第20回 線積分 [ネコ騙し数学]
第20回 線積分
2点A、Bを結ぶ(滑らかな)曲線Cがあるとする。Cに沿って測った弧長をsとし、曲線Cの方程式を
として、s=a,bにそれぞれ点AとBが対応しているとする。
また、fを曲線C上で定義されたスカラー関数(スカラー場)とする。
この曲線Cをn個の孤に分割し、この分割をΔであらわす。各曲線の弧長をとし、の任意の点をとし、次の和をとる。
分割を限りなく小さくしてゆくとき、このI(Δ)が極限値Iを持つならば、この極限値Iをスカラー場fのCに沿っての線積分といい、
であらわす。
Cが閉曲線とき、特に
とあらわすことがある。
積分だから、α、βを定数、fとgをスカラー関数とすると、
が成り立つ。
また、曲線CをC₁、C₂に分解したとき、つまり、C=C₁+C₂としたとき、
Cの逆向きの曲線を曲線を−Cとすると
となる。
問題1 Cを(0,0,0)と(1,1,1)を結ぶ直線とするとき、次の値を求めよ。
【解】
曲線Cの方程式は
になる。
よって、
原点と点P(t,t,t)の距離sは
なので、
としてもよい。
向きのついた曲線C:r=r(t)とC上で定義されたベクトル関数(ベクトル場)Aが与えられているとする。さらに、Cの点Pにおける接線ベクトルをtとすると、A・tは曲線C上で定義されたスカラー関数(スカラー場)となるので、この曲線Cに沿っての線積分は
になり、これをベクトル場Aの向きのついた曲線Cに沿っての線積分という。
また、
という関係があるので、
となり、
となる。
これを成分で書き、
とすれば、
となる。
問題2 ベクトル関数を
とする。xy平面上で、原点Oから点P(0,1,1)にいたる放物線に沿ってのAの線積分の値を求めよ。
【解】
x=tとすると、この曲線(放物線)上で、yはy=x²=t²となり、Aは
となる。
また、よって、
【別解】
ベクトルではなく、成分で計算しても良い。
を使うならば、zに関しては0なので無視して、
になるので、
となる。
第19回 ベクトルの微分に関する諸公式 [ネコ騙し数学]
第19回 ベクトルの微分に関する諸公式
φ、ψをx、y、zのスカラー関数、A、Bをx、y、zのベクトル関数とする。
このとき、以下の公式が成立する。
(1) ∇(φψ)=(∇φ)ψ+φ(∇ψ)
(2) ∇・(φA)=(∇φ)・A+φ(∇A)
(3) ∇×(φA)=(∇φ)×A+φ(∇×A)
(4) ∇・(A×B)=B・(∇×A)–A・(∇×B)
(5) ∇×(A×B)=(B・∇)A–(A・∇)B+A(∇・B)–B(∇・A)
(6) ∇(A・B)=(B・∇)A+(A・∇)B+A×(∇×B)+B×(∇×A)
(7) ∇×(∇φ)=0
(8) ∇・(∇×A)=0
(9) ∇×(∇×A)=∇(∇・A)–(∇・∇)A
こういう公式があるということを書いただけです。
ここに出ている公式を証明するつもりはまったくありません。
ただし、(1)、(2)、(3)、(7)、(8)の公式については、これまでに証明してあります。
では、いつくか問題を。
問題1 u(x,y,z)、v(x,y,z)をスカラー関数とすれば、
∇・(∇u×∇v)=0
【解】 A=∇u、B=∇Bとすると、
(4)より
となる。
(7)より ∇×(∇u)=0
∇×(∇v)=0
∇・(A×B)=(∇u)・0–(∇v)・0=0
となる。
問題2 次のことを証明せよ。
(2)原点から点(x,y,z)にいたる距離rの関数をF(r)とすれば
【解】
公式の(1)より
となる。
右辺第2項は
となるので、
である。
(2)は
最後の
という式はこれまでに何度も出ている。
これを証明する最も楽な方法は、ベクトルの発散のところでやった、
よって、
だと思うけれど。
前にも言ったけれど、
は覚えておくと便利である。
問題3 点の位置ベクトルをrとするとき、ベクトル関数A(x,y,z)の全微分は
dA=(dr・∇)A
これは相手に気取られないようにさり気なくこう解くのがいい。
ここで、dr=(dx)i+(dy)j+(dz)k。
問題4 次の関係が成立することを証明せよ。
【解】
これは公式(6)
