第8回 ベータ関数入門2 ベータ関数の重要な性質 [ネコ騙し数学]
第8回 ベータ関数入門2 ベータ関数の重要な性質
まず、ベータ関数の定義を与える。
定義
p>0、q>0に対してで定義されるB(p,q)をベータ関数という。
さて、ベータ関数には次の重要な性質がある。
定理 ベータ関数B(p,q)は次の性質を満たす。
(1) 任意のp>0、q>0に対して(2) 任意のp>0、q>0に対して
(3) 自然数m、nに対して
【証明】
(1) t=1−xとおくと、x=0はt=1、x=1はt=0に対応し、
だから、(1)を置換積分すると、
(2) 1=x+(1−x)だから
である。
したがって、
0<s<t<1とおき、次の積分を部分積分すると
また
だから、
したがって、
(3) (2)より
また、
だから、
(証明終了)
nを自然数とするとき、ガンマ関数には次の性質がある。
上の定理の(3)にこの関係を適用すると、
この関係が自然数m、nだけでなく、正の実数p、qに対して
が成立するかどうかだ。
定理 p>0、q>0に対して
である。
【証明】
したがって、
ここで、x=rcosθ、y=rsinθとおき極座標変換をすると、
となり、積分領域が
と変わるので、
【証明終了】
上記の定理中の
というベータ関数とガンマ関数の関係式は、定積分の計算に活用できる非常に便利で強力な公式である。
たとえば、
という定積分はベータ関数のp=4、q=5の場合だから、
と、積分の計算をすることなく、簡単な階乗の計算で定積分の値を求めることができる。
のみならず、ベータ関数を用いることによりであることを簡単に証明できる。
m=1、n=1のとき
この公式は、大学入試の重要公式である。
ベータ関数
に対して
として置換積分を適用すると、
0<a<1とし、p=a、q=1−aとおくと
複素解析から右辺の広義積分は
したがって、
f(x)の導関数f'(x)が奇関数のとき、f(x)は偶関数か?の解答(怪答) [ネコ騙し数学]
【お前らに質問!!】 f(x)の導関数f'(x)が奇関数のとき、f(x)は偶関数か?の解答(怪答)
【反例】
とする。
この関数f(x)の導関数f’(x)は
となり、f'(x)は奇関数。
私は、f'(x)が連続であるとも、f(x)が実数全域で微分可能だとも言っていません。ただ、f(x)の導関数f'(x)が奇関数だ、y=f'(x)のグラフが原点対称だと言っただけですよ(^^ゞ
そんな条件は上の命題の中のどこにも書かれていない!!
「この質問は引っ掛けだ。卑怯だ!!」
反論、ごもっとも。
しかし、関数のグラフが繋がっていること、関数が連続であることの大切さがわかったんじゃないですか(^^)
そして、
今日ほど、この曲がふさわしい日はないのではないでしょうか♪
あまり挑発的なことを書いて、反感を買うといけませんから、すこしご機嫌取りを。
「いつもあなたの味方です」のネムネコです。
ねむねこ幻想郷の皆さんにお尋ねしますが、 f(x)の導関数f’(x)が奇関数ならば、f(x)は偶関数か? [ネコ騙し数学]
ねむねこ幻想郷の皆さんにお尋ねしますが、
f(x)の導関数f’(x)が奇関数ならば、f(x)は偶関数でしょうか?
例えば、
ならば、
となる。
これはf(−x)=f(x)が成立するから、f(x)は偶関数。
また、
のとき、
だから、このときもf(−x)=f(x)が成立する。
次の命題は正しそうな臭いがいがプンプンする。
命題
f(x)の導関数f’(x)が奇関数ならば、f(x)は偶関数である
さて、この命題は正しいか。
正しければ証明を、正しくなければ反例をあげよ。
ちなみに奇関数とは
が成立する関数。
偶関数は
奇関数の代表的な例としてf(x)=x、偶関数の代表例はf(x)=x²がある。
第7回 ベータ関数入門1 [ネコ騙し数学]
第7回 ベータ関数入門1
p>0、q>0のとき、
が絶対収束することを証明する。
【証明】
p≧1、q≧1のとき、通常の積分である。
そこで、と分けて考える。
0<p<1のとき、
だから、
は広義積分である。
また、0<q<1のとき
だから、
は広義積分である。
0<p<1のとき、0≦x≦1/2とすると、1/2≦1−x≦1である。
q>1のとき、
0<q<1のとき
である。
以上のことより、q>1、0<q<1のいずれであろうと、
であり、
0<p<1のとき、t>0とすると、
だから、広義積分
は絶対収束する。
次に
を考える。
0<q<1とする。
1/2≦x≦1とする。
p>1のとき、0<p<1のとき
いずれにせよ
したがって
0<t<1とすると
したがって、広義積分
は絶対収束する。
以上のことより、p>0、q>0のとき
は絶対収束し、
は絶対収束する。
(証明終了)
なお、上の証明では次の定理を使っている。
定理2(比較判定法)
関数f(x)、g(x)は(a,b]で不定積分をもち、であるとする。
このとき広義積分が収束すれば、広義積分も収束する。
区間[a,b)、[a,∞)、(−∞,b]についても同様である。ベータ関数の定義
