第34回 曲線座標の続き [ネコ騙し数学]
第34回 曲線座標の続き
前回、曲線座標の線元素dsは
であること、ただし、
さらに、曲線座標の単位ベクトルu、v、wが
になるというところまでやったにゃ。
で、曲線座標の代表的なものである球座表のh₁、h₂、h₃を求めることにするにゃ。
球座表、3次元の極座標とは次のようなもの。
だから、
となる。
問題1 円柱座標のh₁、h₂、h₃を求めよ。
【解】円柱座標は
だから、
zはそのままだから計算をする必要はないケロ!!
問題2 店の位置ベクトルをrとすれば
である。
【解】
uと∂r/∂uは同じ向きをもち、|u|=1、|∂r/∂u|=h₁なので、同様に、
そして、今回のメインである次の問題を解くことにする。
問題3 ベクトルAのu、v、wの成分と直交軸に関するには次の関係があることを示せ。
いきなり解いてもいいのだけれど、「急がば廻れ」ということで遠回りする。
前回、方向余弦というものをやった。で、uの方向余弦をl₁、m₁、n₁、vの方向余弦をl₂、m₂、n₂、wの方向余弦をl₃、m₃、n₃とする。そうすると、
という関係が成立する。
Aとuの内積をとると、u、v、wはそれぞれが直交するから、u・v=v・w=w・u=0で、
同様に、vとwの内積をとると、
つまり、
方向余弦が与えられているとき、上の式が変換公式になる。
【解】
だから、
同様に、
となり、
となる。
ちなみに、
ね。同様に、
ベクトル解析の番外編 方向余弦 [ネコ騙し数学]
ベクトル解析の番外編 方向余弦
原点を始点とし点Aを終点とするベクトルを考えるケロ。
さらに、とx軸、y軸、z軸とのなす角をα、β、γとする。
で、
を方向余弦と呼ぶ。
ちなみに、分母は線分OAの長さ。三平方の定理から
となる。
また、
となるので、方向余弦には
という関係がある。
ベクトルの大きさと方向余弦を使って
とあらわすことができる。
問題1 A(1,2,1)のとき、の方向余弦を求めよ。
【解】
よって、方向余弦は
になる。
問題2 点Aの位置ベクトルは、x軸とπ/4、y軸とπ/3、z軸とπ/6の角をなし、大きさは6である。Aの座標を求めよ。
【解】
これで終わるのはさすがに気が引けるにゃ。
ということで、ベクトルの3重積というものを少し話すにゃ。ベクトルの3重積というのは、たとえば、
a・(b×c)
やa×(b×c)
というもの。後ろのa×(b×c)はベクトル3重積と呼ばれる。a×(b×c)は結合法則、つまり、(a×b)×cは成り立たないケロよ。で、これは次のようになる。
a×(b×c)=b(a・c)−c(a・b)
これは理屈ではなく、ひたすら機械的に外積の計算をすると、こうなる。
そして、これを知っていると、ハミルトン演算子∇とあたかもベクトルのようにみなし、a=∇、b=∇とすると
∇×(∇×c)=∇(∇・c)−c(∇・∇)=∇(∇・c)−(∇・∇)c
というベクトルの公式を導けるのであった。また、a・(b×c)はスカラーになるのでスカラー3重積という。
これは
になるという話はした。
で、特にこれを[abc]といったふうに書くことがある。これをグラスマンの記号という。
行列式の勉強をすると分かるのだけれど、[abc]=[bca]=[cab]という関係があるのであった。
第33回 曲線座標 [ネコ騙し数学]
第33回 曲線座標
直交座標x、y、zの関数
u=F(x,y,z), v=G(x,y,z), w=H(x,y,z) ①
が0でなければ、①はx,y,zについて解くことができ、
x=f(u,v,w), y=g(u,v,w), z=h(u,v,w)
が得られる。そして、x,y,zの値の一組にはu,v,wの値の一組が対応し、逆にu,v,wの値の一組に対してx,y,zの値の一組が対応するから、u,v,wの組を座標と考えることができ、これを曲線座標という。いま仮にc₁を定数とし、u=c₁とすると、F(x,y,z)=c₁は一つの曲面をえがく。そして、c₁を変化させれば、曲面群が得られる。同様に、v=c₂、w=c₃とすれば、2種類の曲面群が得られ、この3つの曲面群を座標曲面という。
