関数の連続の定義 [ネコ騙し数学]
関数の連続の定義
関数の連続の定義は、
定義Ⅰ関数f(x)の定義域Iに属する任意のaに対してであるとき、関数f(x)はx=aで連続であるという。
定義Ⅰは、高校で習い、それ以降も使い続けている連続の定義だからおなじみだと思う。
ε-δ論法ならば、次のようになる。
定義Ⅱ
fを区間Iで定義された関数、a∈Iとする。任意の正数ε>0に対して、
となる正数δ>0が存在するとき、関数fはx=aで連続であるという。
定義Ⅱは、難解(?)で有名な、悪名高いε-δ論法を用いた関数の連続の定義で、高校時代に数学が得意中の得意であった学生の圧倒的大多数がここでドロップアウトしてしまう。そして、多数の(大学の)数学嫌いを排出してしまう(^^)
このためだろうか、解析学の名著(?)とされる高木貞治の『解析概論』は、基本的に、この悪名高いε-δ論法を採用しておらず、(1)と(2)の中間的な手法が使われているようだ。この2つの定義の他に、収束する数列(点列)を用いた関数の連続の定義が存在する。
定義Ⅲ
fを区間Iで定義された関数、a∈Iとする。aに収束するすべての点列に対して
であるとき、関数fはx=aで連続であるという。
(大学の)微分積分、解析などの教科書のなかには、(2)の定義はあまりに難解(?)ということで、定義Ⅲを関数の連続として採用しているものもある。
定義Ⅱと定義Ⅲは同値の命題なので、どちらを関数の連続の定義として採用しても構わない。【証明】
定義Ⅱ⇒定義Ⅲ(2)から定まるδ>0をとると、関数fはx=aで連続なので、任意の正数ε>0に対して
点列はaに収束するので、任意の正数ε’>0に対して
となる正の整数Nが存在する。
ε'は任意の正数だからε'=δとおくと
となるNが存在し、①と②より
定義Ⅲ⇒定義Ⅱ
(2)を否定するとあるε>0があって、任意のδ>0に対して、
となるxが存在する、である。
このとき、δ=1/nとすると
となるが存在する。
このようにして得られたを一つ選び、新たにというを作ると、この数列は
になるけれど、
である。
よって、証明された。
(証明終)定義Ⅲ⇒定義Ⅱの証明では、対偶法を使っているのでわかりにくいと思うけれど・・・。
ちなみに、対偶法は、「p⇒q」という命題と「¬q⇒¬p」という命題が同値であることを利用して、「p⇒q」という命題を証明する代わりに「¬q⇒¬p」という命題を証明する証明法のことである。
ε-δ論法の代わりに、定義Ⅲでは数列の極限でε-δ論法の仲間であるε-N論法を使っているので、定義Ⅱ、定義Ⅲの分かりにくさは五十歩百歩で変わらないと思うのだが、定義Ⅲの方が学生への負担は少ないと言われているようだ。
問題
関数fをRで連続とする。∀x,∀y∈Rに対してであるとき、fはf(x)=f(1)xで表されることを証明せよ。
【証明】
したがって、任意のxについて
また、
同様に
したがって、n≠0の整数nに対して
よって、すべてのmとn以外のすべての整数に対して
x=m/nとおけば
ここで終わりにしてはいけない。
なぜならば、x=m/nの形で表される点、つまり、有理数の点でのみ、f(x)=f(1)xになることを示しただけで、無理数の点でもf(x)=f(1)xが成立することを証明していない。それに、問題中にある実数Rの全域でfが連続という条件をまだ使っていない!!
ここで、今回、紹介した定義Ⅲが威力を発揮する!!
