第9回 無限級数6 無限級数の図形への応用 [ネコ騙し数学]
第9回 無限級数6 無限級数の図形への応用
問題1 右図のように直角三角形ABCの中に正方形S₁、S₂、S₃、・・・が限りなくならんでいるとき、これらの正方形の面積S₁、S₂、S₃、・・・の総和を求めよ。ただし、BC=a、∠A=60°、∠B=90°とする。
【解】正方形S₁、S₂、S₃、・・・の1辺の長さをx₁、x₂、x₃、・・・とし、AB=cとする。
△ABC∽△ARQだから∠A=60°だから、
よって、
同様に、
したがって、
問題2 2等辺三角形ABCの3辺に内接する円Oの半径をrとする。等辺AB、ACと円Oとに内接する円をO₁とし、AB、ACとO₁とに接する円をO₂とする。このようにして次々と円を作っていくとき、これらすべての円の面積の和を求めよ。ただし∠A=2αとする。
【解】OからAB、O₁からABに下ろした垂線の足をT、T₁、O₁からOTに下ろした垂線の足をHとする。
△O₁HO∽△ATOまた、
だから、
同様に、
の面積をとすると、は初項、公比
の等比数列。よって、
(解答終了)
問題3 放物線y=x²をCとする。C上の点A₁(a,b)(a>0)における接線とx軸との交点をP₁とし、P₁を通ってx軸に垂直な直線とCとの交点をA₂、点A₂におけるCの垂線とx軸との交点をP₂とする。以下、同じようにして、C上に、x軸上にを作る。
(1) のx座標を、それぞれとすると、はどんな数列になるか。
(2) 図形の面積をとするとき、無限級数を求めよ。
【解】(1) dy/dx=2xだから、における接線の方程式は、x軸との交点を求めると
よって、
したがって、は初項a/2、公比1/2の等比数列で、
(2) 図形の面積は
は初項、公比1/8の等比数列。
よって、
(解答終了)
第8回 無限級数5 [ネコ騙し数学]
第8回 無限級数5
問題1
数列について、であり、すべてのnに対して、のときは、この数列は収束する。
この定理は使っていいものとして、次の問いに答えよ。
(1) rは一定の数で、0<r<1とする。すべてのnに対してが成り立つとき、無限級数
は収束することを示せ。
(2) n²>n(n−1)であることをつかって、次の級数が収束することを示せ。
【解】
(1) だから、
よって、とおくと、
また、0<r<1だから
よって、
は単調増加で、すべてのnに対してだから収束する。
(2) n²>n(n−1)だから、n≧2に対して
したがって、
とおくと、1/n²>0だから、数列は単調増加数列で、かつ、すべてのnに対してだから、この無限級数は収束する。
(解答終了)
問題2 級数は収束する。このことを使って、級数が収束することを示せ。
また、級数との和をそれぞれS、Tとするとき、SとTの間の関係式を求めよ。
【解】とおく。
数列とは収束するので、①より
となり、は収束する。
したがって、である。
【解】
①から、
としてはいけない。
とが収束することTに収束することがわかっていないから。
問題1の
数列について、であり、すべてのnに対して、のときは、この数列は収束する。
という定理を使っていいのならば、次のように証明することもできる。
すべての正の整数kについてk²(k+1)>k²だからまた、だからは単調増加で、すべてのnに対してだから、上記の定理より収束する
なお、問題1の(2)は積分を使うと、次のように証明できる。
k≧2とする。x∈[k−1,k]のとき
よって、
この両辺に1を加えると、
・・・
問題3 次の条件を満たす数列は収束するか。
【解】
(1)
(2)
よって、
よって、は収束しない、振動する。
(解答終了)第7回 無限級数4 [ネコ騙し数学]
第7回 無限級数4
問題 次の和を求めよ。
【解】
x=1のとき
x≠1のとき、
①にxを掛けると
よって、①−②は
(解答終了)
上で求めた
は、|x|<1のとき
になるのだが、このためには、|x|<1のとき
を証明する必要がある。
この証明は、例えば、次のようにすればよい。
【証明】x=0のとき、③は明らか。
0<|x|<1のときとするαが存在する。
したがって、
したがって、
そして、
だから、0<|x|<1のとき