に対してA=Bを代入すると、
となる。
第18回 ベクトルの回転 [ネコ騙し数学]
第18回 ベクトルの回転
ベクトル関数A(x,y,z)が連続な偏導関数をもつとき、
を成分にもつベクトルをAの回転といい、
∇×Aまたはrot A
とかく。
したがって、
となり、行列式で書くと、
となる。
ずっと前にベクトルの外積というものをやった。互いに平行でないaとbを隣り合う2辺とする平行四辺形の面積ををもち、aとbに垂直なベクトルのことをベクトルaとbの外積といい、
になるという話をした。
で、ハミルトン演算子∇
をベクトルと考えれば、Aの回転∇×Aは∇とAの外積と見なすことができる。
また、∇とAの外積を次のように考えてもいい。
AとBをベクトル関数、mをスカラーの定数、φをスカラー関数とすると、次の関係が成立する。
∇×(A+B)=∇×A+∇×B
∇×(mA)=m∇×A
∇×(φA)=(∇φ)×A+φ(∇×A)
上の2つはほとんど明らかだからいいでしょう。ということで、最後の式だけを証明することにする。
問題1 次のことを証明せよ。
(1)原点に対する位置ベクトルをrとするとき、∇×r=0
(2)∇×(rr)=0。ただし、r=|r|。
【解】
(1)r=xi+yj+zkだから、
(2)
問題2 次のことを証明せよ。
(1)φ=φ(x,y,z)をスカラー関数とすれば、∇×(∇φ)=0
(2)a(x,y,z)をベクトル関数とすれば、∇・(∇×a)=0
【解】(1)
だから、∇×(∇φ)は
(2)
よって、∇・(∇×a)は
ベクトル場Aがベクトル関数aの回転であらわされるとき、すなわち
A=∇×a
であるとき、aをAのベクトルポテンシャルという。
問題2の(2)より、ベクトルポテンシャルを持っているベクトル場の発散は0である。
第17回 ベクトルの発散 [ネコ騙し数学]
第17回 ベクトルの発散
ベクトル関数をA(x,y,z)、Aの成分をとするとき、
をベクトルの発散といい、
div Aまたは∇・A
であらわす。
あくまで形式的な話ですが、ハミルトン演算子(ハミルトニアン)∇
であるから、ベクトルの発散は∇とAの内積
と考えることができる。
上の話はあくまで形式的な話だケロ。
AとBをベクトル関数、mを定数、φをスカラー関数とすると、次のことが成り立つ。
上の2つは明らかなので証明しなくてもいいように思いますが、
さらに、
で、一番下の式は、
になる。
だから。
例 rを原点に対する位置ベクトルとするとき、∇・r=3。
r=xi+yj+zkだから、
それで、
とすると、
になる。
また、∇をベクトルのように考え、∇・∇をその内積と考えれば、
となるので、
と考えることができる。
この
という演算子をラプラシアンといい、Δという記号であらわしたりする。
そして、という微分方程式をラブラス方程式といい、これを満たすφを調和関数という。
複素解析のところで、w=u(x,y)+iv(x,y)としたとき、wが正則であるならば、
であるというコーシー・リーマンの関係式をやったにゃ。
そして、uとvが連続な2次偏導関数をもつならば、になるという話をしたと思うにゃ。
覚えているケロか。
問題 rを原点に対する点の位置ベクトル、r(r>0)をその大きさとするとき、
を求めよ。
【解】これをxで偏微分すると、
同様に、
で、
同様に、
よって、
【別解】
公式
を使うならば、
で、
よって、
となる。
第16回 方向微分 [ネコ騙し数学]
第16回 方向微分
スカラー場f(r)と単位ベクトルuが与えられているとき、点における方向の微分係数(方向微分係数)を次のように定義する。
成分で書くと、これは
となる。
点Pを通り、方向ベクトルuと平行な直線を考える。
点Pからの距離sをもちいて直線の方程式をr=r(s)とあらわす。
そして、このu方向の方向微分を求めると
となる。
uは単位ベクトルなので、uと∇φの内積u・∇φは∇φのベクトルuへの正射影。
また、ベクトルuとベクトル∇φのなす角をθとすると、u・∇φ=|∇φ|cosθになる。このことから、φのu方向の方向微分係数であるu・∇φはθ=0の時に最大で、θ=−πの時に最小となる。