無理数xに収束する有理数の数列でとなるものを選ぶと、fが連続であることより
よって、無理数の点xに対しても
である。
よって、証明された。
(証明終)ネムネコは、
定義Ⅲを用いたこの証明は、奥歯に物が挟まっているようで、大嫌いだ!!オイラーの連続の方程式、運動方程式、そして、ベルヌーイの定理 [ネコ騙し数学]
オイラーの連続の方程式、運動方程式、そして、ベルヌーイの定理
§1 オイラーの連続方程式と運動方程式
流体の密度をρ、流体の速度場をvとし、空間内の任意の閉曲面Sとこの閉曲面で囲まれた領域Vについて考える。
また、速度ベクトルvのx成分、y成分、z成分を、u、v、wとする。この閉曲面から単位時間あたりに流出する流体の質量は、閉曲面の単位法線ベクトルをnとすれば
である。
これは、閉曲面で囲まれた質量の減少分
と等しいので、
上式の左辺第1項については微分と積分の順序の交換が可能であると仮定すると
そして、左辺第2項にガウスの発散定理を用いると
となり、(1)式より
となる。
任意の閉曲面で囲まれた領域で(1’)が成立するので(2)式をデカルト直交座標で書き換えると
となる。
この(2)、(3)式をオイラーの連続方程式、連続の式という。この式の意味するところは質量保存の法則である。特に、密度が一定の場合
である。
また
とおくと、(2)は
となる。
ρを空間の電荷密度、jを電流密度ベクトルとすれば、そのまま、電磁気学の電荷の保存則になる。
次に、閉曲面Sに囲まれた領域の運動方程式を考える。
閉曲面の表面では圧力pのみが働き、この他に閉曲面Sで囲まれた領域に単位質量あたりにKという力が作用しているとすると、ニュートンの運動方程式は
これが任意の閉曲面で囲まれた領域で成立するので、
である。
というベクトル関数であるとすると、
となり、Kのx成分、y成分、z成分をそれぞれX、Y、Zとすると、運動方程式は
となる。
(5)式をオイラーの運動方程式という。(※) これはデカルト直交座標でしか成立しない、あくまで形式的な表現!!
そして、ここで使っているベクトル解析(?)は、いわゆるベクトル解析とされるものの範囲を逸脱しており、もう既にテンソルに片足を突っ込んでいる!!また、このオイラーの運動方程式の導出には多大の胡散臭さがある。
これは数学の話ではなく、物理の話だから胡散臭いのはしょうがない、と諦めてもらうことにする(^^ゞ
§2 ベルヌーイの定理
とすると、オイラーの運動方程式(5)は、
とあらわすことができる。
このままでは、(6)式はデカルト直交座標でしか成立しない。そこで、
と書き換えると、
この(7)式は円柱座標や極座標などの曲線座標でも成立する。
渦なし場の場合
縮まない流体(密度ρが一定)であるとし、渦なし、つまり、rot v=0の場合を考える。このとき、速度ポテンシャルが存在し
である。
これを(7)式に代入すると、
となり、Kにもポテンシャルが存在することになる。
そこで、
とすると、
となり、これを積分すると
となる。ここで、F(t)は任意の関数である。
これを拡張されたベルヌーイの定理という。
保存力場の定常な流れの場合
縮まない流体とする。この場合
だから、運動方程式は
v×rot vはvに直角だから、流線の方向の成分を取ると
ここで、sは流線に沿ってはかった距離である。
これを流線に沿って積分すると、
特に、外力として重力だけが働くとき、
だから
この(9)式をベルヌーイの定理という。
一様流中に置かれた円柱まわりの流れとダランベールのパラドクス(背理) [ネコ騙し数学]
一様流中に置かれた円柱まわりの流れとダランベールのパラドクス(背理)
で与えられる流れの、|z|=aのまわりの流れを考える。
|z|=aだから、これは原点を中心とする半径aの円で、この円周上の点は
とあらわすことができる。
したがって、この円周上における複素速度ポテンシャルは
であり、円周方向の速度は
になる。
半径aの円周上の流れ関数はΨ=0で一定だから、流線はこの円周と一致しており、円周方向の速度しか持っていない。
念のために、とおくと
これにr=aを代入すると
となり、同じ結果が得られた。
ここで、は、それぞれ、半径方向の速度、(反時計回りの)円周方向の速度である。
ここからは、流体力学の知識を借りる。
気体のように密度ρの小さい流体は位置エネルギーを無視することができるので、ベルヌーイの式はとなる。
ここで、pは半径aの円(柱)上の圧力、は無限遠点での圧力。
よって、
円のx方向の圧力はpcosθだから、y方向の圧力はpsinθだから、この円にかかっているx方向、y方向の力、
となり、この円(柱)には力が働かない!!