(証明終わり)
このことから、
問題2
(1) a>0のとき、であることを証明せよ。
(2) 無限級数
を求めよ。
【解】
(1) n≧2のとき
(2)
とする。
②に1/2を掛けると
①−②は
a=1を(1)の結果に代入すると、
よって、
(解答終了)
問題3 無限数列がを満たすとき、次の問いに答えよ。
(1) 一般項を求めよ。(2) 次の無限級数の和を求めよ。
【解】
(1)
①はn=1のときにも成り立つので、
(2)
(解答終了)
第6回 無限級数3 [ネコ騙し数学]
第5回 無限級数の和2 [ネコ騙し数学]
第5回 無限級数の和2
問題1 次の無限等比級数の和を求めよ。
無限等比級数の和の公式を使う。
【解】
(1)は初項a=1、公比の無限等比級数だから
(2) 公比をrとすると、
初項a=2。
よって
(3) 公比rは
初項a=√3−1。
よって
(解答終了)
問題2 無限等比級数がある。その和が1で、各項を2乗して作った無限等比級数の和が2である。各項を3乗して作った無限等比級数の和を求めよ。
【解】等比数列の初項をa、公比をrとすると、
各項を②乗して作った無限等比級数の和は2だから、
①をaについて解き、
これを②に代入すると、
①より
よって、各項を3乗した和は
(解答終了)
問題3 平面上を動く点Pが、原点Oを出発しx軸の正の方向に1だけ進み、次にy軸の正の方向に2/3だけ進み、次にx軸の負の方向に(2/3)²だけ進み、次にy軸の負の方向に(2/3)³だけ進む。以下、このような運動をかぎりなく続けるとき、点Pの極限の位置の座標を求めよ。
【解】右図のように限りなく進んだ点Pの極限の座標を(x,y)とすると、
(解答終了)
原点OをP₀とし、P₀P₁=1とすると、
線分の長さにはという漸化式が成立し、
となる。
nが1増加すると、進行方向が反時計回りにπ/2=90°変わる。
これ以上書くと混乱を招くだけだから、これ以上は何も言うまい。
第4回 無限級数 [ネコ騙し数学]
第4回 無限級数
§1 無限級数の収束、発散
無限級数が与えられているとき、
とおくと、数列が得られる。
この数列が収束するとき級数は収束するといい、収束しないとき発散するという。
そして、が収束するとき、すなわち、であるとき、この極限値Sを無限級数の和という。
例1
上の無限級数の第n部分和は
|r|<1のとき
だから、このとき数列は
であり、がこの無限級数の和である。
|r|≧1のとき、は収束せず、したがって、発散する。
以上のことから、
無限等比級数は|r|<1のときに限ってに収束し、その和は
つまり、
例2 無限級数
は、発散する。
したがって、
で、
よって、は収束しない。
だから、①の無限級数は発散する。
§2 無限級数の基本的性質
定理1
とするとき、
である。
定理2 無限級数が収束するためには、でなければならない。
【略証】とおくと、
さらに、
とすると、
(証明終了)
例2であげた無限級数
は、
であるが、この無限級数は収束しない。
したがって、定理2の条件は無限級数が収束するための十分な条件ではなく、必要な条件であることに注意。
問題1 次の無限級数に和があればそれを求めよ。
【解】
(1) これは初項a=1、公比r=1/2の無限等比級数。|r|=1/2< 1だから式(1)より
(2) 公比r=−√2、|r|=√2>1だから収束しない。
(3) 公比r=−1だから収束しない。
(4)
つまり、|x|>1のとき、この級数は収束し、和は
|x|≧1では収束しない。
(解答終了)
問題2 次の無限級数は収束するか。
【解】
(1) 第n部分和は
また、
よって、
(2)
したがって、
よって、振動し、収束しない。
(解答終了)
第3回 極限の計算2 [ネコ騙し数学]
第3回 極限の計算2
問題1 次の式を一般項とする数列の極限値を求めよ。
【解】
(1) 分母分子をnで割って
(2) 分母分子をnで割って
n→∞のとき
だから、
したがって、
(3) (分子の)有理化をすると
よって、
(4) 分母分子をn²で割ると
(5)
したがって、
(解答終了)
問題2 一般項が次の式で表される数列の収束、発散を論じよ。
【解】
