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第38回 ベクトルと初等幾何 [ネコ騙し数学]

第38回 ベクトルと初等幾何


§1 (平面)ベクトル

ベクトルとは、大きさと方向を持った量のこと。
shotou-38-00.jpg

幾何的なベクトルでは、有向線分ABについて、その位置を問題にせず、大きさと方向だけを考えたものをベクトルといい、とあらわす。

また、ベクトルでは次のことが成り立つ。

  

2つのベクトルの和は次のように定義する。
shotou-38-01.png

ベクトルの差は次のように定義する。

shotou-38-002.png

ベクトルの内分と外分

位置ベクトルとは原点を始点にするベクトル。

2点であるとき、ABm:nに内分する点を、外分する点をとすると、

  shotou-38-siki-00.png

である。

これだけあれば、とりあえず、今回、十分でしょう。


§2 問題


問題1 平行四辺形ABCDの対角線ACを延長し、延長上に点Eをとって、CE=2ACとなるようにする。また、辺ABおよび線DEの中点をそれぞれPQとする。

(1) であらわせ。

(2) 3点PCQは一直線上にあることを示せ。

【解】

(1)
shotou-38-11.png

  

で、ACの延長上でCE=2ACとなるところに点Eをとるので、

  

Qは線分DEの中点なので

  


(2) 題意より

  

よって、

  

したがって、

  

は始点が同じ、かつ、平行なので、PCQは一直線上にある。

(解終わり)

ベクトルを使うとこのような解答になるけれど、初等幾何の枠内で解くこともできる。


DAの延長上にAF=ADとなる点をとる(またはPCの延長上にPC=PFとなる点をとる)。
shotou-38-12.png

そうすると、条件より、EQ=QDAC=2CE、さらに、DF=2FAだから、

  

となり、メネラウスの定理の逆よりFCQは一直線上に存在する。そして、PFCの中線だから、FQ上存在し、PCQは同じ直線の上にあることになる。

CFの中点であることは、四角形AFBCが平行四辺形であることより明らか!!


問題2 を頂点とする△ABCにおいて、△ABC1:2に内分する点をDBC1:2に内分する点をECA4:1に外分する点をFとする。

(1) DEF各点の位置ベクトルを求めよ。

(2) DEFは一直線上にあることを証明せよ。
shotou-38-13.png

【解】

(1)DEFの位置ベクトルをとする。

  


(2)

  shotou-38-siki-01.png

よって、DEFは一直線上にある。

(解答終わり)

人間の目というのは当てにならないね。私の目ではFD=DEに見えなけれど、FD=DEです。


それはそれとしまして、この問題は、メネラウスの定理の逆を使うと、

  

になるので、EDFは同一直線上に存在していることがわかる。

 


問題3 △OABにおいて、∠AOBの2等分線と辺ABとの交点をC、∠OABの2等分線と辺OBの交点をD、∠OBAの2等分線と∠OAとの交点をEとする。OA=aOB=bAB=cとする。

(1) abcを用いてあらわせ。

(2) となるのは、どのような場合か。

【解】
shotou-38-14.png

(1) OCは∠AOBの二等分線なので、CABa;bに内分する。よって、

  

同様に、

  shotou-38-siki-02.png


(2)は、難しいというよりも、見るからに計算が大変そうなので、パスだにゃ。


第37回 落穂ひろい [ネコ騙し数学]

第37回 落穂ひろい


問題1 三角形の高さをh₁h₂h₃、内接円の半径をrとするとき、

  

を証明せよ。

【解】
shotou-37-01.png

三角形の面積をSとすると

  

また、

  

よって、

  

(解答終わり)

 

問題2 三角形の重心をGとするとき、

  

であることを証明せよ。

座標やベクトルの内積を使って解くのが一般的なのだろうけれど、初等幾何の枠内で解くことにする。

その前に、重心と中線定理の復習。

重心 三角形の3つの中線は1点で交わり、この交点を重心という。重心は中線を2:1に内分する。


shotou-37-02.png

中線定理

三角形ABCにおいて、Aから中線AMを引くと

  


この2つを思い出せば、この問題はもう解けたようなもの。


【証明】

重心の性質より、重心Gは中線AM2:1に内分する。

つまり、

  

ここで、△ABCに注目し、中線定理を使う。

  

そして、△GBCに対して、中線定理を使う。

  

①にこの結果を代入すると、

  

(証明終わり)

問題3 △ABCがあって、AB=2AC=√3、∠BAC=30°である。

(1) 内接円の半径を求めよ。

(2) 内接円と辺ABの接点をDとする。ADの長さを求めよ。

【解】
shotou-37-03.png

(1) 余弦定理よりBC=1

よって、△ABCは∠C=90°の直角三角形(∠B=60°)。

ABCの面積S

  

内接円の半径をrとすると

  


(2) △DBIは∠BDI=90°の直角三角形。Iは内心なので、

  

よって、

  

したがって

  

(解答終わり)

あるいは、(2)を次のように解くこともできる。

【別解】
shotou-37-04.png

円と2接線の関係より

  DB=FB

である。

  

よって、

  

(別解終わり)

こうすれば、三角関数を使う必要はないね。

(1)で余弦定理よりと書いているけれど、

  

から、△ABCが∠A=30°、∠B=60°、∠C=90°の直角三角形であることは明らか。

だから、

  

とすぐに出てくる。

この直角三角形の線分比は中学校で出てくるので、この問題は中学数学の範囲で解くことができる問題であった。

 ――(2)は少し変えてあるけれど、問題2、問題3は、大昔の大学入試問題です――
タグ:初等幾何

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