第14回 2変数関数の極値 [ネコ騙し数学]
第14回 2変数関数の極値
極値
(a,b)を関数f(x,y)の定義域内の点とする。点(a,b)を含まない点(a,b)の近傍内の全ての点に対して、
(1) f(x,y)<f(a,b)が成り立つとき、関数f(x,y)は点(a,b)で極小になるといい、その値f(a,b)を極大値という。
(2) f'(a,b)<f(x,y)が成り立つとき、 関数f(x,y)は点(a,b)で極大になるといい、その値f(a,b)を極小値という
定理15
関数f(x,y)が偏微分可能なとき、点(a,b)で極値を取るならば
である。
【証明】
y=bと固定し、φ(x)=f(x,b)とおくと、φ(x)は点aで極値をとるのでφ’(a)=0である。よって、である。
も同様。
(証明終)
停留点
例1 f(x,y)=x²+y²とすると、
したがって、f(x,y)は点(0,0)で極小で、0が極小値。
また、このとき、だからで定理を満たしていることがわかる。
問 f(x,y)=x²–xy+y²の極値を求めよ。
【解】
したがって、f(x,y)は点(0,0)で極小、極小値は0。
(解答終)
上の問の関数f(x,y)=x–xy+y²は偏微分可能だから、定理より、極値を取る点で
にならなければならない。これを解くと(x,y)=(0,0)となり、を満たしていることがわかる。
f(x,y)=x²–y³があるとする。このとき、だから、(0,0)でとなり停留点であるが、f(x,y)は点(0,0)で極値を取らない。何故ならば、r>0とすると、f(0,r)= –r³<0、f(0,–r )=–r ³>0となり、点(0,0)を含まない点(0,0)の近傍内の任意の点でf(x,y)<f(0,0)でもf(x,y)>f(0,0)でもないからである。
このことから、という条件は、f(x,y)が点(a,b)で極値を取るために必要な条件に過ぎないことが理解できるだろう。
定理16
f(x,y)は領域DでC²級の関数とする。(a,b)をf(x,y)の停留点とし
とおくとき、次のことが成り立つ。
(ⅰ) D>0のとき
ならば、f(x,y)は点(a,b)で極小、
ならば、f(x,y)は点(a,b)で極大となる。
(ⅱ) D<0のとき、f(x,y)は点(a,b)で極大でも極小でもない。
(ⅲ) D=0のとき、2階の偏微分係数だけからは判定できない。
【証明】
2変数のテーラーの定理より
(a,b)は停留点だから、であるから、
ここで、
とおくと、
となる。
のとき、f(x,y)はC²級だから、(h,k)≠(0,0)で|h|と|k|が小さいとき、になるから、 となり、f(a,b)は極小値になる。
のとき、同様に、になり、 となり、f(a,b)は極大値になる。
のとき、ならばにできるが、h=rcosθ,k=rsinθとおくと、cosθ≠0のとき、
−∞<tanθ<∞だから、Δzはθの値によって正にも負にもなり、したがって、このとき極大でも極小でもない。
(証明終)
D=AC–B²<0の場合の証明は胡散臭い気もするが、これでよしとしよう(^^ゞ
この定理を使うと、例1のf(x,y)=x²+y²の場合、となり、D>0でより点(0,0)で極小と判定できる。
例2の場合はだから、でより、点(0,0)で極小と判定できる。
f(x,y)=x²–y³の場合、 だから、D=0となり、停留点(0,0)における2階の偏微分係数を用いた判定は出来ず、別の方法で極値かいなかの判定を行わなければならない。
ところで、f(x,y)がC²級であるとき、判別式Dは、行列式を使って
と書くことができる。
この行列式
を、関数f(x,y)のヘッシアンといい、記号H(x,y)で表す。
この行列式の元の行列
をヘッセ行列という。
f(x,y)がC²級のとき、だから、ヘッセ行列は対称行列で
