第34回 複素級数 [ネコ騙し数学]
第34回 複素級数
複素級数をやる前に、複素数列の収束の判定に必要なコーシの収束条件を紹介しますにゃ。実数列の場合の証明はしてあるので、定理として紹介しますにゃ。
定理1(コーシーの収束条件)
数列が収束すための必要条件は、任意の正数εを与えたとき、ある自然数Nが存在して、m>N、n>Nであるすべてのm、nにに対して
が成り立つことである。
複素級数
数列が与えられたとき、
のように各項を加えたものを(複素)級数といい、
とあらわし、を級数の第n項という。
を級数の第n項までの部分和という。
は有限個の数の和であるから数として意味を持ち、新しくという数列を考えることができる。
数列がSに収束するとき、級数はSに収束するといい、
とかく。またSをの和という。が収束しないとき、は発散するという。
形式的にと書いてあるだけで、これは部分和の数列の極限のことだにゃ。実際に無限個の項を足し合わせたものじゃ〜ない。
では、簡単な問題を一つ。
問題1 |z|<1のとき、次の値を求めよ。
【解】
n項までの部分和を求めると
となる。
|z|<1だから、
になるので、
となる。
実は、なのかという微妙な問題を含んでいるのだが・・・。
「ちょっと待った、⑨ネコ!! 何で|z|<1のとき、
なんて言えるんだ?」
「これは、
だからだケロよ。」
それで、
とするにゃ。
そうすると、数列の時と同じように、複素級数がSに収束することと、2つの実級数がそれぞれuとvに収束することが同じだということになる。
ところで、複素級数に冒頭で述べたコーシーの収束条件を用いると、次の定理が得られる。
定理2 (コーシーの収束条件)
級数が収束するための必要十分条件は、任意の正数εを与えたとき、ある自然数Nが存在して、n>Nであるすべてのnおよびすべての自然数pに対し、
が成り立つことである。
定理1と見た目が違うようですが、n>N、m=n+p>Nとすると、
となるにゃ。
系 級数が収束するならば、であり、また、すべてのnに対してとなる定数Mが存在する。
【証明】
前半のに関しては、定理2のpをp=1とすると、任意の正数εに対してn>Nで
となるから。
これで証明になっている(^^ゞ
あるいは、
でもいいにゃ。
後半は、が収束するならばになるので、任意の正数εに対して
となるNが存在する。
ε=1とすると、n>Nで
となる。
つまり、n=N+1,N+2, …で
となる。
一方、
は有限個の数の集まりだから、かならず最大値がある。この最大値Lとすると、
となる。
で、Lと|1の大きい方(正確には小さくない方)をMとすれば、すべてのnに対して
となる。
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