第23回 ニュートンの運動方程式を積分するにゃ [ネコ騙し数学]
第23回 ニュートンの運動方程式を積分する
すこし予定を変更し、微分・積分の発明者であるニュートンさんの作った運動方程式の話と、この運動方程式の積分の話をしますにゃ。
ニュートンの運動の法則とは
第一法則(慣性の法則)
すべての物体は、外力によって状態を変えられない限り、その静止の状態あるいは一直線上の一様な運動の状態を、そのまま続ける。
第二法則
運動の変化(加速度)は、及ぼされる力に比例し、その力が及ぼされる直線の方向に行われる。
第三法則(作用・反作用の法則)
作用と反作用は常に等しい。あるいは、2物体間に作用しあう力は常に大きさが等しく、方向は反対である。
の三つですにゃ。そして、第二法則のみを運動の法則ということもありますにゃ。
この第二法則を数式、微分方程式で書くと、
fは力、xは物体(質点)の位置、vは速度ですにゃ。
そして、
が加速を表わしますにゃ。
この⑨をニュートンの運動方程式といいますにゃ。
(近代)物理学はこの一本の方程式から始まった
と言っていいくらい、とっても大切な方程式ですにゃ。
現代的には少し修正されて、
となりますにゃ。ニュートンの運動方程式は、質量を一定(定数)としていますが、こう書き換えると、質量が運動中に変化する場合にも拡張できる。
―――アインシュタインの特殊相対性理論でも、これは成り立つ。というか、成り立つように理論が構築される―――
このpはデカルトが提唱した運動量と呼ばれるものですにゃ。
この式でf=0、つまり、外力が働いていない場合は、
となるので、運動量pは時間によらない一定の値、定数になる。
微分した奴が常に0に等しいものは定数になるということは、前にも話しましたね。定数を微分すりゃ~、ゼロになるし・・・。
で、これが、運動量保存の法則と呼ばれるものですにゃ。
これじゃ~、詰まんないので、もっと一般的な場合をやりますにゃ。⑨を時間tで積分すると、
なお、添え字1は力を受ける前、2は力を受けた後を表わしています。
ほいで、
右辺は運動量の変化を表わしていますので、
「運動量の変化は、その間に作用した力積に等しい」
となる。
これが拡張された運動量の保存則。
そして、
外力が物体に働いていたら、運動量は保存されない、ということがわかりますにゃ。
運動量は、ニュートンの運動方程式を時間tで積分したもの。
では、これを位置、座標軸の原点からの距離で積分したらどうなりますかにゃ。
ここで威力を発揮するのが、合成関数の微分の公式であり、置換積分ですにゃ。
vをxの関数で、xで微分可能であるとするならば、
となり、dx/dtは何かといえば、単位時間に物体ががどれだけ移動したかというものだから、これは(瞬間)速度vと呼ばれるもの。つまり、
ですにゃ。
だ・か・ら、
よって、①式の右辺は
となる。
で、①式の左辺は何を意味しているかというと、積分記号がついていますけれども、これは力×移動距離ですから、物理学で「仕事」と呼ばれるもの。
で、この式が何を意味しているかというと、
「運動エネルギーの変化は、物体が力から受け取った仕事に等しい」
ということですにゃ。
そして、これは力学的エネルギーの保存を表わしている。
デカルト大先生と天才ライプニッツの争い、
という争いは、かくして終結した。
この論争はハッキリ言って不毛な議論であった(笑)。
物理学の神さま、ニュートンは、バカな奴らとあざ笑っていたかもしれない(ニコニコ)。
高見の見物をしていたに違いない。
ただ、ニュートン様もこのことを知らなかった可能性がある。
こうしたことが明らかになったのは、ニュートンの死後のことで、ダランベールさんの業績とされております。
哲学のカント先生もこの件で何か述べているようですが、どうやら哲学のカント先生は頓珍漢なことを述べていらっしゃるらしい。
ダランベールは、フランス革命のちょっと前の人で、フランスの啓蒙思想に多大な影響を与えた数学者・物理学者、そして、哲学者(?)であります。
二物体間の衝突と運動量保存則
外力が働いていない場合、
二つの物体が衝突しても、衝突の前後で運動量の総和が変わらないのは、
運動方程式とニュートンの第三法則を使って、
みたいにやるりますにゃ。
m1、v1は物体1の質量と速度、m2、v2は物体2の質量と速度、
のことで、
ニュートンの第三法則からこの二つの力は向きが違うだけで、大きさは等しい。マイナスがついているのは、向きが違うことを表わしています。
②式を時間で積分してもいいけれど、②を見れば、定数だということがわかるから、いいでしょう。
外力が働いていた場合、②式は成立しないので、ここは注意が必要です。
要するに、
ニュートンの三つの運動法則は、デカルトやライプニッツの力学理論(?)を包括する体系である、ということですにゃ。
ニュートンさまが一番エライ!!
昨日まで知らなかったんですけれど、ニュートンが発見したとされる万有引力の法則は、ニュートンがプリンキピアに万有引力の法則として定式化する以前に、既に広く知られていたようですね。万有引力が、距離の逆2乗則であることは、知られていたようです。
これ↑ね。
円運動のとき、こうなることは既に広く知られていた。
ニュートンのライバルとされるフックは、「オレがニュートンにこのことを教えたんだ」と言っているようですが、このことは、結構知られていたようです。
また、
ニュートン自身、オレが万有引力を見つけたんだ、とは言っていない。
ただし、楕円軌道などの場合でも、これが成立することを証明したのはニュートンですが。
ケプラーとニュートンの結びつきは、やっぱ、強いね~。
このあたりの話は、結構、錯綜しています。
そして、私も、昨日まで騙されていた。
力学は、誰か一人の天才によって完成された、と考えるべきではなく、同時代の多くの英知の結集であると考えるべきなのでしょう。
そして、ニュートンはその大成者であり、完成者であった。
デカルト、ライプニッツの話がとあるサイトで盛り上がっているようなので、番外編として、これをちょっと書きました。
運動学や力学は、微分積分、そして、微分方程式の故郷ですから♪
《最初は むつかしい》 !!
by bragelone (2015-03-16 18:03)