u・∇φの絶対値は、|u・∇φ|=|∇φ||cosθ|なので、θ=0とπのとき最大で、θ=π/2のときに最小になる。つまり、uと∇φが平行なとき最大で、垂直なとき最小になる。
で、∇φは曲面φ(x,y,z)=cの法線ベクトルであったから、uがφ(x,y,z)=cに垂直であるとき、|u・∇φ|が最大になるというわけ。
今は単位ベクトルuについての話だったけれど、これはさらに一般化されとしたとき、
となり、
という微分演算子を作ることができる。
そして、この微分演算子は、Uとハミルトン演算子∇の内積と考えられることができる。
ちなみに、ハミルトン演算子∇は
以上の議論はあくまで形式的なものです。
こういうのは、具体的な例をあげたほうがわかりやすいケロ。
f(x,y)=xyという関数があるとするにゃ。そして、u=(a,b)とし、A(x,y)とするにゃ。そうすると、A(x,y)におけるuの方向微分係数は
となる。
この微分係数は、aとbの方向によって値が変わる。
で、a=1、b=0とすれば、これはの値と一致する。
と言うか、この時は
だから、f(x,y)に対する偏微分の定義そのものになっている。
また、
だから、
となり、求めた方向微分がuと∇fの内積になっていることがわかる。
うまく説明できなかった。後日書き換えることにしょう。
第15回 スカラーの勾配のプチ演習 [ネコ騙し数学]
第15回 スカラーの勾配のプチ演習
原点に対する点P(x,y,z)の位置ベクトルr=xi+yj+zk、rをその大きさとすると
である。
と前置きをしたところで、問題を解くことにする。
問題1 原点に対する点の位置ベクトルをr、その大きさをr=|r|とするとき、次の値を求めよ。
【解】
φをスカラー関数とすると、スカラーの勾配の定義より、
(1)
同様に、
よって、
(2)
になるので、同様に
よって、
になる。
(2)の計算は、前回の問題の結果、つまり、
uがx,y,zの関数であるとき、uの関数をf(u)とすれば、
となることを使っても良い。
この場合、u=r、f(r)=1/rだから、
となる。
もちろん、
と計算できる人は、こう計算してもいい。
この(1)と(2)の結果、
は覚えておくと、後々、何かと便利。
特に物理をやる人は、下の式は覚えておいたほうがいい。
というのは、ニュートンの万有引力の法則は、ベクトルで書くと
電磁気のクーロンの法則は
となるからで、また、これらの式から重力や電気の力のポテンシャルを定義できることがわかるから。
ちなみに、ポテンシャルは、以下の通り。
ベクトル場Aがスカラー場φを用いて
A=−∇φ
とあらわせるとき、φをポテンシャルという。
さて、話をもとに戻して、次の問題。
問題2 スカラー関数u(x,y,z)、v(x,y,z)の関数をF(u,v)とする。次の式を証明せよ。
【解】
で、偏微分の公式から、
となるので、
となる。
また、u=u(x,y,z)、v=v(x,y,z)、w=w(x,y,z)でF(u,v,w)であれば、
となる。
∇u、∇v、∇wともに単位ベクトル(大きさ1のベクトル)ではないけれど、ベクトル。
であるとすれば、上の結果は
と形が似ていると思わないケロか。
第14回 スカラーの勾配 [ネコ騙し数学]
第14回 スカラーの勾配
スカラー場とベクトル場
空間の領域Dの各点Pに対し実数f(P)が対応しているとき、f(P)をDの上のスカラー場という。
空間の点は、位置ベクトルrまたは直角座標(x,y,z)であらわされるので、f(r)またはf(x,y,z)と書く。
同様に空間の領域Dの各点Pに対してベクトルa(P)が対応しているとき、a(P)をDの上のベクトル場といい、a(r)やa(x,y,z)などであらわす。
スカラー場fがx、y、zの関数として連続であるとき、fは連続であるといい、ベクトル場aの成分である3つのスカラー場が連続であるとき、aは連続であるという。
これまでと同様に、スカラー場fやベクトル場aは連続で、かつ、何度でも微分や偏微分が可能であることを前提として話をするにゃ、
スカラーの勾配
x、y、zのスカラー関数をφ(x,y,z)とする。x、y、zの偏微分係数
