複素関数と1次変換 [ネコ騙し数学]
複素関数と1次変換
複素平面上の点集合Sの各点zに1つの複素数wが対応するとき、wをzの複素関数といい、w=f(z)で表す。このとき、zを独立変数、wを従属変数といい、Sをこの関数の定義域という。また、zとwのそれぞれの実部、虚部を分けてと書くと、w=f(z)は、実変数x,yの2つの実変数関数が与えられることと同等である。
関数w=f(z)が与えられたとき、変数zの値を表す複素平面をz平面、変数wの値を表す複素平面をw平面という。このとき、この関数は定義域Sに含まれるz平面上の点集合S’をw平面上の点集合へうつす写像と考えられ、をによるS'の像という。
a、b、c、dを複素数の定数とするとき、
の形の有理関数を1次関数という。これによって与えられたz平面からw平面への写像を1次変換という。
1次変換は、
c≠0のとき
c=0のとき
と変形されるから、1次変換は次の3つのタイプの1次変換の合成写像。
ⅰ) w=z+α (平行移動)
ⅱ) w=αz (原点まわりの回転と相似変換の合成写像)
ⅲ) (単位円|z|=1に対する反転と実軸に対する対称変換の合成写像)
とすると、
だから、点zの写像と同じ複素平面上に求めるには、原点Oと点zを結ぶ半直線上にとなる点z₁をとり、実軸に関するz₁の対称点をとればよい(補足参照)。
したがって、z平面の原点を中心とする半径ρの円|z|=ρは、w平面上の原点を中心とする円|w|=1/ρにうつされ、また、z平面上の原点を通り実軸と角φをなす半直線arg z=φは、w平面上の半直線arg w=−φに写される。
問 w=1/zにより、z平面の直線x=cとy=c(c≠0)はそれぞれw平面上のどのような点にうつされるか。
【略解】
z平面上の直線x=c上の点を(c,t)とし、w=1/zによってうつされるw上の点をz=u+ivとすると、
tを消去すると、
したがって、x=cは、実軸上の点を中心とする半径に円うつされる。
同様に、y=cは、虚軸上の点を中心とする半径の円にうつされる。
(解答終)
問の結果から、一次変換w=1/zによって、原点を通らない直線は原点を通る円に、逆に原点を通る円は原点を通らない直線にうつされることになる。
複素平面上の点zを極形式で表すと
したがって、
また、このことから、原点を中心とする半径ρ>0の円|z|=ρは、1次変換によって
つまり、原点を中心とする半径1/ρの円にうつされることがわかる。