第16回 ヤコビアン [ネコ騙し数学]
第16回 ヤコビアン
u=φ(x,y)、v=ψ(x,y)がC¹級であるとき、
をヤコビ行列といい、次の行列式
をヤコビアンという。
問題1 次のヤコビアンを求めよ。
【解】
(1) だから
(2) だから
(3) だから
(解答終)
問題2
(1) 、のとき、
が成り立つことを示せ。
(2) が逆に解けて、であるとき、
であることを示せ。
(3) 平面座標の座標変換のヤコビアンとを求めよ。
【解】
(1) 合成関数の微分公式(連鎖律)から
(2) (1)でs=u、t=vになっている場合だから
(3) だから、
(2)より
(解答終)
問題2の(3)は
を逆に
と解くことができ、
となるので、直接
と解くこともできる。
問題3 をC¹級の写像とする。
fがC¹級の逆写像をもつとき、
であることを示し、これより
であることを証明せよ。
【解】
をu、vで偏微分すると、
同様に、をu、vで偏微分すると、
したがって、
よって、
(解答終)
偏微分の簡単なドリル [ネコ騙し数学]
最近、2次曲線を取り上げ、肝心の偏微分の記事をブログにアップしていない。
そこで、お前らに一つ尋ねるけれど、次の偏微分くらいは簡単に求められるんだろうな。
問題 次の関数を偏微分しなさい。
次の定理を使うと、比較的簡単に上の関数の偏微分を求めることができる。
定理 関数f(u)が微分可能で、u=φ(x,y)が偏微分可能ならば、
である。
ただ、この定理を使って実際に計算する場合は、公式(A)よりも、z=f(u)とおき、
を使ったほうが間違いにくいのだろう。
(1)の場合は、z=f(u)=√u、u=x²+y²とすると、
だから、
になる。
(2)の場合、とおけば、
だから、
になる。
なお、
2次曲線の離心率 [ネコ騙し数学]
2次曲線の離心率
放物線の定義は、「直線(準線)と直線上にない定点(焦点)との距離が等しい点の軌跡」であり、これは「準線からの距離と焦点からの距離の比が1:1である点の軌跡」と言い換えることができる。
そこで、これをさらに一般化し、
「準線からの距離と焦点からの距離の比が1:eである点の軌跡」
について考えることにする。
準線をy軸とし、焦点Fの座標を(c,0)とすると、点P(x,y)と準線との距離は|x|、焦点Fと点Pとの距離はになるので、
この両辺を2乗すると、
e=1のときは
e≠1のとき
0<e<1のとき、e²–1<0だから
e>1のとき
したがって、
0<e<1のとき楕円、e=1のとき放物線、e>1のとき双曲線である。
楕円、双曲線の中心が原点に一致するよう、x軸方向に平行移動すると、(3)式は
したがって、楕円
の離心率eは、
から
と求められる。
また、このとき、(4)式は
となるので、双曲線の離心率eは
から
と求められる。
2次曲線の極座標表示 [ネコ騙し数学]
2次曲線の極座標表示
§1 楕円
楕円の焦点をF(c,0)、F'(−c,0)とし、楕円上の動点をP、FP+F'P=2aとする。
FP=r、x軸とFPのなす角度をθとする。
△FF'Pに対して余弦定理を用いると
a≠0だから、右辺の分母、分子をaで割ると、
ここで、
とおくと、楕円の極座標表示の方程式(※)は
半直弦とは、θ=π/2のときのFP=rのこと。
このことは、θ=π/2のときcosθ=0になるので、(1)式より
となることより明らかだろう。
また、楕円(a≧b)の場合、
離心率εは
である。
a=bのときは円でε=1である。
(※) この場合
という対応関係にあることに注意!!
