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第17回 正項級数の収束・発散の便利な判定法 [ネコ騙し数学]

第17回 正項級数の判定法

 

前回、比較判定法を紹介しましたが、万能ではないけれど、正項級数の便利な判定法を紹介しますにゃ。

 

 

定理 (コーシー・アダマールの判定法)

正項級数第17回_htm_4e22bbe6.gifにおいて第17回_htm_58f9aa12.gifならば、つぎが成り立つ。

(1)0 ≦ r < 1 のとき、第17回_htm_4e22bbe6.gifは収束する。

(2)1 < r < ∞ のとき、第17回_htm_4e22bbe6.gifは発散する。

 

 

【証明】

(1)r < k < 1 のあるkをひとつとると、仮定よりある自然数m

第17回_htm_m26c03431.gif

となるものが存在する。

よって

第17回_htm_3344b125.gif

となり、0 < k < 1 より第17回_htm_482deba.gifは収束し、比較判定法より第17回_htm_4e22bbe6.gifは収束する。

 

ここで、

第17回_htm_28a45cc0.gif

よって、

第17回_htm_3d51a7a8.gif

ね。

 

 

(2)は(1)の対偶だから証明は不要の気がするけれど、r > k > 1 のひとつをとると、仮定より

第17回_htm_m1a28c6e9.gif

になるmが存在し、k > 1 のとき第17回_htm_482deba.gifが発散するので、比較判定法より第17回_htm_4e22bbe6.gifは発散するケロ。

 


ここは読むな!! 読むと呪われるにゃ!!

だ・け・ど、

r < k < 1 のあるkをひとつとる」

というのを不思議に思わないケロか?

「なんで、そんなkを取れるといえるのか」と疑問に思わないケロか?

極限の定義より、任意の正の数εに対して

第17回_htm_m20ca92aa.gif

を満たすが存在するにゃ。

第17回_htm_m6cb8aa0a.gif

で、たとえば、ε = (1 – r)/2  > 0 にとると、

第17回_htm_2d7324fe.gif

だにゃ。

この(1+r)/2とすれば、

第17回_htm_77662af6.gif

だから、r < k < 1 となり、かつ

第17回_htm_1574c59b.gif

となるケロ。

 


 

 

定理 (ダランベールの判定法)

正項級数第17回_htm_4e22bbe6.gifにおいて、第17回_htm_m258ce70f.gifのとき、次のことが成り立つ。

(1)0 ≦ r < 1 であるとき、第17回_htm_4e22bbe6.gifは収束する。

(2)1 < r < ∞ であるとき、第17回_htm_4e22bbe6.gifは発散する。


 

【証明】

(1)r < k < 1 をひとつとる。仮定より、次の自然数が存在する。
第17回_htm_79c3e913.gif

よって

第17回_htm_m1881b9dc.gif

となり、n > m のとき

第17回_htm_4dc4add.gif

級数第17回_htm_724f7ab9.gifは、0 < k < 1 より収束するので、第17回_htm_4e22bbe6.gifは収束する。

 

(2)は省略。

 

ちょっと危ない書き方だけれど、
を固定しているので第17回_htm_1aeefef9.gif第17回_htm_m64a00901.gifも定数になり、総和記号Σの外に出すことができるにゃ。

第17回_htm_m4b3ee0ce.gif

として、コーシー・アダマールの判定法の議論と同じになるケロ。

 

で、

第17回_htm_m61bc8f1f.gif

になるので、ダランベールの判定法はコーシー・アダマールの判定法に含まれるのだけれど、ダランベールの判定法の方が計算が楽なので、ダランベールの判定法が実際には良く使われるにゃ。



ここで、注意して欲しいのは、第17回_htm_m258ce70f.gif第17回_htm_58f9aa12.gifの極限値r = 1 のとき、この方法から収束するかどうかは判定できないんだケロ。

たとえば、

第17回_htm_784d8d93.gif

の場合、

第17回_htm_6d64ba8.gif

で発散。

でも、

第17回_htm_384f3dea.gif

の場合、

第17回_htm_3d3aed96.gif

で収束。

 

だ・か・ら、

r = 1 のときは、ダランベールの判定法やコーシー・アダマールの判定法で級数の収束の判定は出来ないにゃ。

 

 

では、問題。

 


問題 次の級数は収束するケロか?

第17回_htm_6f060a34.gif
【解】

(1)と(2)は、ダランベールの判定法を使うと、
第17回_htm_m17a5103d.gif

となるので、収束する。

(3)は、コーシー・アダマールの判定法を使うと、

第17回_htm_m343f347d.gif

よって、これも収束。

こういう風に、簡単に収束判定が出来てしまうケロ。

知っていると思うけれど、

n! = n(n-1)・・・2 (n ≠ 0)

0! = 1

のことね。


タグ:数列 級数 極限
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コメント 1

一つだけ

⑵は⑴の対偶とありますが、対偶ではありません。
r<1⇒収束
なので、対偶をとるならば
収束しない⇒1≦r
のはず。
by 一つだけ (2019-08-02 13:41) 

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