SSブログ

第8回 線形微分方程式とロンスキアン [ネコ騙し数学]

第8回 線形微分方程式とロンスキアン

 

未知関数y(x)n階線形常微分方程式の一般形は

  

である。

Q(x)=0のとき同次Q(x)≠0のとき非同次という。

左辺のL[y]は関数から関数への写像なので、実数から関数への写像へと区別するために、[]を用いる。また、y(x)に対する微分演算を含むので微分演算子または微分作用素といい、線形演算子である。

 

定義

次の2つの性質を満たす演算子を線形演算子という。

  

 

(1)式の1つの解をy₀とすると、u=y–y₀

  

であるから、uは同次微分方程式

  

の解である。

これを(1)の補助微分方程式といい、その一般解を余関数という。

また、このことから、(1)の一般解は、(1)の1つの解と余関数の和で表されることになる。

 

定義

n–1回微分可能なn個の関数

  iyada-siki.png

に対して、次の行列式をロンスキー(Wronski)の行列式、または、ロンスキアン(Wronskianといい、

  dai8-bh-siki-001.png

であらわす。

 

  

とすると、

  dai8-bh-siki-002.png



問1 次の関数のロンスキアンを求めよ。

【解】

  dai8-bh-siki-003.png

(解答終)

 

 

定理1 iyada-siki.pngを、u₀を含む区間における微分方程式の解(2)とするとき、それらのロンスキアンは次式で与えられる。

  dai8-bh-siki-004.png

 

一般の場合の証明は難しいので、線形代数(行列式の計算法)の知識を必要しないn=2の場合について証明することにする。

 

【証明】(n=2の場合)

u₁u₂を2階線形常微分方程式

  

の解とする。

ロンスキアンW

  dai8-bh-siki-005.png

xで微分すると、

   

になる。

u₁u₂を2階線形常微分方程式(3)の解だから

  dai8-bh-siki-006.png

これを①に代入すると、

  dai8-bh-siki-007.png

よって、②の一般解は

  dai8-bh-siki-008.png

したがって、

  dai8-bh-siki-009.png

(解答終)

 

ロンスキアンWxの関数になるので、これをW(x)と書くことにすると、この定理1から、区間I内の1点x₀におけるロンスキアンW(x₀)≠0ならば、Iで常にW(x)≠0であることになる。

 

定義

区間で、n個の関数について、全部が0でない定数によって

  

になるとき、1次従属であるといい、そうでないとき1次独立であるという。

 

定理2 n–1回微分可能な関数iyada-siki.pngに対して、

  

ならば、このn個の関数は1次独立である。

n個の関数が1次従属ならばW=0である。

 

n=2の場合について証明する。

 

【証明】

対偶法を用いて証明する。

u₁u₂は1次従属とすると、同時に0でないc₁c₂によって

  

となる。

両辺をxで微分すると、

  

すくなくともc₁c₂の一方は0でないので、c₁≠0とする。

より、

  dai8-bh-siki-010.png

よって、証明された。

(証明終)

 

 

定理3’ n階同次線形常微分方程式(2)のn個の解iyada-siki.pngに対して、xの区間で

  

ならば、このn個の解は1次従属である。

したがって、n個の解が1次独立のとき、そのロンスキアンは0でない。

 

定義 n階同次線形常微分方程式(2)のn個の1次独立の解の1組を、その基本解または基本系という。

 

例 は、2階同次線形常微分方程式

  

の基本解である。

  dai8-bh-siki-011.png

は、2階同次線形常微分方程式

  

の基本解である。

  dai8-bh-siki-11.png

 

 

定理4 n階同次線形微分方程式の一般解u(x)は、基本解iyada-siki.pngの任意の1次従属で表される。すなわち、

  

である。

 

 

定理4により、(3)の一般解y

  

であり、(4)の一般解は

  

であることが保証される。


nice!(0)  コメント(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。