第44回 この積分の値はいくつかにゃ? [ネコ騙し数学]
第44回 この積分の値は? 広義積分のイントロ
学生を、そして、大学の数学の先生を悩ますという伝説的な問題を・・・。
問題 次の積分を計算するケロ。
【解答1(?)】
ネムネコの原始関数の表にも、
と書いてあるじゃないか!!
x > 0 のとき ∫(1/x) dx = log(x) + C1
x < 0 のとき ∫(1/x) dx = log(-x) + C2
の簡略記号なんだにゃ。
学生さんのこの名(迷)解答を目にしたとき、
大学の数学の先生は、思わず、ため息をついてしまう、
という有名な解答であります。
さて、この計算は正しいか?
x=0のところで、被積分関数1/xは不連続だが・・・。
【解答2(?)】
f(x) = 1/xとすると、f( –x) = –1/x = –f(x) となり、奇関数。
奇関数の定積分の性質より、
ネムネコは、「奇関数ならば、こうなる」と言ったじゃないか!!
ねこ騙し数学の積分は、原則として、閉区間[a,b]で連続な関数しか扱わない、
とこれまでに何度も言ってきたにゃ。
【解答3(?)】
この図から,水色と黄色の部分は等しいのは明らか。
よって、
は明らか。
ケチがつくといけないので、
1 > ε > 0とすると
これは任意のεに成立する。
で、ε → 0にとれば、
になるはずだ。
なんなら、ε = 1/n (n = 1, 2, ・・・)にしてもいい。
したがって、この積分は0以外ありえない!!
色々と名解答(迷解答?)を考えられますが、さて、これは正しいか?
【解答3】なんかは、非常に説得力がありますね。
この積分に値があれば、0以外ないという感じがします(ポリポリ)。
でも、
となりますね~。
ε→0としても、⑨はゼロにならない。
n = 1ならば(つまり解答3ならば)確かに⑨はゼロになるけれど、n = 2 ならばゼロにならない。
⑨の極限は一つに定まらない。
だから、
なんて積分は存在しない。
そもそも、
なんて定積分は存在しない。
仮に
としたとして、
は、(+∞) – (+∞) になるんで、この引き算は認められない。
では、
【問題2】
さて、これはどうか?
この積分はこれまでに何度も出てきていますよね。
そして、この被積分関数
は、x = 1で不連続なのに、何食わぬ顔をして積分してきた。
この積分は、本来、、
こう書くべきものなんだケロ。
こういう積分を広義積分といいますにゃ。
次回は、広義積分について、ほんの少しだけやります。
この話をすこし真面目にやろうとすると、数列の極限(コーシーの収束条件)などの知識が必要になるんで、ほんのさわりだけ。
コメント 0