放物型偏微分方程式の数値的解法1 [ネコ騙し数学]
放物型偏微分方程式の数値的解法1
を例に取り、差分法を用いた数値的な解法について考えることにする。
(1)の左辺の時間(偏)微分
右辺の2階の空間(偏)微分を
と、差分法を用いて近似すると、
ここで、
とおくと、
となる。
を計算する際、はすべて既知なので、(5)式を用いて逐次的にを計算することができる。
とくに、r=1/2のとき、(5)式は
になる。
このような解法を陽解法という。
陽解法は代数方程式を解くことなく簡単に計算できるが、
のとき、(5)を用いて求めた近似解は安定ではなく、振動解が得られる。
したがって、
となるようにΔt、Δxを選ばないといけない。
(5)式の右辺を
と書き換え、右辺第2項を無視すると――なんと大胆な(^^ゞ――
誤差がこれにしたがって伝播するとする、安定であるためには、
でなければならい。
したがって、安定であるためには
・・・。
もう少し正確な議論をすると、誤差が
に従うとする。
すると、
だから、少なくとも、安定であるためには
でなければならないに違いない。この条件を満たさないと、近似解は振動したり、発散するだろう。
そして、r>0だから、
正確な議論をするためには、von Neumannの判定法などを用いる必要があるが、それは厄介なので、簡易的にこの関係を求めてみたにゃ。
問題
を、初期条件
境界条件
のもとで、Δx=1として解け。
【解】
Δtを
となるように、Δt=1にとると、
となる。
以下、同様に計算すると、次の表が得られる。
この結果をグラフにすると、次のようになる。
定量的にはともかく、このような粗い計算であっても、指数関数的な現象を捉えており、定性的には正しい結果が得られていることがわかる。
より精度よく計算するために、Δx=0.1とすると、条件(7)より
よって、Δtを0.01以下にとる必要があり、計算量が大きく増えてしまう。
したがって、実際は、熱伝導方程式を陽解法を用いて解くことはない。
こうした制約のない陰解法を次回紹介することにする。