一般解は、本当に一般解か? [ネコ騙し数学]
一般解は、本当に一般解か?
次の微分方程式があるとする。
この微分方程式の一般解は
である。
そして、これに、たとえば、C=1など特別な値を与えたもの
などが特殊解である。
ここで、
と定義すると、C=1のときの特殊解は
と表せる。
ということで、微分方程式
を満たす関数y=φ(x,C)(Cはパラメータ)を一般解と呼べばいいのだろう。
さて、このように一般解を定義すると、すぐに大変な事態に遭遇する。
例えば、次の微分方程式を考える。
y≠0、1とすると、
ところで、計算をするまでもなくy=0、y=1は微分方程式(1)の解である。
一般解(2)にC=0を与えればy=1になるので、y=1はよい。
しかし、(2)のCにいかなる値を与えても、微分方程式(1)の解y=0にはならない。
したがって、
は、微分方程式をみたす関数のすべてを表せないので、(2)は(1)の一般解ではないことになってしまう。
大変だケロ。
この大問題を回避するために、y=0は、特異な解、特異解と呼ぶことにするにゃ。
これで危機的状況を回避できたかに見える。しかし、それほど、世の中は甘くない!!
の両辺に−1をかけると、
さてさて、(2)と(3)は同じだろうか。
C≠0のとき、右辺の分子分母をCで割れば、
になるので、1/Cを改めてCとおけば形の上では(2)と(3)は同じものに見える。
しかし、(2)と(3)では決定的な違いがある。
C=0とすると(3)はy=0あらわせけれど、Cにいかなる値を与えてもy=1にならないので、今度はy=1が特異解になってしまう。
ここで言いたのは、微分方程式の一般解というものは、実は、結構、胡散臭い代物だということ。
さらに、次の微分方程式について考えることにする。
この微分方程式はより深刻な問題を含んでいる。
y≠0とすると、
今度は、C=0とするとy=0になるので問題は発生しないように見える。
しかし、C₁、C₂を任意定数、ただし、C₁≠C₂とし、
とおくと、(6)は(4)の解であり、また、俗に(4)の一般解とされる(5)で表すことは出来ない。
それどころか、(5)は、C₁≠C₂の制限を取り払った(6)のC=C₁=C₂の特殊な解で、(6)がより一般的な解ということになるだろう。
(6)は1つの式ではないからダメというヒトの口封じに、ヘヴィサイド関数
を導入し、
とすればよいだろう。
先に、1階常微分方程式の一般解はy=φ(x,C)(Cはパラメータ)で表されると書いたけれど、微分方程式(4)の一般解(?)はパラメータC₁、C₂を用いてy=φ(x,C₁,C₂)の形になるのであった。
それでも、あなたは、微分方程式(4)の一般解は(5)だと言い張りますか?
この記事は、稲葉三男著「微積分の根底をさぐる」(現代数学社)の「一般解の怪奇」を参考にして書いたにゃ。
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