第9回 微積分の基本定理など [ネコ騙し数学]
第9回 微積分の基本定理など
定理12
関数f(x)が区間I上で連続であるとする。このとき、I上の関数F(x)に対して(1) F(x)がf(x)の不定積分である
(2) F(x)がf(x)の原始関数であるは同値である。
【証明】(1)⇒(2)
F(x)をf(x)の不定積分とすると、したがって、
f(x)はIで連続だから、積分の平均値の定理より
となるθが存在する。
したがって、
(2)⇒(1)
F(x)をf(x)の原始関数とすると、また、f(x)の不定積分
とすると、
よって、
したがって、
となり、F(x)はf(x)の不定積分である。
(証明終)
以上のことより、次の定理が成り立つ。
定理13 (微積分の基本定理)
f(x)が区間I上で連続とする。定点a∈Iと任意のx∈Iに対しとおくと、F(x)はIで微分可能であり、
である。
さらに、次の定理。
定理14
f(x)が区間I上で不定積分をもつならば、その不定積分はI上で連続である。【証明】
f(x)の不定積分をF(x)、a∈Iとすると、xがIの端点でないとき、x∈[x−δ,x+δ]⊂Iとなる正数δ>0を選ぶと、f(x)は[x−δ,x+δ]で有界だから、
となる正の定数Mが存在する。
そこで、0<h<δとすると、
−δ<h<0とすると
したがって、
となり、連続である。
xがIの端点であるときも同様。
(証明終)
定理15
f(x)を[a,b]であるとする。F(x)がf(x)の原始関数であれば、である。
【証明】
f(x)は[a,b]で連続でF(x)はf(x)の原始関数だから、定理12よりF(x)はf(x)の不定積分であり、と表せる。
よって、
(証明終)
そして、これで、高校の定積分の公式
に結びついた。
2017-03-26 12:00
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コメント(3)
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定理14にあるFは不定積分ではなく,原始関数が正しい用語の使い方です.
by ますます (2017-04-22 10:09)
不定積分とは原始関数全体の集合という意味で用いられ,関数ではありません.従って定理12も意味をなしていません.(不定積分を同値類の代表元をとる同型写像をよる関数との同一視は可能ですが…)
by ますます (2017-04-22 10:15)
コメントありがとうございます。
☆定理14にあるFは不定積分ではなく,原始関数が正しい用語の使い方です.
☆不定積分とは原始関数全体の集合という意味で用いられ,関数ではありません.従って定理12も意味をなしていません.
これらの指摘は知っています。
そして、知った上で、敢えて、今回、
第8回 原始関数と不定積分
http://nemuneko-gensokyou.blog.so-net.ne.jp/2017-03-25-10
で記した「原始関数」と「不定積分」の定義を採用しました。
扱う関数(被積分関数)が有界閉区間で連続な関数であれば、(積分)定数の違いを無視すれば、原始関数と不定積分は同一視することができます。
しかし、第8回で紹介している関数のように被積分関数が連続でない関数の場合、(リーマン)積分可能であるけれど、原始関数が存在しない場合があります。そして、この場合、原始関数に任意の積分定数を加えたもの(の集まり)を不定積分と定義するのは何かと都合が悪いように思います。
ですから、今回、第8回で提示した「原始関数」と「不定積分」の定義を採用したわけです。
このあたりの事情は、たとえば、
稲葉三男著 微積分の根底をさぐる 現代数学社
https://goo.gl/607GKk
の「14 不定積分」などに詳しく書いてあると思います。
『微積分の根底をさぐる』中では、
「関数f(x)に対して
F'(x)=f(x)
となるような関数F(x)をf(x)の原始関数または不定積分といい、記号
∫f(x)dx
で表す、と書いてある教科書が多いようである。」
などと書いてあります。
現に、このブログを書くにあたってよく利用している解析学の演習書は
「関数fに対し、導関数が等しい関数をfの原始関数という。原始関数を∫f(x)dxで表しfの不定積分という」
という原始関数、不定積分の採用しています。
また、個人的には、高校数学(微分積分)の延長線上で大学の微分積分、(実)解析学を捉えるならば、原始関数と不定積分の違いを明確にする必要があるのでしょうが、リーマン積分、定積分などをもとに原始関数や不定積分を構成する場合、この両者の違いを、それ程、うるさくいう必要はないのではないか、と考えております。
by nemurineko (2017-05-08 11:53)