第1回 ベクトル [ネコ騙し数学]
第1回 ベクトル
今日からベクトルの微分積分をやるにゃ。その前に、(幾何学的な)ベクトルについて復習。
ベクトルの定義
空間の2点AとBを結ぶ線分にAからBに向かう矢印(向き)を付けたもの(有向線分)をベクトルと呼ぶ。AとBを通る直線の方向をベクトルの方向といい、線分ABの長さをベクトルの大きさという。
実数は、大きさを持つが、方向や向きを持たないのでスカラという。
ねこ騙し数学では、原則として、ベクトルを斜体の太字、a、bという記号であらわすことにするにゃ。
ベクトルaの大きさを|a|やaであらわす。そして、始点と終点がが同一の点で、大きさが0であるベクトルを零ベクトルといい、記号0であらわす。
aが始点A、終点Bの有向線分であるとき、Bを始点、Aを終点とする有向線分を−aであらわす。aが零ベクトルでなければ、aと−aは大きさと方向は同じであるけれど、向きは逆になる。
高校数学のベクトルの書き方にならうと、ととなるので、このことが直感的に分かるんじゃないか。
ベクトルの和と差
図のようにとするとき、線分OAと線分OBを2辺とする平行四辺形の対角線で定まる有向線分をaとbの和と呼び、a+bであらわす。
だから、と考えてもいいケロ。
ベクトルの差はa–b= a+(–b)と定義する。
a–a=a+(–a)=0である。
また、ベクトルの和について、交換法則と結合法則が成り立つ。
a+b=b+a
a+(b+c)=(a+b)+c≡a+b+c
スカラとベクトルの積
スカラαとベクトルaが与えられたとき、αとaの積であるベクトルαaを次のように定義する。
(1) α=0またはa=0のとき、αa=0とする。
(2) α>0ならば、大きさが|α||a|で方向と向きがaと同じベクトルをαa
(3) a<0ならば、大きさが|α||a|で方向がaと同じで向きがaと反対のベクトルをαaとする。
αaはaαとも書き、次のことが成り立つ。
1a=a
(–1)a=−a
α(βa)=(αβ)a≡αβ
(α+β)a=αa+βa
α(a+b)=αa+αb
大きさ1のベクトルを単位ベクトルという。
ベクトルAと同じ向きの単位ベクトルをaとし、AをベクトルAの大きさとするとき、
である。
空間に直角座標系(右手系)O-xyzを導入し、x、y、zの軸の正の向きをもつ単位ベクトルをそれぞれi、j、kとであらわし、これらを基本ベクトルという。
ベクトルaの始点を原点Oにおいたときの終点の座標がであるとき、のそれぞれをベクトルaのx成分、y成分、z成分といい、このとき、ベクトルaは
であらわされる。
で、cosα、cosβ、cosγはaの方向余弦で、それらをl、m、nとすれば、
である。
が成り立つ。
さらに、
である(※)。
成分を用いてベクトルの和、スカラとの積をあらわすことにする。
ベクトルとし、αをスカラとする。この時、ベクトルの等式a=bは、と同等である。
ベクトルの和は、
となり、a+bの成分は、である。
また、である。
原点OからPに向かって引かれたベクトルを原点Oに対する点Pの位置ベクトルという。Pの座標をx、y、zとすると、
で、点Pの座標は位置ベクトルの成分である。
また、点から点に向かうベクトルは
と考えると、がこうあらわされるのか、分かるんじゃないかな。
(※)
(オマケ)2次元の場合の成分の図
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