第17回 正項級数の収束・発散の便利な判定法 [ネコ騙し数学]
第17回 正項級数の判定法
前回、比較判定法を紹介しましたが、万能ではないけれど、正項級数の便利な判定法を紹介しますにゃ。
定理 (コーシー・アダマールの判定法)
【証明】
(1)r < k < 1 のあるkをひとつとると、仮定よりある自然数mで
となるものが存在する。
よって
となり、0 < k < 1 よりは収束し、比較判定法よりは収束する。
ここで、
よって、
ね。
(2)は(1)の対偶だから証明は不要の気がするけれど、r > k > 1 のひとつをとると、仮定より
になるmが存在し、k > 1 のときが発散するので、比較判定法よりは発散するケロ。
ここは読むな!! 読むと呪われるにゃ!!
だ・け・ど、
「r < k < 1 のあるkをひとつとる」
というのを不思議に思わないケロか?
「なんで、そんなkを取れるといえるのか」と疑問に思わないケロか?
極限の定義より、任意の正の数εに対して
を満たすm が存在するにゃ。
で、たとえば、ε = (1 – r)/2 > 0 にとると、
だにゃ。
この(1+r)/2をk とすれば、
だから、r < k < 1 となり、かつ
となるケロ。
定理 (ダランベールの判定法)
【証明】
(1)r < k < 1 のk をひとつとる。仮定より、次の自然数m が存在する。
よって
となり、n > m のとき
(2)は省略。
ちょっと危ない書き方だけれど、
m を固定しているのでとも定数になり、総和記号Σの外に出すことができるにゃ。
として、コーシー・アダマールの判定法の議論と同じになるケロ。
で、
になるので、ダランベールの判定法はコーシー・アダマールの判定法に含まれるのだけれど、ダランベールの判定法の方が計算が楽なので、ダランベールの判定法が実際には良く使われるにゃ。
ここで、注意して欲しいのは、やの極限値r = 1 のとき、この方法から収束するかどうかは判定できないんだケロ。
たとえば、
の場合、
で発散。
でも、
の場合、
で収束。
だ・か・ら、
r = 1 のときは、ダランベールの判定法やコーシー・アダマールの判定法で級数の収束の判定は出来ないにゃ。
では、問題。
問題 次の級数は収束するケロか?
となるので、収束する。
(3)は、コーシー・アダマールの判定法を使うと、
よって、これも収束。
こういう風に、簡単に収束判定が出来てしまうケロ。
知っていると思うけれど、
n! = n(n-1)・・・2・1 (n ≠ 0)
0! = 1
のことね。
⑵は⑴の対偶とありますが、対偶ではありません。
r<1⇒収束
なので、対偶をとるならば
収束しない⇒1≦r
のはず。
by 一つだけ (2019-08-02 13:41)