を成分とするベクトルをφ(x,y,z)の勾配といい、これを
と書く。
つまり、
とかく。
と書き、
とすれば、∇φはベクトル∇とスカラーφの積と考えることができる。
この∇をハミルトン演算子といい、ナブラと読む。微分演算子というやつです。
ベクトル場A(x,y,z)に対し、スカラー関数φ(x,y,z)があって
が成り立つとき、φをAのポテンシャルまたはスカラーポテンシャルといい、Aはポテンシャルを持っているという。この関係を成分で書けば、
となる。
次に曲面について考える。
cを定数とすれば、
φ(x,y,z)=c
は曲面である。この曲面上の点P(x,y,z)を通りこの曲面上にある曲線x=x(t)、y=y(t)、z=z(t)を考えれば、この曲線上に沿ってφはtの関数となり、φをtについて微分すれば、
点Pの位置ベクトルをrとすれば、上の式は
故に、曲面上の点Pを始点とするベクトル∇φは、Pを通る曲面上の任意の曲線の接線と垂直である。
よって、∇φは曲面φ(x,y,z)=cに垂直で、曲面の法線ベクトルである。
例 曲面φ(x,y,z)=c上の点Aにおける接平面の方程式は、接平面上の任意の点およびAの位置ベクトルをr、aとすれば、
r=(x,y,z)、とすれば、
となる。
たとえば、原点を中心とする半径rの球面
のA(a,b,c)における接平面の方程式は、次のように求めることができる。
だから、A(a,b,c)における∇φの値は
なので、
となる。
点A(a,b,c)は球面上の点なのでを満たさないといけないから、こうなるにゃ。
もっとも、この場合は、原点に始点として点Aに向かってひくベクトルを
とすると、これは点Aを通る接平面に垂直なので、
と簡単に求めることができる。
それで、このスカラーの勾配については、次のことが成り立つ。
φ=φ(x,y,z)とψ=ψ(x,y,z)をスカラー関数、mをスカラーの定数とすると、
が成り立つ。
順に、
次に
最後のは
で、
になるので、
となる。
問題 uがx、y、zの関数であるとき、uの関数をf(u)とすれば、
【解】
第13回 問題演習 [ネコ騙し数学]
第13回 問題演習
問題1 次の曲線の接線ベクトルと与えられた点での接線の方程式を求めよ。
【解】
曲線上の点Pの原点に対する位置ベクトルをrとし、その時のtの値をとすると、点Pの接線ベクトルは
になる。そして、接線のベクトル方程式は
になる。
これは、点A(a)を通りvに平行な直線のベクトル方程式が
p=a+tv
になるからだにゃ。
と説明したところで、問題を解くことにするにゃ。
(1)
点Pでの接線ベクトルは
となり、t=1の点Pの座標は(1,1,1)なので、
接線のベクトル方程式は
(x,y,z)=(1,1,1)+t(0,1,2)
となる。
(2)
t=1のとき、点P(2,0,1)だから
(x,y,z)=(2,0,1)+t(4,−1,−4)
となる。
問題2 次の曲線の長さを求めよ。
【解】
a≦t≦bの曲線の長さsは
だから、
問題3 次の曲線の曲率を求めよ。
【解】
y=f(x)の曲率をκとすると、
になる。
なので、
問題4 次の曲線の(単位)接線ベクトル、主法線ベクトル、従法線ベクトル、さらに曲率κと捩率τを求めよ。
【解】
問題2と曲線は同じなので、少し手抜きをして
単位接線ベクトルtは
また、
よって、主法線ベクトルnは
従法線ベクトルbは
これから、
となり、捩率κは
第12回 フルネ・セレの公式 [ネコ騙し数学]
第12回 フルネ・セレの公式
前回、曲線上の点Pの原点に対する位置ベクトルをrとし、さらに曲線の長さをsとすると、接線ベクトルは
となり、Pにおける主法線ベクトルnは
そして、従法線ベクトルはtとnの外積
b=t×n
で与えられ、
になり、
となる。
κは曲率、τは捩率。
前回、ここまで話をしたにゃ。
最後の式は証明しなかったので、証明するにゃ。
b・b=1なのでこれをsで微分すると
となり、bとは直交する。
さらに、t・b=0をsで微分すれば、
となる。
なので、第2項はκn・b=0である。よって、
となり、tとは垂直。