p>0、q>0に対してで定義されるB(p,q)をベータ関数という。
さて、x=sin²θとおくと、
だから
また、
とおくと、
したがって、
とベータ関数B(p,q)を定義することができる。
問 次の広義積分の値を求めよ。
【解】
だから、(2)式にp=1/2、q=1/2を代入すると、
(解答終了)
この広義積分の値を求められますか? ガンマ関数、ベータ関数の序論にかえて [ネコ騙し数学]
問題 次の広義積分の値を求めよ。
【解】
x=sin²θとおき、x=0のときθ=0、x=1のときθ=π/2とすると、
そして、
となるから、
(解答終了)
これは、広義積分だから、実際はもう少し真面目に計算しないといけないけれど、まぁ、こうなる。
――うるさいことを言うやつの口封じをするために、x→0+0のときθ=0+0、x→1−0ときθ=π/2−0――x=sin²θという変数変換を思いつけば簡単に解けるけれど、しかし、この変換を自力で思いつける奴はそうそういないだろう。
ベータ関数やガンマ関数を知っている人は、
と、この広義積分の値を求めるかもしれない。
そして、x=sin²θという変換は、このベータ関数の中で出てくるものだ(ベータ関数の三角関数表示)。
これまで長々と広義積分の話をしてきたのは、このガンマ関数Γ(s)とベータ関数B(p,q)という新しい関数導入の下準備。
今日から、こういった話になるので、少し面白くなると思うにゃ。そして、取ってつけたようなラプラス変換の話までする予定です。
なお、
上の広義積分は次のように値を求めることもできる。
上の計算では
という積分の公式を使っている。
こちらも、広義積分なので、もう少し細かい議論が必要になるが・・・
やるからには、ちゃんとやるケロ!!
第6回 ガンマ関数入門 [ネコ騙し数学]
第6回 ガンマ関数入門
s>0に対して
は収束し、(1)式で定義される関数Γ(s)をガンマ関数という。
ガンマ関数の性質を調べることにする。
まず、s=1のときのガンマ関数の値を求めることにする。
また、
を部分積分すると、
したがって、s>0のとき
である。
特に、sが自然数nであるとき、(2)式から
このことから、ガンマ関数は階乗を拡張したものと考えることができる。
もし
と微分と積分の順序の交換が許されるのであれば(証明はしないが、事実、許される)、
だから、
となり、同様にn次導関数は
である。
特にn=2のとき、
となり、ガンマ関数Γ(s)は(下に)凸である。
さらに、(1)の変数をx=t²と変換すると、
よって
s=1/2のとき
である。
(2)式より
したがって、
そして、ここで
と定義すると、
となる。
2重階乗を使わず(4)式を書き換えると、
実関数としてのガンマ関数Γ(s)は、s>0で定義されるが、(2)式を
と書き換え、s=−1/2を代入すると、
と、ガンマ関数をs<0に拡張が可能である。
参考までに、s<0まで解析接続によって拡張されたガンマ関数Γ(s)とその逆数1/Γ(s)のグラフを以下に示す。
なお、下のグラフでは横軸にxをとっている。
第5回 広義積分の問題 [ネコ騙し数学]
第5回 広義積分の問題
問題1 次の広義積分の値を求めよ。
【解】(1) 0<t<1とすると
(2) 3<t<5とすると
(解答終了)
問題2 次の広義積分の収束、発散を判定せよ。
【解】
(1) (0,1]で。
広義積分は発散するので、広義積分も発散する。
(2)
だから、
とすると、
g(x)は[0,1]で連続だから積分可能で、は収束する。
(3) 0<t<π/2とすると
よって、広義積分は発散する。
(4) t>2とすると
よって、発散する。
(5) t>2とすると
(6) x≧π/2で
は収束するので、も収束する。
(7)
0<x≦1のとき
だから、
とおくと、(0,1]で
[0,1]でg(x)は連続で積分可能だから、広義積分は収束する。
また、x≧1で
広義積分は収束するので、は収束する。
したがって、広義積分は収束する。
(解答終了)第4回 広義積分の収束判定法2 [ネコ騙し数学]
第4回 広義積分の収束判定法2
定理4 区間(a,b]でf(x)は連続で、
(1) 0<λ<1であるλについてが有界ならば、広義積分は(絶対)収束する。(2) 0<λ<1であるλについてが有界ならば、広義積分は収束する。
【証明】(1) 仮定によってaの近傍a<x<a+δ(δ>0)で
となる正数Mが存在する。
したがって、
0<λ<1だから、
と収束し、定理2、定理3により広義積分は収束する。
(2)は略。
(証明終了)定理5 区間[a,∞)においてf(x)は連続で、λ>1であるλに関してが有界ならば広義積分は収束する。
【証明】仮定より、十分大きなxに関して
となる正の定数Mが存在する。
よって、t>aとすると
λ>1のとき
と収束するので、広義積分は収束する。
(証明終了)
問題 次の問いに答えよ。
(1) 0<s<1のとき広義積分が収束することを示せ。
(2) 0<s<1のとき広義積分が収束することを示せ。
【解】
とする。
(1) 0<x≦1において