つまり、速度が一様な流れの中に置かれた円柱の空気抵抗は0という、それはそれは”有り難い”結果が得られる。
これを、ダランベールの背理(パラドクス)という。
円柱だけではなく、球でも同じ結果が得られる。流体力学が、まったく役立たずで、かつて、(「数)学者のお遊び」と呼ばれたのも道理だにゃ(^^)
第60回 複素数関数の2次元流れへの応用 [ネコ騙し数学]
第60回 複素数関数の2次元流れへの応用
平面上の点(x,y)における流体の速度ベクトル
とし、流体の密度をρ、時刻をtとすると
が成立する。
密度ρが一定のとき、連続の式はとなる。
さらに、流れが渦なしの条件
を満たすとき、前回示したように
である速度ポテンシャルφが存在する。
ここで、
とおき、
となる流れ関数Ψを導入すると、これはコーシー・リーマンの関係になるので、複素関数f(z)は正則で、微分可能であるなる。
つまり、
そして、このように定義された複素関数f(z)を複素速度ポテンシャルという。
Ψ=一定の曲線の勾配(Ψ=一定の曲線の法線ベクトル)は
だから、速度ベクトルVとの内積を取ると
となり、Ψ=一定の曲線は速度ベクトルと平行である。
つまり、Ψ=一定の曲線は流線である。例1 一様な流れ
複素速度ポテンシャルがの場合、
だから、φ=Ux、Ψ=Uyとなる。
また、
だから、u=U、v=0となり、x軸に平行な速度一定の流れということになる。
例2
複素速度ポテンシャルがの場合は、
したがって、φ=x²−y²、Ψ=2xy。
そして、複素速度は
だから、速度のx成分u=2x、y成分v=−2yとなる。
したがって、流線の方程式は
ということになる。
――流れ関数Ψ=2xy=一定の曲線と上で求めた流線の方程式は一致していることがわかる!!――
流線の接線は流れの速度の方向と同じなので、この流れはx軸とy軸を壁とする流れを表している。
例3
とおくと
また、
また、
だから、この流れは原点と点zを結ぶ(半)直線と平行で、流線は原点を通る放射線群である。
速度ベクトルの大きさは
だから、速さは原点からの距離に反比例する。
また、原点を中心とする半径Rの円Cに流れ込み、そして、流出してゆく量、湧出量Qは、
で、半径に関係なく一定である。
m>0のときは吹き出し、m<0のときは吸い込みである。
とおくと
流線(流れ関数Ψ=一定)上の点をPとすれば、∠OPa=θ₁−θ₂=一定だから、流線は原点Oと点aを通る円弧となる。
また、等ポテンシャル線はr₁/r₂が一定だからアポロニウスの円である。また、
だから、点aに強さmの吹き出し、原点に強さmの吸い込みがある場合と考えることもできる。
多項式による補間 [ネコ騙し数学]
多項式による補間
§1 補間
2つの点の間に位置する点、すなわち、におけるf(x)の値を求めることを補間するという。2つの点の外の点におけるf(x)の値を求めることを補外するという。
もちろん、例えば、f(x)=x²+3x+2のように関数が式の形で与えられ、しかも、この計算が簡単にできる場合、補間や補外をする必要はなく、f(x)=x²+3x+2を用いて計算すればよい。しかし、f(x)=sinxならば、電卓などを使わない場合、値が既知の点をもとにテーラー展開などをして値を求めざるを得ない。
また、複数の点、たとえば、の値は与えられているけれど、y=f(x)の関数が与えられていないことも多く、何らかの手段で既知でない点の値を求めざるを得ない。
このような時に、補間や補外といった手法が使われる。補間や補外には、テーラー級数がよく用いられる。すなわち、
である。
と書くのは面倒なので、と書くことにすると、
これを2次の項、すなわち、で打ち切ると、
に前進差分を
を用いると、
になる。
ここで、
とおくと、(2)は
となる。
この(3)を1次補間公式という。
なにか難しいことを書いているように思うかもしれないが、(3)は、における値f(x)を2点を通る直線(線分)で近似したものに過ぎない。
(1)を3次の項で打ち切るときには、
として、これを(1)に代入すると、
という2次補間公式が得られる。
例1 3点(0,1)、(1,−1),(2,3)があるとする。
とすると、
この結果を(1)に代入すると、
という補間曲線が得られる。
そして、これが2次補間によって得られる曲線である。
もちろん、
として、f(0)=1、f(1)=−1、f(2)=3としてえられる次の連立方程式を解いてもよい。
この連立方程式の解は(a,b,c)=(3,−5,1)となり、同じ結果が得られる。