たとえば、
だとする。u=c₁とすると、
となり、原点を中心とする半径c₁の球面がその曲面になる。そして、c₁の値を変化させれば、一つの曲面群が得られる。
そう言った話。
2つの座標曲面v=c₂とw=c₃の交わりは曲線でこれをu曲線という。u曲線に沿っては、v=c₂、w=c₃なので、vとwは一定で、uの値だけが変化する。同様にして、w=c₃とu=c₁の交わりをv曲線、u=c₁とv=c₂の交わりをw曲線という。
任意の点をPとすれば、Pを通るu曲線、v曲線、w曲線が一つずつ存在する。Pを始点とし、u曲線に接し、uの増加する向きに向かう単位ベクトルをuとする。同様に、v曲線、w曲線に接し、u、vの増加する向きに向かう単位ベクトルをv、wとする。
そうすると、下の図のような座標系が得られる。
で、各点で3つのベクトル、u、v、wが互いに直交するものとする。この時、このとき、u、v、wを直交曲線座標という。なお、u、v、wは右手系をなすものとする。
点(x,y,z)の位置ベクトルをrとすれば、線元素dsは曲線座標では、drはu、v、wの関数だから
そして、∂r/∂u、∂r/∂v、∂r/∂wはu、v、wと同じ向きのベクトルであるから、それぞれが互いに直交する。
よって、
だから、
と置くと、
となる。
したがって、u曲線、v曲線,w曲線の弧長をそれぞれs₁、s₂、s₃とすると
となる。
直交曲線座標では、uは曲面u=c₁に垂直で、uの増加する向きに向かう単位ベクトルだから
∇v、∇wについても同様だから
したがって、u=h₁∇u、v=h₂∇v、w=h₃∇wになる。
ベクトルAを、その始点Pにおけるu、v、wの方向に分解して、
であるとする。このとき、をそれぞれ曲線座標u、v、wに関するAの成分、または、Aのu成分、v成分、w成分という。
このu、v、wは直交座標のi、j、kとは異なり、始点Pの位置によって向きが変わるにゃ。
例として、3次元の極座標をあげることにするにゃ。
第32回 ベクトルの積分定理のプチ演習 [ネコ騙し数学]
第32回 ベクトルの積分定理のプチ演習
これまでにベクトルの積分の定理として
ガウスの発散定理
そして、
ストークスの定理
を学んできた。
Vは曲面Sに囲まれる領域、Sは閉曲線Cに囲まれた領域。この2つを使ったプチ演習をやってみることにするにゃ。
問題1 閉曲線にそって
【解】r=xi+yj+zkとする。
で、ストークスの定理より
【別解】
問題にはないけれど、∇×r=0だからrは
というポテンシャルをもつ。
φの勾配∇φを求めると
となることから、φがrのポテンシャルであることが確かめられる。
問題2 閉曲線に沿って
【解】
∇(φψ)=(∇φ)ψ+φ(∇ψ)=ψ(∇φ)+φ(∇ψ)
よってストークスの定理より
なぜならば、∇×{∇(φψ)}=0だから。
【別解】
よって、チョメチョメ。
問題3 A=2xyi+(x²−y²)jのとき、xy平面上で、原点から点(1,1,0)に至る曲線x=y²に沿ってのAの線積分を求めよ。
【解】
曲線C上の点をr=t²i+tj(0≦t≦1)とすると、dr=(dx/dt)i+(dy/dt)j=(2ti+j)dtになる。
よって、
定義に従えば、こうなるのだけれど、この場合∇×A=0になっているので、実はこの線積分の値は経路によらない。
でだ、C₁:x=y=t(0≦t≦1)とすると、C₁上ではx²−y²=t²−t²=0になるので、となる。
問題4 曲面Sで囲まれた領域の体積をVとすると
【解答】
だケロ。
で、問題の右辺にガウスの発散定理を使うと
問題5 A=axi+byj+czk(a、b、cは定数)のとき、原点を中心とする半径1の球面上のAの面積分を求めよ。
【解】
ガウスの発散定理を使ってくださいと言わんばかりの問題だケロ。
問題4と問題5のは曲面Sで囲まれた領域の体積。問題5の場合半径1の球の体積だから、この値は4π/3になる。
もうすこし本格的な問題を解きたいと思う人は次の問題に挑戦してください。
