スカラー関数の勾配と方向微分係数 [ネコ騙し数学]
スカラー関数の勾配と方向微分係数
定点Pと単位ベクトルuが与えられたとき、Pを通りuを方向ベクトルとする直線をCとする。直線C上の点Qのパラメータとして点Pからの距離をsをとると
である。したがって、点Qの位置ベクトルをr(s)とすると、
である。
極限値
が存在するとき、この極限値を点Pにおけるfのu方向の方向微分係数といい、記号
などであらわす。
したがって、点Pにおける、fのu方向の方向微分係数は、点Pにおけるfの勾配ベクトルとuとの内積に等しい。∇fとuのなす角をθとすれば、
よって、θ=0のとき、は最大値|∇f|をとる。
ゆえに、点Pにおける勾配∇fは、点Pにおける曲面f(x,y,z)=cに垂直で、fの増加する向きに向かい、その大きさは、曲面f(x,y,z)=cの法線方向に対する増加率に等しい。
ベクトルと∇fとの内積は
だから、
と書き
とおけば、これは一種の微分演算子で、これをfに作用させたものがと考えられるので、
と書くことができる。
したがって、fのu方向の方向微分係数は
と書くことができる。
問1 点(1/2,1/2)における
の(−1,1)方向の方向微分係数を求めよ。
【解】
(−1,1)方向のベクトルの単位ベクトルuは
また、
より、点(1/2,1/2)におけるf(x,y)の勾配は
だから、点(1/2,1/2)におけるf(x,y)の方向微分係数は
(解答終)
問2 関数fを
とする。
(1) ∇fを求めよ。
(2) 点(1,0)におけるπ/3方向の方向微分係数を求めよ。
(3) 点(1,0)における方向微分係数が最大になる方向の基本ベクトルを求めよ。
【解】
(1)
したがって、
(2)
x軸と方向ベクトルのなす角をθとすると、θ=π/3方向の単位ベクトルuは
したがって、点(1,0)におけるπ/3方向の方向微分係数は
(3) 方向微分係数が最大になるのは、単位方向ベクトルuが∇fが同方向のとき。点(1,0)における関数fの勾配∇f=(2,0)だから、単位方向ベクトルu=(1,0)のとき、すなわちθ=0方向のときに最大になる。
(解答終)
なお、方向単位ベクトルu=(cosθ,sinθ)のとき、f(x,y)の点Pにおける方向微分係数は
となる。
問3 φ=φ(x,y,z,t)において、x、y、zがtの関数であるとき、
であることを示せ。
【解】
rを点P(x,y,z)の位置ベクトル
とすると、
したがって、
(解答終)
rを動点Pの位置ベクトルとすると、速度ベクトルvは
だから、
これは、流体力学や連続体力学で実質微分や物質微分と呼ばれるものである。