§2 ラグランジュ補間
次のn次の多項式を考える。
この多項式は以外のすべての点
において0である。
そこで、
とおくと、多項式はにおいて1となり、それ以外ので0になる。
つまり、だから、
とおくと、このn次の多項式はn+1個の点
を通る多項式になる。
これがラグランジュ補間と呼ばれる方法である。
例2 3点(0,1)、(1,−1),(2,3)があるとする。
だから、
問
上の表の値をもとに、ラグランジュ多項式によってf(6)を補間せよ。
【解】
よって、
(解答終了)
これが人間向きの計算法かと言えば大いに疑問であるが、単純な繰り返し計算を得意とするコンピュータにとっては都合のいい計算法である。
以下にこのサンプルプログラム(C言語)を示す。
#include <stdio.h>
#include <math.h>
double f(double x) {
return sin(x); // f(x)=sin x [−π,π]
}
// ラグランジュ補間
double lagrange(double *x, double *y, int n, double t) {
double p,s;
int i,j;
s=0;
for (i = 0; i <= n; i++) {
p = 1.;
for (j=0;j<=n; j++) {
if (i != j) {
p = p*(t-x[j])/(x[i]-x[j]);
}
}
s = s+y[i]*p;
}
return s;
}
main() {
double x[10]={0.0};
double y[10]={0.0};
double t,h;
int i;
int n = 9; //n次式
double a, b;
b = 4.*atan(1); // 区間[a,b]のbの値πをセット
a = -4.*atan(1); // 区間[a,b]のaの値−πをセット
h = (b-a)/n; // [a,b]をn等分した幅
for (i = 0; i <= n; i++) { // i=0〜nの点の値をセット
t = a+i*h;
x[i]= t;
y[i] = f(t);
}
// 計算結果の出力
printf(" x lagrange sin x \n");
for (i=0; i <=100; i++) {
t=a+i*(b-a)/100;
printf("%f %f %f\n",t, lagrange(x,y,n,t), f(t));
}
}
f(x)=sinx(−π≦x≦π)を5次のラグランジュ補間で近似計算した値を以下に示す。この場合、よく近似できていることがわかる。
誤解がないように言っておきますが、与えられた点をすべて通る多項式を求めただけで、ラグランジュ補間などの(等間隔の)多項式補間が元の曲線を忠実に反映しているというわけではない。
という曲線があるとする。
これを[−1,1]で等間隔に5分割(点の数は6)、9分割(点の数は10)し、その値をもとに5次補間、9次補間すると右のような曲線が得られる。
点が多く、高次で補間するほうがよりもとの曲線を反映するように考えられるが、この関数の場合、高次にすればするほど、端点であるx=±1の近傍でもとの曲線との乖離が大きくなる現象、ルンゲ現象が発生する。
直線で結んだほうがこの曲線の挙動を正確に反映している。
ここで言いたいのは、データがn+1個あるからn次の多項式で近似するということは非常に危険な行為だということです。
n次のラグランジュ多項式で結べば確かにのすべての点を通る曲線を得られるけれど、時に、このルンゲ現象のようなことが発生することがある。
また、この曲線の極値はx=0のところにのみあるにもかかわらず、5次補間では極値をとる点がが3、9次補間では極値をとる点が7になるなどの問題も発生する。
だから、物理や化学などの実験で得られたデータなどのグラフは、絶対に高次のラグランジュ補間で結んではいけない。
実験データを高次のラグランジュ補間で結んだグラフを書き、それをレポートなどにのせて提出すると、必ず、実験担当の先生や指導教官からこっぴどく叱られる。「このデータを曲線で結んだ理論的根拠は何だ。説明しろ!!」と問い詰められるのが落ちである。第59回 2次元のベクトル場 [ネコ騙し数学]
第59回 2次元のベクトル場
成分(u,v)のベクトル関数Aが平面上の各点(x,y)に対応しているとする。