宿題 座標平面および3平面x=2、y=2、z=2で囲まれた立方体の表面をSとするとき、
S上のA=x²i+xyj+zkの面積分を求めよ。
(答)32
第31回 ソレノイド的なベクトル場 [ネコ騙し数学]
第31回 ソレノイド的なベクトル場
ある領域で恒等的にdiv A=∇・A=0となるベクトル場を回転的、またはソレノイド的(管状、湧き出しなし)であるという。
領域Dで連続なベクトル場Aが他のベクトル場pによって
A=rot p=∇×p
とあらわされるとき、Aはベクトルポテンシャルをもつといい、pをAのベクトルポテンシャルという。A=∇×pのとき、∇・A=∇・(∇×p)=0になるので、ベクトルポテンシャルをもつベクトル場はソレノイド的になる。
単連結領域において、A=∇×p₁=∇×p₂とあらわさせるとする。このとき、恒等的に∇×(p₁−p₂)=0が成り立つので、前回の定理よりp₁−p₂はスカラーポテンシャルφをもち、p₁−p₂=∇φとなる。
つまり、pがベクトル場Aの一つのベクトルポテンシャルであるとき、p+∇φもベクトルポテンシャルになる。
A=∇×pとすると、∇×(∇φ)=0だから、
∇×(p+∇φ)=∇×p+∇×(∇φ)=∇×p=A
となるので、p+∇φもAのベクトルポテンシャルになっている。では、単連結領域において非回転的であるとき、つまり、∇×A=0であるときスカラーポテンシャルφが存在するように、回転的なとき、つまり、∇・A=0のときベクトルポテンシャルpは存在するのかという問いに答えるのが、次の定理。
【証明】定理 全空間において連続な偏導関数をもつベクトル場Aがソレノイド的であるとき、A=rot p=∇×pとなるベクトルポテンシャルが存在する。
任意の1点(x₀,y₀,z₀)を選びベクトルポテンシャルを次のように定義する。
この回転を計算すると、∇・p=0だから
となる。
同様に、
となる。したがって、このpはAのベクトルポテンシャルである。
(証明終)
上の証明は何を書いているからわからないと思う。
は
という連立偏微分方程式の解の一つ。
として、②と③を解くと
で、これを①に代入すると
となって、④より
だから、
で、φ=0とすると
となり、
となる。
問題 ベクトル場A=xyi−zxj+(x²+y²)kが回転的であることを示し、かつ、そのベクトルポテンシャルを求めよ。
【解】よって、回転的である。
混乱しないと思うから、ξをx、ηをxとするけれど、を、x₀=0として使うにゃ。
第30回 非回転ベクトル [ネコ騙し数学]
第30回 非回転ベクトル
ストークスの定理
閉曲線Cで囲まれた領域Sでである。
前回やったストークスの定理が今回の話の基本になります。
では、今回の話。
領域Dにおいて連続なベクトル場Aがスカラー場φによってA=grad φ=∇φであらわされるとき、Aはポテンシャルをもつといい、φをスカラーポテンシャルまたはポテンシャルという。
単連結
空間領域D内の任意の閉曲線を、D内で連続的に変形して1点に縮められるとき、Dを単連結という。たとえば、全空間、球面の内部、全空間から有限個の点を除いた領域などは単連結である。これに対して、全空間から1直線を取り除いた領域は単連結でない。
非回転なベクトル場
ある領域で恒等的にrot A=∇×A=0となるベクトル場Aを非回転的(渦なし)であるという。ポテンシャルφをもつベクトル場Aは∇×A=∇×(∇φ)=0になるので、非回転なベクトル場だケロ。
単連結領域DでAは非回転なベクトル場とする。さらに、D内の任意の閉曲線をCをすると、閉曲線Cで囲まれた領域Sに対してストークスの定理が成り立ち
となる。
このことは、領域D内に任意の2点P、Qをとると、PからQへの曲線に沿っての線積分の値は曲線のとり方によらず一定で、始点Pと終点Qによって定まることを意味する。次の図のようにAとBを異なる2本の曲線で結ぶ。
そうすると、C=C₁+(−C₂)は閉曲線になり、ストークスの定理より
となり、PとQを結ぶ曲線の経路によらないことがわかる。