よって、定理4より広義積分は収束する。
(2) x≧1で
また、x≧1では有界だからも有界。
したがって、定理5より広義積分は収束する。
(解答終了)以上のことから、0<s<1のとき
は収束する。
無理やり定理4、定理5を使っている(^^ゞ
(1)は、次のように解くのがいいのでしょう。
【(1)の別解】
とおくと。
0<s<1のとき、x>0でf(x)は単調減少。したがって、0<x≦1のとき
また、0<s<1より−1<s-1<0だから広義積分は収束する。
よって、広義積分は収束する。
(別解終了)ここからは、s>0についての一般論。
s=1のときだから
s>1のとき、f(x)は閉区間[0,1]で連続だからは通常の積分でこの値は存在する。
したがって、の収束を議論すればよい。
をマクローリン展開すると
したがって、x≧0では
というこで、t>1とすると、s<nとなる正の整数nをとると、
n−s>0だから
したがって、広義積分は収束する。
以上のことから、s>0のとき
は収束する。
そして、これをガンマ関数という。
すこし議論が錯綜しておりますが(^^ゞ
第3回 広義積分の収束判定法 [ネコ騙し数学]
第3回 広義積分の収束判定法
広義積分の収束判定に関する定理を幾つか紹介することにする。
定理1
関数fを半開区間(a,b](あるいは[a,b))で連続とする。が収束するための必要十分条件は、任意の正数εに対して正数δが存在が存在し、a<p<q<a+δ(またはb−δ<p<q<b)に対して
が成り立つことである。
定理2(比較判定法)
関数f(x)、g(x)は(a,b]で不定積分をもち、であるとする。
このとき広義積分が収束すれば、広義積分も収束する。
区間[a,b)、[a,∞)、(−∞,b]についても同様である。【証明】
a<t<bとする。とすると、広義積分が収束するので、
であり、は収束する。
したがって、定理1より任意のε>0に対して、あるδ>0が存在してよって、
となり、、つまり、広義積分は収束する。
[a,b)、[a,∞)、(−∞,b]についても同様である。(証明終了)
このような関数g(x)を優関数という。
蛇足ながら、条件|f(x)|≦g(x)(a<x≦b)より、a<x≦bにおいてg(x)≧0だから
となり、
である。
定理3
関数f(x)が(a,b]で不定積分をもち、広義積分が収束すれば広義積分も収束する。
[a,b)、[a,∞)、(−∞,b]についても同様である。【略証】
広義積分は収束するので、任意のε>0に対して、あるδが存在し、
よって、
[a,b)、[a,∞)、(−∞,b]の証明についても同様。
(略証終了)
問1 広義積分
が絶対収束することを示せ。
【解】x≧0のとき
である。
また、は、t>0とすると
となり、広義積分は収束する。
したがって、定理2より広義積分は収束し、広義積分は絶対収束する。
(解答終了)
問2 広義積分
が収束することを示せ。
【解】と考える。
右辺第1項は[0,1]においてが連続なので通常の積分なので存在する。したがって、右辺第2項の広義積分
の収束判定をすればよい。
x≧1のとき
α=3/2>1だから補題より広義積分は収束する。
したがって、定理2よりは収束する。
よって、広義積分は収束する。
(解答終了)
問3 広義積分
が条件収束することを示せ。
【解】
と分けて考えることにする。
右辺第1項の
については、(0,π/2]で
であり、
とおけば、定理2より広義積分
は収束する。
したがって、広義積分
が収束することを示せばよい。
そこで、π/2<tとすると
ここで、
また、
であり、
と収束するので、定理2より広義積分
も収束する。
したがって、広義積分は収束する。
(解答終了)第2回 広義積分の計算例 [ネコ騙し数学]
第2回 広義積分の計算例
問題1 次の広義積分の値を求めよ。
【解】
(1) t>0とするとしたがって、
(2) t>eとすると
ロピタルの定理より
よって、
(3) t>1とすると
ここで、
だから、
(解答終了)
なお、
は、−x²=sとおき、置換積分を用いると
問題2 次の広義積分は収束するか。収束するならば、その値を求めよ。
【解(?)】
(解答?終了)
と、解いてはいけない。
何故ならば、x=0では連続でなく、公式
を使えないからだ。
(1)は、−1<s<0、0<t<1とすると
の意味であり、
で、ともに発散し有限の値をもたないのでは発散する。
また、0<t<1としてと計算することもできないので注意!!
何故だろうか?
問題3 次の広義積分は収束するか。収束するならば、値を求めよ。
【解】
(1) α=1のとき
0<t<1とすると、だから
α≠1のとき
0<t<1のとき
ゆえに、
(2) α≠1のとき
(3)
と考える。
s>0とすると
t>0とすると
したがって、
(解答終了)
問題3の(1)、(2)の結果をまとめると、次のようになる。
定理 αを実数とする。
(1) 広義積分が収束する必要十分な条件はα<1である。
(2) 広義積分が収束する必要十分な条件はα>1である。