また、平面上の基本単位ベクトルをi、j、この平面に垂直な基本単位ベクトルをkとする。このとき、ベクトル場Aから次のスカラー場とベクトル場が定義される。
さらに、スカラー場φが与えられているとき、次のベクトル場が定義される。
問1 の発散と勾配を求めよ。
【解】ベクトル関数Aのx成分、y成分をそれぞれu、vとすると、
だから、
(解答終了)
問2 次の問いに答えよ。
(1) 次の等式が成立すことを示せ。(2) φ=x²+2xy+y²とするとき(1)の等式が成り立つことを確かめよ。
【解】
(1)
(2)
(解答終了)
点(x,y)の位置ベクトルをrであらわせば、平面上の曲線はパラメータtのベクトル関数r=r(t)で、その接線ベクトルは微分drで表される。すなわち
である。
かりに、ベクトル場内の、ある曲線上の任意の点における接線がベクトル場Aに平行であるとする。
このとき、が成立する。そして、⑤式によってその曲線が与えられる。
おそらく、何を書いてあるかわからないと思うので、ベクトル解析の故郷というべき流体力学を例に説明することにする。
ぱっと一本、曲線を引く。この曲線上のすべての点における接線(の方向ベクトル)が、運よく、たまたま、曲線上のすべての点で、その点における風向き、流れの向きと平行であるとき、この曲線を流線という。
流れの速度ベクトルの成分を(u,v)とすると、この曲線、流線の方程式は電磁気学の電場だとこの曲線は電気力線である。
恒等的にrot A=0が成立するベクトル場Aを非回転、渦なしという。
このとき、ベクトル場AはA=grad φとなるφをもつ。
何故ならば、閉曲線Cで囲まれた領域をDとすると、グリーンの定理(ストークスの定理)より
そして、曲線Cを右図のように分解すると
の値は道筋によらない。
そこで、
と定義すると、
となるからである。
A=grad φであるとき、φをAのポテンシャルという。φ=c(一定)の曲線を等ポテンシャル線(3次元ならば等ポテンシャル面、曲線)という。等ポテンシャル線φ=cをパラメータtで
であらわせば、これをtで微分すると
である。したがって、φの勾配grad φと等ポテンシャル線φ=cとは直交する。
何故ならば、
だから。
また、div A=0となるベクトル場を管状場という。
管状場でかつ渦なし場のとき、したがって、φは調和関数である。
ネムネコ、地球をぶん投げる!! 「ねこ騙し数学」の記事をご紹介 [ネコ騙し数学]
ネムネコ、地球をぶん投げる!!
思うところがあり、惑星の軌道計算をしてみた。
これがその計算結果。この計算結果を見て、「ただの円じゃないか」と文句をつけるに違いない。
その確信があるにゃ。しかしだね、これは次の連立微分方程式
を数値的に計算した計算結果。
ニュートンの万有引力と運動方程式をもとに、4次のルンゲ=クッタ法を用いて計算したものなんだケロよ。
舐めてもらっては困るにゃ。計算の条件は、μ=1とし、初期条件として、(x,y)=(0,1)、x方向の速度u=−1、y方向の速度v=0としてシミュレーションしたもの。
この条件では、遠心力と重力が釣り合っているので、図のように綺麗な円を描く。しかし、水平方向にu=−1.4にすると、楕円機動をえがく。
そして、u=−1.5にすると、太陽系から脱出してしまう。2度と戻ってくることはない。理論通りだにゃ。u²+v²>2を越すと、太陽の引力を振り切り太陽系を脱出できることまで正確に再現している。
この問題を解くだけための特化したプログラムで汎用性はないのだけれど、バタバタバタとプログラムを作り解かせてみたにゃ。
最初、「この程度の問題ならば、2次のルンゲ=クッタ法で十分解けるだろう」と考えて2次精度のルンゲ=クッタ法で最初のu=−1で計算してみたのだけれど、少しずつ運動エネルギーを失い、太陽へと徐々に落ちてゆくんだケロ(^^ゞ
これではいけないということで、これを4次精度のルンゲ=クッタ法に急遽変更。
上の図は円に見えるかもしれないけれど、回転するたびに微妙に円軌道からずれていて、そのため、線が太くなっている。計算に使用したプログラムを含めて、近日、公開するにゃ。
乞う、ご期待だにゃ。参考までに、x=0,y=1の地点からu=−cos45°、v=sin45°の速度で地球をぶん投げたときの軌道を以下に示す。
地球をぶん投げる速さで同じでも、投げ出す角度が水平――正確に言うと、半径に対して直角――じゃないと、このときは楕円軌道を描くんだケロよ。
こんな解法を思いつくものか!! [ネコ騙し数学]
こんな解法を思いつくものか!!