つまり、非回転的なベクトル場では、線積分の値は積分経路によらず始点Pと終点Qで定まる。だから、道筋を示すことなく、
と書くことができる。
点Pを固定し、点P、Qの位置ベクトルをr₀、rとしは、Dで定義されたスカラー場となる。
このφはベクトル場Aのポテンシャルなのだけれど、このことを次に証明するにゃ。
次の図のようにP₀を固定し、Pのごく近くの点をQとする。
そうすると、
線分PP'に沿ってPからP'に至るとすると、dr=idxだから
平均値の定理を使うと
となり、
同様に、
となり、
A=∇φ
となり、φはAのポテンシャルである。
ここで、
ということで、
単連結な領域Dで
ベクトル場Aがポテンシャルφをもつ。すなわち、A=∇φ
ベクトル場Aが非回転的である。すなわち、恒等的に∇×A=0
任意の閉曲線Cに対してである
さらに、定理を。
定理
単連結領域において連続な偏導関数をもつ非回転なベクトル場はポテンシャルをもち、そのスカラーポテンシャルは定数を除いて一意的に定まる。【証明】
前半については既に証明しているので、一意性を証明する。A=∇φ₁=∇φ₂とすると、∇(φ₁−φ₂)=0。よって、φ₁−φ₂=定数となる。
(証明終)
問題 A=(2x+yz,zx,xy)とするとき、次の問いに答えよ。
(1)Aが非回転であることを示せ。(2)Aのポテンシャルを求めよ。
(3)Cを(1,0,−1)から(2,−1,3)に至る曲線とするとき、次の値を求めよ。
【解】
(2)∇×A=0なので、Aはポテンシャルをもつ。
で、
このことから、fはzだけの関数であることがわかり、これをあらためてg(z)とする。
ということで、
となる。
(3)Aはポテンシャルを持つので、
(1,0,−1)を(2,−1,3)を結ぶ線分は、だから、(x,y,z)=(t+1,−t,4t−1)(0≦t≦1)として、線積分をしても良い。計算結果は一致するはずだにゃ。
第29回 ストークスの定理 [ネコ騙し数学]
第29回 ストークスの定理
向きづけられた曲面Sと境界の曲線Cを考える。境界Cの向き付けは下の図のようにする。
ストークスの定理
曲面上の閉曲線Cで囲まれた領域Sにおいて、ベクトル場Aが連続な導関数をもつならば、
である。
A=Pi+Qj+Rkとし、成分で書けば
である。
この定理の証明は長いんで書きたくないのだけれど・・・。
【証明】
曲面Sがr=r(u,v)=(x(u,v),y(u,v),z(u,v))
とパラメータ表示され、曲線座標(u,v)に対する単位法線ベクトルはSの向きづけによるnと一致しているものとする。平面におけるグリーンの定理より
(証明終)
上の証明に出てくる
はヤコビアン。
さらに、2行目から3行目の変形の過程で、合成関数の偏微分を使っていて、このPをQやRに置き換えると、∂Q/∂u、∂Q/∂v、∂R/∂u、∂R/∂vが得られ、さらに式を整理すると3行目のになる。
これとは違う証明の方が一般的だけれど証明や説明がやたらと長いし、上の証明のスッキリしていてわかりやすいのではないだろうか。
どちらの証明であっても、何を書いているか分からないという点では同じと思うにゃ。
ガウスの発散定理と今回のストークスの定理に関しては結果が大事。
問題1 下の図に示す三角形PQRの辺をP→Q→R→Pと回る閉曲線をCとする。このとき、A=xyi+yzj+zxkの線積分
の値を次の2つの方法で求めよ。
(1)直接、線積分を計算する。
(2)ストークスの定理を使う。【解】
(1)PQは、x=1–y(0≦y≦1)と表せ、PQではz=0だからA=xyi。よって、
同様に、
よって、
(2)Sの単位法線ベクトルn=(1/√3,1/√3,1/√3)。
よって、
となる。
また、S上ではx+y+z=1なので、
で、
なので、
は△PQRの面積。△PQRは1辺が√2の正三角形だから、
となる。
まぁ、z=1–x–yとし、重積分を使ってSの表面積、つまり、△PQRの面積を
としてもいいけれど、これはさすがに大袈裟というもの。
なお、DはD={(x,y)|0≦x≦1,0≦y≦1–x}。問題2 閉曲線Cで囲まれた曲面Sについて、スカラー関数をφ(x,y,z)とすれば、
