2次形式の正定値、負定値 [ネコ騙し数学]
2次形式の正定値、負定値
p、q、rを実数とする。
x、yの2次同次式
を2次形式という。
が成り立つとき、f(x,y)は正定値であるといい、
が成り立つとき、f(x,y)は負定値という。
p≠0のとき、2次形式は
と変形できる。
したがって、次の定理が成り立つ。
定理 (2次形式の正定値、負定値)
2次形式F(x,y)=px²+2qxy+ry²は
(1) p>0、pr−q²>0ならば、正定値
(2) p<0、pr−q²>0ならば、負定値
(3) pr−q²<0ならば、正定値でも負定値でもない
【証明】
p≠0のとき、2次形式F(x,y)=px²+2qxy+ry²を平方完成すると、
(1) p>0、pr−q²>0のとき、
(2) p<0、pr−q²<0のとき、
したがって、2次形式F(x,y)は負定値である。
(3) p≠0のとき、
よって、pr−q²<0ならば、F(1,0)とF(q,−p)は異符号になる。
p=0のとき、
したがって、p=0のとき、
となり、これはすべての実数値をとる。
したがって、pr−q²<0のとき、F(x,y)は正定値でも負定値でもない。
(証明終)
ところで、2次形式F(x,y)=px²+2qxy+ry²は行列を用いると次のように書き換えることができる。
そして、実対称行列の行列式は
である。
したがって、先の定理は
2次形式F(x,y)=px²+2qxy+ry²は、
とし、その行列式を|A|とするとき、
(1) p>0、|A|>0ならば、正定値
(2) p<0、|A|>0ならば、負定値
(3) |A|<0ならば、正定値でも負定値でもない
となる。
行列は実対称行列なので、この行列の固有値は必ず実数である。そこで、この行列の固有値との関係を調べてみることにする。
行列Aの固有方程式(特性方程式)は
この2次方程式の判別式をDとすると、
したがって、固有方程式の解は実数である。
この解をλ₁とλ₂とすると、解と実数の関係より、
p>0、pr−q²>0のとき
である。
したがって、
である。
λ₁λ₂>0だから、λ₁とλ₂は同符号。また、λ₁+λ₂>0だから、λ₁>0、λ₂>0である。
逆にλ₁とλ₂が正のとき、p>0、pr−q²>0である。
したがって、行列Aの固有値がともに正であるとき、2次形式F(x,y)は正定値である。
同様に、行列Aの固有値がともに負であるとき、2次形式F(x,y)は負定値となる。
さらに、pr−q²<0のとき、
となり、λ₁とλ₂は異なる符号を持つことになり、このとき2次形式F(x,y)は正定値、負定値でもないということになる。