である。
第13回 高階の全微分と2変数のテーラーの定理 [ネコ騙し数学]
第13回 高階の全微分と2変数のテーラーの定理
§1 高階の全微分
z=f(x,y)の第一階の全微分
において、が微分可能ならば、x、yに関するdzの全微分d²zを得る。すなわち、h=dx、k=dyとおけば、
同様に、
一般に
となる。
これを
と略記するとよい。
§2 2変数関数のテーラーの定理
定理 (2変数関数のテーラーの定理)
z=f(x,y)が点(a,b)の近傍で級であるならば、この近傍内にある(a+h,a+k)において
ここで、
である。
【証明】
とおくと、F(t)は級の関数だから、1変数のテーラーの定理より
ここで、x=a+ht、y=b+ktとおくと、合成関数の微分法から
したがって、証明すべきことは
である。
n=1のときは成立する。
n=m–1まで成り立つとすると、
よって、証明された。
(証明終了)
特に、n=2のとき、
第12回 合成関数の(偏)微分の問題 [ネコ騙し数学]
第12回 合成関数の(偏)微分の問題
問題1 u=f(x,y)がだけの関数φ(r)であるとする。
(1)
であることを示せ。
(2) u=f(x,y)がC²級の調和関数ならば
であることを示せ。
【解】
(1)
だから、
したがって、
(2) u=f(x,y)は調和関数だから、(1)より
(解答終)
(2)の微分方程式
は、ψ=φ'(r)とおくと、
となるので、変数分離法を用いて解くことができる。
その結果は
となるので、これをrで積分して
と解くことができる。
問題2 次の問に答えよ。
(1) z=f(x,y)、y=φ(x)のとき、を求めよ。
(2) z=f(x,y)、x=cosht、y=sinhtのとき、をもとめよ。
【解】
(1)
fがC²級ならばなので、
(2)
よって、
fがC²級ならばなので、
(解答終)
問題3 z=f(x,y)、x=rcosθ、y=rsinθのとき、次を証明せよ。
【解】
(1)
(2)
(解答終)
2×2の行列の演算とその逆行列くらいは知っているでしょう?
第11回 合成関数の微分法2 [ネコ騙し数学]
第11回 合成関数の微分法2
定理12
関数f(x,y)が領域Dで全微分可能であり、関数φ(t)、ψ(t)が区間Iで微分可能かつφ(t),ψ(t)∈Iであれば、合成関数F(t)=f(φ(t),ψ(t))は区間Iで微分可能で
が成り立つ。
z=f(x,y)、x=φ(t)、y=ψ(t)とすると、
【証明】
φ(t+τ)–φ(t)=h(τ)、ψ(t+τ)–ψ(t)=k(τ)とする。
関数fは(全)微分可能だから、
τ≠0のとき、
τ→0のとき、φ(t)とψ(t)は微分可能だから
また、
よって、F(t)は微分可能で、
になる。
(証明終)
インチキだが、上の証明よりも、機械的に次のようにしたほうが直観的にわかりやすいだろう。
これをdtで割ると、
問1 z=z(x,y)はC²級とする。次の関係から、を求めよ。
【解】
だから、
(解答終了)
定理13
z=f(x,y)が全微分可能なとき、x=x(u,v)およびy=y(u,v)がu,vの微分可能な関数な関数ならば、合成関数f(x(u,v),y(u,v))はu,vの微分可能な関数であって、
である。
【証明】
vを固定すると、z=f(x(u,v),y(u,v))はuの関数と考えることができるので、定理12より
同様に、uを固定すると、
である。
(証明終)
行列を用いて書くと、
問2 z=f(x,y)において、直交座表x、yをx=rcosθ、y=rsinθによって極座標r、θに変換するとき、次の関係が成り立つことを示せ。
【解答】
(1)
(2)
(解答終)
(2)は、ラプラスの方程式を極座標に書き換えたもので、
と書いたほうが覚えやすいのかもしれない。