であることを示せ。
【解】A=∇φとし、ストークスの定理を使うと
となる。
∇×∇φ=0
だから、
問題3 任意の閉曲線Cで囲まれた曲面Sについて
が成り立つとき、
V=∇×A
である。(ストークスの定理の逆)【解】
ストークスの定理から
よって、
で、任意の閉曲面であるから、V–∇×A=0、すなわち、V=∇×Aである。
上の問題2、3の内容は理論的にとても重要なものだケロ。
第28回 グリーンの定理 [ネコ騙し数学]
第28回 グリーンの定理
今回も最初は、ガウスの発散定理。
ガウスの発散定理
閉曲面Sで囲まれた領域Vにおいて、ベクトル関数A(x,y,z)の偏導関数が連続であれば、
そして、今回のテーマであるグリーンの定理を、このガウスの発散定理を使って証明するにゃ。
グリーンの定理
閉曲面Sで囲まれた領域Vにおいて、スカラー関数をφ(x,y,z)、ψ(x,y,z)とすれば
【証明】
じっと見つめる。だから、
(1)の右辺は
だから、ガウスの発散定理より
なお、∇・(ψ∇φ)の計算では、∇・(ψA)=∇ψ・A+ψ∇・Aという公式を使っている。
これにA=∇φを代入すれば、
∇・(ψ∇φ)=∇ψ・∇φ+ψ∇・∇ψ=∇ψ・∇φ+ψ∇²φとなる。
(2)は、(1)のφとψを入れ替えると
となり、(1)式と上の式の差をとれば、
(証明終)
実は、グリーンの定理には「平面におけるグリーンの定理」と呼ばれるもうひとつのバージョンがある。
(平面における)グリーンの定理を紹介する前に、領域Dを囲む曲線の向きについてあらためて定義するにゃ。
領域Dの境界の曲線の向き付は、Dの外側の境界に沿っては反時計回り、Dの内部の境界に沿っては時計回りを正の向きとする。
(平面における)グリーンの定理
領域Dとその境界CにおいてP(x,y)Q(x,y)、が連続ならば、
が成り立つ。
【証明】
領域Dが
a≦x≦b,y₁(x)≦y≦y₂(x)
およびc≦y≦d,x₁(y)≦x≦x₂(y)
のどちらでも表せるとする。このとき、
また
よって、領域Dに対して、
である。
一般の領域については、上の図のようにDを分割する。この時、各部分の領域ではそれらを足し合わせれば、右辺は
になる。左辺も境界部分のは消えて
となり、グリーンの定理が成立する。
このグリーンの定理が役に立つのかと言われるとちょっと困る。
理論的には重要な定理なのだけれど、実際のところ、意外に使い道のない定理かもしれない。問題1 ベクトル場をA=(y,−x)とし、曲線Cを原点を中心とする半径1の円とする。このとき次の線積分の値を求めよ。
【解】
平面におけるグリーンの定理より
Dは原点を中心とする半径1の円Cに囲まれる領域なので、
よって、
真面目に線積分するならば、Cは原点を中心とする単位円なので、
また、曲線C上では
よって、
問題2 xy平面の領域Dの面積Aは、Dの境界Cに沿っての線積分として
で表せることを示し、これを利用して半径aの円x=ascost、y=asint(0≦t≦2π)の内部の面積を求めよ。
【解】
P=−y/2、Q=x/2とする。
グリーンの定理より
P=0,Q=x、P=−y、Q=0とし、グリーンの定理を用いれば、この線積分はいずれもになり、xy平面の領域Dの面積Aとなる。
第27回 ガウスの発散定理2 [ネコ騙し数学]
第27回 ガウスの発散定理2
ガウスの発散定理
空間の領域Vとその境界の閉曲面Sにおいて、ベクトル場Aが連続な導関数をもつならば
である。
ベクトル場Aを次のように成分に分けて書くと
ガウスの発散定理は次のように書くことができる。
で、早速、問題を。
問題1 次の面積分の値を求めよ。
ただし、Sは上半球面:とからなる。
【解】A=xz²i+(x²y–z)j+(2xy+y²z)kとすると
よって、ガウスの発散定理より
で、三次元の極座標
を使うと、
となる。
問題2 閉曲面Sで囲まれた領域Vにおいてスカラー関数をφ(x,y,z)とし、Sの法線方向に対する方向微分係数をdφ/dnとする。この時、次のことを証明せよ。
