第26回 コーシーの積分定理の系 [ネコ騙し数学]
第26回 コーシーの積分定理の系
前回、領域D内で正則な関数f(z)が、領域の中にある閉曲線Cにそって積分するとその値が0になる、つまり、
というコーシーの積分定理をやりましたにゃ。
今回は、このコーシーの積分定理の系をやりますにゃ。この系を知るだけで、積分できる関数がずっと増えるというありがたいものだケロ。
系1
Cは領域Dの中にある閉曲線であり、はCの内部にあって、かつ互いに他の外部であるような閉曲線である。さらに、Cとで囲まれた領域およびその境界はDに含まれている。f(z)が領域Dで正則であるとき、次の等式が成り立つ。
この文章を読んでも何を書いているか分からないと思うので、図を加えるにゃ。
ここで、いちいち、と書くのは面倒なので、と略して書くことにするにゃ。
n=2の場合で証明するにゃ。
【証明】
図のように積分路kl、mn、pqを付け加えると、2つの閉曲線qgklrmntpqとkhqpunmslkと沿う積分にはコーシーの積分定理が適用されるから、
である。
よって、
kl、mn、pqに沿う積分は反対のものであるために互いに打ち消される。
「kl、・・・に沿う部分は反対のものであるために互いに打ち消される」を補足すると、
ということ
積分路には向きがあるので、こういうことになる。
では、この系を使って、次の問題を解いてみることにするにゃ。
問題
を正の方向に取るとき、
を求めよ。
【解】
であるから、f(z)はz=0、1を除き正則。
を、円の中心がOで半径、円の中心が1で半径とする。ただし、。
こうすると、は共有点を持たず、しかも、Cの内部にある。
よって、コーシーの定理の系1より、
それで、はの内部で正則、はの内部で正則だから、コーシーの積分定理より
となる。
そして、
なので、
となる。
中心α、半径rとする円周
とすると、
というのは、やったにゃ。
となるからだにゃ。
系2(積分路変形の原理)
f(z)は領域Dで正則とする。D内の2点をそれぞれ共通の始点と終点するD内の2つの曲線、があるとき、D内で連続的に変形(f(z)を正則な点のみを通じて連続変形)してと一致させることができるならば、
【証明】
のいずれとも以外に共有点を持たず、からに至る曲線を考える。
ただし、がともにDの内部に含まれるものとする。
ともに単一閉曲線だから、コーシーの積分定理より
となり、
同様に、
よって、
ちなみに、この記事の中の図で斜線部や網掛けの部分は、f(z)が正則かどうかは分からない領域だにゃ。
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