故に、 はbとtに垂直であり、nと同じ方向である。
それで、t、n、bの3つの単位ベクトルは右手系を構成するので、
n=b×t=−t×b
となる。
これをsで微分すると、
となる。
で、
の3つの公式を合せてフルネ・セレの公式と呼ぶ。
ちなみに、曲率κは
だにゃ。
こういう関係があるというだけの話だにゃ。
このフルネ・セレの公式は、この後の話に関係がない。この公式が登場することはない。
ベクトル解析は、物理と関係が深いので、ちょっと物理の話を。
例 速度と加速度の接線成分、法線成分
曲線上を運動する点Pの原点に対する位置ベクトルをr、曲線上の定点からPまでの曲線の長さをs、時間をτとするにゃ。
時間はtでもいいのだけれど、接線ベクトルtとの誤解を避けるためにここではτとするにゃ。捩率とは関係ないないので、この点だけは注意して欲しい。
Pの速度vは
で、速さv=|v|だから、
v=vt
になる。
で、これをもう一度時間τで微分すると
そして、フルネ・セレの公式の(1)より
となる。
この式の右辺第1項は加速度aの接線方向の成分、そして、第2項は垂直成分だにゃ。これをとすると、
になる。ここで、ρは曲率半径。
この曲線が原点を中心とする半径Rの円ならば、
となる。これに質点の質量mを掛けたものが遠心力と言われるもので、
が遠心力の大きさになる。
つい最近、人工衛星が打ち上げられたけれど、あれが地球の中心を原点とする円軌道を描いて宇宙空間を飛んでいるとすると、地球の引力=遠心力にならなければいけないので、
ここで、Gは重力定数、Mは地球の質量。
この速度vで飛んでいるということになる。
地球表面すれすれを飛ぶとすると、この値は秒速約7.9kmで、この速度のことを第一宇宙速度と呼ぶにゃ。
第11回 空間曲線 [ネコ騙し数学]
第11回 空間曲線
空間の点Pの描く空間曲線は
で与えられるが、これは原点Oを始点とする点Pの位置ベクトルが
と与えられることと同等である。
そして、接線ベクトルは
で与えられる。
さらに、この曲線Cが滑らかなとき、位置ベクトルr(a)からr(t)までの弧の長さs(t)は
となり、
となり
よって、
となる。
dsを線元素という。sはtの関数で、逆にtもsの関数と考えられるので、曲線は曲線の長さを用いて
r=r(s)とあらわすことが可能。
は曲線に接し、sの増加する方向に向かうベクトルである。
何故ならば、
で、ベクトルtの向きは接線ベクトルdr/dtと同じだから。
sとs+Δsに対応する曲線上の点をP、Qとし、とすれば
だから、tは単位接線ベクトルである。
Qにおける接線ベクトルとPにおける接線ベクトルのなす角度をΔθとすれば、
は、曲線の長さに対する接線の向きの変化率をあらわし、
を点Pにおける曲率という。
この定義から明らかなように曲率は正または0であり、曲線上の各点でκ=0である時、この曲線は直線である。
xy平面の2次元で曲率について説明するにゃ。
次の図のように、点Pにおける曲線の接線とx軸のなす角度をθとする。このとき、単位接線ベクトルt=(cosθ,sinθ)となる。
単位弧長あたりの接線ベクトルの変化率は
よって、
かえって難しくしているという気もするが・・・。
問題 曲線y=f(x)の曲率を求めよ。
【解】
接線とx軸のなす角度をθとすると、
よって、
また、
よって
だから、
となる。
で、特にy'が1に比べて非常に小さい場合は、
となる。
ただし、これはxy平面上の曲率で、3次元空間の曲率ではないので注意が必要。
話は3次元の空間曲線に戻るケロ。
単位法線ベクトルt同士の内積t・t=1を微分すると、
となり、はtに垂直である。また、
と同じ向きの単位ベクトルをnとすれば、
このnをPにおける(単位)主法線ベクトルといい、
となる。
また、曲率は
曲率の逆数
を曲率半径といい、曲線上のPから引かれたベクトルρnの終点を曲率半径の中心という。
また、曲線上の点Pにおける接線ベクトルと主法線ベクトルの外積
b=t×n
を、点Pにおける曲線の(単位)従法線ベクトルという。
t、n、bは互いに直交する単位ベクトルで、右手系をなす。
また、が成立し、τを捩率(れいりつ)という。