§2 双曲線
双曲線の焦点をF(c,0)、F'(−c,0)とし、右側の双曲線について考えることにする。
双曲線上の点をPとすると、双曲線の定義から
FPとx軸のなす角度をθとし、△FF'Pについて余弦定理を用いると、
FP=rとすると、
ここで、aで右辺の分子分母を割ると、
ここで、
とおくと、
c>aだから双曲線の離心率ε>1である。
§3 放物線
放物線の焦点F(p,0)(p>0)、準線をx=−p、さらに放物線上の点をPとし、準線x=−pにPからおろした垂線の足をHとする。
放物線の定義からHP=FP。
FP=r、線分FPとx軸のなす角度をθとすると、
l=2p、ε=1とすれば、
の形になるので、放物線の離心率ε=1。
ということで、2次曲線は
0≦ε<1のとき楕円(ε=0のとき円)
ε=1のとき放物線
ε>1のとき双曲線
になるという話でした。
2次曲線 [ネコ騙し数学]
2次曲線
§1 楕円
2つの定点からの距離の和が一定である動点の軌跡を楕円という。この2つの定点を楕円の焦点という。
焦点をF(c,0)、F'(−c,0)、動点Pの座標を(x,y)とし、距離の和を2a(a>c>0)とすると、
両辺を2乗すると、
両辺を2乗すると、
また、このことから、楕円
の焦点の座標は
AA'=2aを長軸の長さ、長径、BB'=2bを短軸の長さ、短径という。
例 楕円
a=5、b=4とすると、
よって、焦点は(−3,0)、(3,0)。
a=b>0とすると、(1)は
これは原点Oを中心とする半径aの円になる。そして、このとき、焦点は円の中心Oになる。
§2 双曲線
2定点からの距離の差が一定である動点の軌跡を双曲線という。
この2定点を双曲線の焦点という。
2定点をF(c,0)、F'(−c,0)、動点Pの座標を(x,y)、距離の差を2a(c>a)とする。
両辺を2乗すると、
両辺を2乗すると、
双曲線
の焦点は
である。
双曲線の漸近線は、
§3 放物線
定点と定直線との距離が一定の動点の軌跡を放物線という。
このとき、定点を放物線の焦点、定直線を準線という。
定点Fの座標を(p,0)、定直線(準線)をx=–p、動点Pの座標を(x,y)とし、Pから直線x=–pにおろした垂線の足をHとする。
両辺を2乗すると、
2次曲線の標準化の例 [ネコ騙し数学]
2次曲線の標準化の例
2次曲線の方程式の一般形は
3×3の対称行列を用いると、
となる。
なのだが、座標軸の回転に関係する部分は、(1)の2次の項(の係数)だけなので、それに対応する対称行列
について、まず考える。
問題1 次の2次曲線を標準形にせよ。
【解】
とすると、固有方程式は
t=8のとき
だから、大きさが1の固有ベクトルは、
これは、基本ベクトル
を反時計回りにθ=45°=π/4(rad)回転させたものだから、
これをに代入すると、
ここで、さらに
と座標変換すると、
よって、この曲線は楕円である。
(解答終)
これは図形や点を原点まわりに45°回転させるのではなく、x軸、y軸を45°回転し、それを新しいx'軸、y'軸とする主軸変換、座標変換!!
そのため、
となっている。
①式は
と書き換えられるので、高校で習う1次変換とは違うことに注意!!
これ以上余計なことを書くと混乱させるだけだから、これ以上は書くまい。
問題2 次の2次曲線を標準化せよ。
よって、行列Aの固有値はt=0,2。
t=2のとき
t=0のとき
したがって、行列Aの大きさ1の固有ベクトルは、
これは基本ベクトル
を45°時計回りに回展させたものだから、
とし、x²–2xy+y²+2x–6 y=0に代入すると、
さらに、
と変換すると、
となり、この曲線は放物線である。
(解答終)
2次形式の標準化 [ネコ騙し数学]
2次形式の標準化
2次形式
変数x、yと実係数a、b、hで定められる関係式
を2次形式という。
これは行列を使うと
で表される。
例
ところで、対称行列は適当な直交行列P()を用いて
と対角化することができる。
そこで、
とすると、
と、2次形式F(x,y)=ax²+2hxy+by²を2次形式の標準形
にすることができる。
ここで、α、βは行列Aの固有値である。
問題1 次の2次系式を標準化せよ。
【解】
よって、行列Aの固有値はt=2、8。
t=2のとき
t=8のとき
したがって、t=2、8のときの固有ベクトルは、
したがって、この固有ベクトルの単位ベクトルは
よって、
で、
したがって、とすると、
t=3に対する単位固有ベクトルは
t=−2に対する単位固有ベクトルは
したがって、直交行列Pは
となり、
したがって、とおくと、
(解答終)
x軸とy軸をθだけ回転した新しい座標軸をu、vとする。
このとき、xy座標系での点Pの成分(x,y)と、新しいuv座標系での点Pの成分(u,v)との間には
という関係がある。
行列を用いて表すと、
ここで、
とおくと、行列Pの行と列の成分を入れ替えた行列(転置行列)は
となり、
⑨を2次形式F(x,y)=ax²+2hxy+by²に代入すると、
uvの項の係数を0にするには、θを
にとればよく、このようなθをとれば2次形式の標準形になる。
問題2 2次曲線2x²–2xy+2y²=9 を標準形にせよ。
【答】
だから、の対角化を図る。
行列Aの固有方程式は
t=1のときの固有ベクトルは
t=3のときの固有ベクトルは
固有ベクトルの正規化――大きさ1の単位ベクトルにすること――をすると、
したがって、
このようにPを選ぶと
なるケロ(実際に計算して、こうなることを確かめよ)。
だから、として、2x²–2xy+2y²=9を標準化すると、u²+3v²=9になる。
(解答終)
行列の固有値と固有ベクトル [ネコ騙し数学]
行列の固有値と固有ベクトル
1次変換(行列)に対して
を満たすλをAの固有値、を固有ベクトルという。
単位行列とすると、(1)式は
と変形できるので、が存在するための必要十分条件は、行列A–λ Eが逆行列を持たないこと、すなわち、
で、(2)式をAの固有方程式という。
2次方程式(2)の解をα、βとすると、解と係数の関係より、
が成り立つ。
ここで、
のことで、これは行列の行列式である。
問題1 次の行列の固有値と固有ベクトルを求めよ。
【解】
固有ベクトルを、固有値をkとする。
(1)
x=y=0以外の解をもつためには、
k=1のとき、①式より
ここで、x=tとおくと、y=−t。
よって、固有ベクトルは
k=2のとき①より
y=sとおくと、x=−2s。
よって、固有ベクトルは
(2)
②式より
よって、固有ベクトルは
である。
(解答終)
問題2 次の問に答えよ。
(1) 行列の固有値と固有ベクトルを求めなさい。
(2) となる行列Pを求めよ。
(3) nが自然数のときを求めよ。
【解】
(1) Aの固有値をk、固有ベクトルをとすると、
以外の解をもつためには、
k=2のとき、①式より
k=5のとき、①式より
(2)
ここで、とおくと、
したがって、α、βは行列Aの固有値で、はその固有ベクトル。
よって、α=2、β=5とすると、
(3) a=1,b=1とおく。
α=2のとき
β=5のとき
よって、
後の計算はヨロシク!!
