x,y)=0で定まるC¹級の陰関数y=φ(x)またはx=ψ(y)が存在することの十分条件であって、この条件を満たしていなくても、C¹級の陰関数y=φ(x)またはx=ψ(y)が存在することがある。このことは、次の問題を解けばわかる。
問題1 x³–2xy+y²=0によって定まるC¹級の陰関数y=φ(x)とφ'(0)を求めよ。
【解】
f(x,y)= x³–2xy+y²とおくと、だから、曲線x³–2xy+y²=0上の点(0,0)での偏微分係数は。
つまり、(0,0)は曲線x³–2xy+y²=0の特異点。
したがって、陰関数定理から、x₀=0近傍で、x³–2xy+y²=0によって定まるC¹級の陰関数y=φ(x)が存在するかどうかはわからない。
x³–2xy+y²=0をyについて解くと、
x=0におけるy₁とy₂の右側、左側微分係数を求めると、
そこで、
と定めると、φ'(0)=2となる。
また、
と定めると、φ'(0)=0になる。
(解答終)
問題2 x³–2xy+y²=0によって定められる陰関数
と
がx=0で微分可能であることを示せ。
【解】
まず、y=φ₁(x)がx=0で微分可能であることを示す。
h>0のとき、
h<0のとき、
したがって、y=φ₁(x)はx=0で微分可能で、である。
次に、y=φ₂(x)がx=0で微分可能であることを示す。
h>0のとき、
h<0のとき
したがって、y=φ₂(x)はx=0で微分可能で、
(解答終了)
y=φ₁(x)とy=φ₂(x)が開区間(−∞,1)からx=0を除いた点で微分可能なのは明らか。そして、上の問題からx=0で微分可能だから、(−∞,1)でφ₁、φ₂ともに微分可能ということになる。
関係式f(x,y)=0で定まるC¹級の陰関数 [ネコ騙し数学]
関係式f(x,y)=0で定まるC¹級の陰関数
f(x,y)を
とする。
原点(0,0)の近傍で、関係式f(x,y)=0が定めるC¹級の陰関数y=φ(x)について考えることにする。
だから、原点(0,0)ではとなり、陰関数定理からC¹級の陰関数y=φ(x)の存在の有無を確かめることはできない。
そこで、次のようにyについて解き、
としてみる。
しかし、このように定めると、下図を見ると明らかなように、x=0で曲線y=φ₁(x)、y=φ₂(x)ともに尖っており、x=0で微分可能ではなく、ともにx=0の近傍でC¹級ではない。したがって、この関数は、x=0でf(x,y)=0が定めるC¹級の陰関数y=φ(x)ではない。
しかし、
とすると、このどちらもx=0で微分可能であり、また、x=0の近傍で滑らかな曲線になっているので、C¹級ということになる。
また、この陰関数を曲線y²=x²(x+a)の2つの枝に選ぶと、曲線y²=x²(x+a)は原点(0,0)において接線を2本引くことができる。
この他にも、この問題の場合、x=0のときに陰関数が極値になるかどうかの違いが出てくるので、注意が必要である。