(1)3>1、−1<2/3<1だから、n→∞のとき
したがって、
(2) 分母分子をで割ると
、0<1/3<1だから
したがって、
(3) a=bのとき
a>bのとき0<b/a<1だから、n→∞のとき
a<bのとき、同様に
問題3 次の関数のグラフをかけ。
【解】
n→∞のとき
だから、
|x|>1のとき
だから
x=1のときf(x)=0
x=−1のとき、f(x)は存在しない。
よって、
だから、
|x|>1のとき
x=1のとき
x=−1のとき
第2回 数列の極限の計算(基本) [ネコ騙し数学]
第2回 数列の極限の計算(基本)
問題を具体的に解くことによって、数列の極限の計算法を学ぶことが今回の目的。
問題1 次のような一般項を持つ数列の極限を求めよ。
【考え方】
このタイプの極限の計算は、最高次の項をくくりだすとよい。たとえば、(1)のばあいは、
n→∞のとき
になるので、
になる。
(2)の場合は、分子分母の最高次のn²をくくりだす分母、分子でくくり出すとよい。
n→∞のとき1/n²→0だから、
したがって、極限の公式
より、
となる。【解】
(1)
だから、
(2)
n→∞のとき
よって、
(3)
n→∞のとき
だから、
したがって、
(4) 0≦|cosnx|≦1だから
n→∞のとき
だから
よって、
(解答終了)
問題2 次の極限値を求めよ。
【考え方】
(1) 分母分子で最大の項はだから、これで分母分子を割ると
0<2/3<1、0<1/3<1だから、n→∞のとき
したがって、
つまり、
(2) これは次のように
の有理化をするとよい。
√nで分母分子を割ると
n→∞のとき
したがって、
よって、
これをまとめて解答を作ればよい。
今回は基本だけで、次回はより複雑な数列の極限を求めることにする。
計算問題だけでは単調なので、最後に次の問題を解くことにする。
問題3 数列
が
の関係を満たすとき、次の極限を求めよ。
【解】
(1)
n→∞のとき
つまり、
(2)
で、
したがって、
(3) (2)より
したがって、
つまり、
(解答終了)
第1回 数列の極限 [ネコ騙し数学]
第1回 数列の極限
§1 数列の極限
数列の定義
自然数Nから実数Rへの写像
を実数列、あるいは数列といい、あるいは単にと書く。
いまかりに、数列を
と書いてあらわすとすると、数列の各数を項といい、a₁を初項、a₂を第2項、そして、を第n項という。
がnの数式の形で書かれ、それによって数列が一般的に表されるとき、を一般項という。
例
という数列の一般項は
例で取り上げた数列は、nが限りなく大きくなると、第n項は限りなく0に近づく。
このことを「数列の極限値は0である」といい、
や
であらわす。
一般に、数列において、nが限りなく大きくなるとき、がある一定の数αに限りなく近づくならば、「数列はαに収束する」といい、このことを
や
と書き、αを数列の極限値という。
問 次の数列の極限値を求めよ。
【答】 (1) 1 (2) 1 (3) 1
数列が収束しないとき、数列は発散するという。
数列が発散するときは、次の3つの場合がある。
(1) が正の無限大に発散する (例 )
このとき、と書く。
(2) が負の無限大に発散する (例 )
このとき、と書く。
(3) (1)、(2)のいずれでもない場合 (例 )
(3)の場合を振動するという。
§2 数列の基本的性質
定理
2つの数列が収束し、であるとき
上の定理は、高校の数学の範囲では証明できないので、これは無条件でそのまま受け入れて欲しい。
問題 次の事柄は正しいか。正しくなければ反例をあげよ。
【解】
(1) 正しくない。
(2) 正しくない。
(3) 正しくない。
(4) 正しい。
定理
【証明】
(Ⅰ) r>1のときr=1+a(a>0)とおくと、2項定理より
よって、
(Ⅱ) r=1のとき
(Ⅲ) r=0のとき
(Ⅳ) −1<r<1のとき
とおくと、b>1だから(Ⅰ)より
したがって
よって、
(Ⅴ) r<−1のとき
−r=bとおくと、b>1。
nが正の偶数のとき、すなわち、n=2k(kは正の整数)のときnが正の奇数の場合、n=2k−1のとき
よって、この極限は定まらず、すなわち振動する。
(証明終了)
具体的な極限の計算は次回。