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第25回 コーシーの積分定理 [ネコ騙し数学]

第25回 コーシーの積分定理


複素積分でもっとも重要な定理の一つであるコーシーの積分定理をやりますにゃ。


まず、その前に、正則な関数の復習。


関数f(z)が定義される領域Dのすべての点で微分可能であるとき、f(z)Dで正則であるという。
このとき、

  
とすると、次のコーシー・リーマンの関係が成立する。

  


偏微分記号をいちいち書くのは面倒なので次のように略記することが多いにゃ。

  

そして、微分は

  
となる。

さて、いよいよ、コーシーの定理。

コーシーの積分定理
f(z)
は領域Dで正則であり、Cはその周のおよびその内部がDに包まれている閉曲線とする。このとき、

  
である。

証明は2つほどあるのだけれど、簡単な証明を紹介するにゃ。


【証明】
f'(z)
が連続であると仮定する。
積分の定義より、

  

Greenの定理より

  
f(z)
CおよびAで正則だから、コーシー・リーマンの関係

  
が成立し、①と②の値はゼロになる。

よって、

  
zu.jpg

Dは黒い曲線の内部で、Cは水色の部分の境界線。Aはその内部をあらわす。

Green
の定理は重積分、ベクトル解析のところで証明することにして、今は天下り的にこの定理を受け入れて欲しいにゃ。
少し前に、

  
は、「積分の道筋によらずに同じ値になる。これはf(z)=zが正則な関数だからだ」という話をしたにゃ。
これはこのコーシーの積分定理を使うと、説明ができるんだにゃ。
  m_path2.jpg

  siki25-1.png
という閉曲線Cを考える。
C
は原点を始点とし、C1を通って点(1,1)に達した後、C2を通って原点に戻る曲線。要するに、反時計まわりにC1C2を回る曲線。
そうすると、

コーシーの定理より、

  
となる。

よって、

  
だね。

それで、

  
のことだから、

複素平面上の原点Oを始点とし、z=1+i、すなわち(1,1)を終点とする曲線という積分の道筋によらずにその積分の値は同じ値になる。


今はf(z)=zの場合で話をしたけれど、
f(z)
が正則であるならば、⑨は任意の閉曲線で成り立つので、複素積分は、積分の道筋によらず、始点と終点の値のみで一意に決まるということになる。

ナイショの話なのだが、実は、上の証明だと、このC=C1+C2の場合、不具合が生じる。
この曲線は連続であるけれど、滑らかな曲線じゃないんだにゃ。原点と点(1,1)のところで、z'(t)が不連続になっている(^^
連続性だけを仮定することで証明はできるんだけれど、この証明は長いし、ちょっと面倒(^^)


これまで話してこなかったのですが、一応、閉曲線には回転の方向(?)がありまして、図のように半時計回りを+に取るんだケロ。

kyokusen.jpg


そして、閉曲線を次のように分解すると、

kyokusen2.jpg

C

となる。



では、問題を。

問題1 任意の閉曲線Cについて、


である。


【解】
は正則な関数なので、コーシーの積分定理より0になる。

問題2 任意の閉曲線で次のことが成り立つことを示せ。

  

【解】
 
は正則な関数なので、コーシーの積分定理より0になる。

なのですが、積分路がのとき

  

になるというのを前回やったけれど、

これは、z=αのところでf(z)が正則でないので、「コーシーの積分定理から・・・」とやってはいけないにゃ。


タグ:複素解析
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