問題 AB=2ACかつBC=30(cm)である。△ABCの面積の最大値を求めよ。
【解】AB:AC=2:1であるから、∠Aとその外角の2等分線が辺BCまたはその延長と交わる点をそれぞれD、Eとする。
DE:DC=EB:EC=2:1またBC=30(cm)より、
ED=20(cm)BE=60(cm)
∴ DE=40(cm)∠DAE=∠Rであるから、Aは直径DEの円周上にあり、BCに垂直なこの半径をA₁とすれば、AがA₁にあるとき、△ABCの面積は最大で、最大値は300(cm²)である。
(解答終)何とも鮮やかな解答。
日常的に初等幾何学に接している人、あるいは、初等幾何を得意とする人ならばこうした解答を思ういつく人もいるのかもしれないけれど、しかし、
こんな解法をそうそう思いつくものか!!
ということで、別な方法で解いてみる。
【別解】
AC=xとすると、問題の条件AB=2ACよりAB=2x。三角不等式より
面積をS、∠BAC=θとおくと、
余弦定理より
S>0だから、Sが最大⇔S²が最大となるので、
したがって、S²はx²=500、つまり、x=√500(10<√500<30)のとき、最大となり、最大値は90000。
よって、Sはx=√500のとき最大で、最大値は300である。
(別解終了)
となるので、これを微分して極値を求めてもいいけれど、これは少し計算が面倒なので、直接Sの最大値を求めよりはS²の最大値を求めたほうが計算はずっと楽でしょう。
ちなみに、Sのグラフは右の図になる。
複素数を用いて極座標における速度、加速度を求める [ネコ騙し数学]
複素数を用いて極座標における速度、加速度を求める
平面上を移動する動点Pの時刻tにおける位置ベクトルをrとすると、速度ベクトルv、加速度ベクトルaは次式で与えられる。
平面の基本ベクトルを、また、時刻tにおける点Pの座標を(x,y)とすれば、
となるので、
である。
速度ベクトルと加速度ベクトルをとあらわせば、
から、
複素数zは、その実部をx、虚部をy、さらに虚数単位をi(i²=1)とすると、z=x+yiで表される。
そして、横軸に実軸、縦軸に虚軸をとると、複素数z=x+yiは右の図で示される。右図を見ると、複素数が平面ベクトルと同等のものであることがわかると思う。
この手法を用いれば、
と速度ベクトル、加速度ベクトルを簡潔に表現できる。
右図に示すように、原点Oと点zと結ぶ線分と実軸のなす角度(反時計回りを角度の正の向きとする)θ、原点Oと点zとの線分の長さを
で定義することにする。
そうすると、zの実軸の成分x、虚軸の成分yは
となる。
つまり、
となる(極形式)。
これをオイラーの関係
で書き換えると、
となる。
これをtで微分すると、
ここで、記号「・」はtによる微分
をあらわす。
は大きさが1でと方向が同じベクトルと考えることができる。
また、
ベクトル(cosθ,sinθ)とベクトル(−sinθ,cosθ)の内積を取ると
となり、は直交している。
そして、その大きさはで1。
も大きさが1だから、互いに直交する単位ベクトルを元にした座標系を作ることができる。
この新たな座標は何かといえば、対応規則からあきらかなように、極座標!!
そこで、
をもう一度見なおすと、速度ベクトルvの基本ベクトル方向の成分は、基本ベクトル方向の成分はということになる。
そして、速度ベクトルvをさらに微分すると、となることから、
以上のことをまとめると、
極座標における速度、加速度のr方向、θ方向の成分は
ここでは、が直交していることを内積を使って示したが、
だから、はを90°、π/2(rad)回転させたものであることはあきらか。