ラグランジュの未定乗数法を使って大学入試の有名問題を解く [ネコ騙し数学]
大学入試の問題で非常に有名な問題がある。
問題 正の実数a、b、cがa+b+c=1を満たすとき、次の問に答えよ。
(1) abcの最大値を求めよ。
(2) であることを示せ。
(3) の最小値を求めよ。
【解】
(1) 相乗平均≦相加平均より
よって、a=b=c=1/3のときabdの最大値は1/27
(2)
(3)
相加平均≧相乗平均より
また、(2)よりだから、
したがって、a=b=c=1/3のときに最小値100/3。
(解答終了)
(2)は、シュワルツの不等式
を知っていれば、x=y=z=1とおき、
となることから、このことは容易に想像がつくが・・・。
(a,b,c)を原点を中心とする半径rの球の球面上x²+y²+z²=r²の点と考えると、
この球と平面x+y+z=1が共有点をもつ条件は、球の半径r≧平面x+y+z=1と原点との距離
と解くこともできる。
等号が成立するのは、球x²+y²+z²=r²と平面x+y+z=1が接するとき。
(3)は、相加平均≧相乗平均だから
よって、
したがって、最小値は12としてはいけない。最小値が12になるのはa=b=c=1のときだから、a+b+c=3≠1となり、問題の条件を満たさないからだ。
ラグランジュの未定乗数法を使うならば、次のように解くことができるだろう。
(1)は、 f(a,b,c)=abc、g(a,b,c)=a+b+c–1=0とし、
とすると、
a≠0、b≠0、c≠0だから、abcで割ると
また、a+b+c=1だから、a=b=c=1/3。
したがって、f(a,b,c)=abcの極値は
(2)は、f(a,b,c)=a²+b²+c²とし、
とすると、
これとa+b+c=1より、a=b=c=1/3となり、f(a,b,c)の極値は
(3)は、とおき、
とすると、
よって、
何故ならば、a>0、b>0のとき
だから。
同様に、b=c。
よって、a=b=c=1/3。
したがって、f(a,b,c)の極値は
厳密なことを言うと、ラグランジュの未定乗数法を用いるとき、(1)、(2)、(3)のいずれの場合も、a=b=c=1/3のときにf(a,b,c)が極値であることを証明しないといけない。何故ならば、(a,b,c)=(1/3,1/3,1/3)は、あくまでf(a,b,c)が極値をもつ候補の点に過ぎず、この点で極値をとる保証がないから。そして、この証明はそれほど簡単なものではない。