(解答終)
が成立するので、これを利用して
と計算してもよい。
2次曲線プチ [ネコ騙し数学]
2次曲線プチ
問題1 次の曲線を原点の周りに45°回転してえられる曲線の方程式を求めよ。
【解】
(x,y)を原点まわりに角度θ回転して得られる点を(x',y')とすると、次の関係が成立する。
逆に、(x',y')を原点まわりに角度−θ回転すれば(x,y)に戻るので、次の関係が成立する。
したがって、θ=45°のとき、
になる。
(1) x²–y²=a²にを代入すると、
(2) x²+xy+y²=6にを代入すると、
だから、
(3) x²–2xy+y²–2x–2y+1=0にを代入すると、
よって、
図形を回転させても図形の形は変わらないので、(1)のx²–y²=a²(a>0)は直角双曲線であり、(2)のx²+xy+y²=6は楕円。そして、(3)の曲線x²–2xy+y²–2x–2y+1=0は放物線である。
実は、2次曲線
には、曲線の種類を判別できる、判別式D=ac–b²という判別式があり、
D>0のとき楕円
D=0のとき放物線
D<0のとき双曲線
になる。
こうなっていることを、問題の(1)、(2)、(3)の場合で確かめて欲しいにゃ。
問題2 曲線(x+y)²=4xとx軸で囲まれた部分の面積を求めよ。
(x+y)²=4xだから
y≧0の部分は、y=2√x–xだから、
(解答終)
問題2を解くのに2次曲線の知識は必要としないけれど、
となるので、a=b=c=1となり、2次曲線の判別式を使うと、
となり、この曲線が放物線であることが分かる。
このことは、この曲線を原点まわりに−45°回転すると、変換式は
となるので、これを(x+y)²=4x代入すると、
となることからも確かめられる。
第15回 2変数関数の極値の計算例 [ネコ騙し数学]
第15回 2変数関数の極値の計算例
偏微分を用いて2変数関数の極値を求める前に、極値に関する定理を再掲する。
定理15
関数f(x,y)が偏微分可能なとき、点(a,b)で極値を取るならば
である。
定理16 (極値の判別式)
f(x,y)は領域DでC²級の関数とする。(a,b)をf(x,y)の停留点とし
とおくとき、次のことが成り立つ。
(ⅰ) D>0のとき
ならば、f(x,y)は点(a,b)で極小、
ならば、f(x,y)は点(a,b)で極大となる。
(ⅱ) D<0のとき、f(x,y)は点(a,b)で極大でも極小でもない。
(ⅲ) D=0のとき、2階の偏微分係数だけからは判定できない。
なお、定理16に登場する停留点とは、である点を停留点のことである。
問題 次の関数の極値を求めよ。
【解】
(1) より、停留点は(0,0)である。
だから。
したがって、f(x,y)は(0,0)で極小で、f(0,0)=(0,0)が極小値である。
(2)
①と②を加えると
y=−xを①に代入すると、
よって、停留点は(0,0)、(√2,−√2)、(−√2,√2)である。
(x,y)=(√2,−√2)、(−√2,√2)のときだからとなるので極小、極小値は−8。
(0,0)のとき、D=0となり、2階偏微分係数を用いた極値の判定は出来ない。
したがって、(0,0)は極値ではない。
(3)
したがって、停留点は
②よりy=0、x=1。
y=0を①に代入すると、x²–2x=x(x–2 )=0より、x=0、2。
x=1を①に代入すると、y²–1=(y+1)(y–1)=0よりy=±1。
よって、停留点は(0,0)、(2,0)、(1,1),(1,−1)。
よって、(0,0)のとき、だからとなり、f(x,y)は(0,0)で極大、極大値はf(0,0)=−1になる。
(2,0)のとき、だから、f(x,y)は(2,0)で極小、極小値はf(2,0)=−5。
(1,1)、(1,−1)のとき、だから、極値ではない。
(4)
したがって、
②より
これを①に代入すると、
②にy=1を代入すると、x=1。
したがって、停留点は(1,1)。
よって、f(x,y)は点(1,1)で極小で、極小値はf(1,1)=3である。
(解答終)