(1)(2)φが調和関数ならば、
【解】
(1) A=∇φとすると、ガウスの発散定理より
で、
そして、
よって、
(2)φは調和関数なので、
よって、
本や問題によっては、上の問題の方向微分をdφ/dnではなく∂φ/∂nと書いてある場合もあるので、この点は注意が必要。同じもので、表記が違うだけです。
定理というほどのものではないと思うけれど、定理らしいのであげておくにゃ。
定理 スカラー場φとベクトル場Aの共通の定義域内にある任意の領域Vと領域その境界面Sについて
であれば、φ=∇・Aである。
【証明】
ガウスの発散定理より
よって
φ–∇・Aは連続であり、任意のVについて上の関係が成り立つので、φ–∇・A=0である。よって、
(証明終)
これは「連続」かつ任意の領域Vで成り立つので、上の定理が成り立つ。
問題3 閉曲面Sで囲まれた領域Vにおいて、スカラー関数φ(x,y,z)、ベクトル関数をA(x,y,z)とする。
(1) 次のことを証明せよ。
(2) A=∇φ、∇²φ=0ならば
【解】
(1) ガウスの発散定理から
また、∇・(φA)=∇φ・A+φ∇・Aだから
(2)A=∇φとし(1)の式に代入すると
φは調和関数なので∇²φ=0で上の式の第2項は0。
よって、
第26回 ガウスの発散定理 [ネコ騙し数学]
第26回 ガウスの発散定理
ガウスの発散定理
閉領域Sに囲まれた領域Vにおいて、ベクトル関数A(x,y,z)が連続な偏導関数をもつならば、
である。ただし、nはSの内部から外部へ向かう単位法線ベクトルである。
ベクトル関数の発散を∇・Aではなく、div Aという記号を使ってあらわすならば、①は
となる。
また、ベクトル関数Aをベクトルの成分に分けてとすると、①は次のように書き換えることもできる。
上の式の右辺については、面積分2のところで
になるという話をした。
では、ガウスの発散定理の証明。
【証明】
図のようにVが上の曲面S₂と下の曲面S₁で囲まれているとする。そして、n₂とn₁をそのS₂とS₁の単位法線ベクトルとする。さらにS₂はS₂=φ₂(x,y)でS₁はS₁=φ₁(x,y)で与えられているものとする。DはS₂とS₁の接合面のxy平面上の正射影をDとする。
S₂の各点の法線ベクトルn₂は
と一致するけれど、S₁では向きが違って−n₁になっている。
よって、
同様にして
となり、これらを辺々に足し合わせれば
となり、
である。
この証明なんてわからなくてもいいにゃ。
欲しいのは、ガウスの発散定理だにゃ。
このガウスの発散定理がどれだけすぐれものかというと、次の問題を解くとわかるにゃ。
問題1 Sを原点を中心とする半径aの球の表面x²+y²+z²=a²(a>0)とする。このとき、ベクトル関数A=xi+yj+zkのS上の面積分を求めよ。
【解】
ガウスの発散定理より
ここで、Vはx²+y²+z²=a²で囲まれた領域、0≦x²+y²+z²≦a²、つまり、原点を中心とする半径aの球。
は半径aの球の体積だから、
だから、
問題2 平面x=0、y=0、z=0、x+y+z=a(aは正の定数)で囲まれた三角錐の全表面をSとする。このとき
を求めよ。
【解】
r=xi+yj+zkだから、∇・r=3。
で、ガウスの発散定理から
ここで、Vは平面x=0、y=0、z=0、x+y+z=a(aは正の定数)で囲まれた三角錐。
で、三角すいの体積は、三角形の底面積がa²/2で高さがaなので
よって、
【別解】
面積分を使って真面目に計算するならば、
φ(x,y,z)=x+y+z
とする。
∇φ=i+j+k=(1,1,1)
になるので、単位法線ベクトルnはそして、S上では、z=a–x–yだから
よって、
となり、
この問題のSのxy平面の正射影はx+y+z=aにz=0を代入したもの、つまり、x+y=aとx=0、y=0で囲まれる領域、つまり、
D={(x,y)|0≦x≦a,y=a–x}
ね。
外積を使ってもいいけれど、それはちょっと大袈裟だろう。
行列式を計算しないといけないし、これを書くのも大変だし(^^ゞ